55話 スピード婚 ①
「ラフィのご両親に、結婚のご挨拶に行かないとな」
「ふふふ…そんなに焦る必要はございません。
公国までは離れてますし、第3公女の私なんて放任されておりますわ」
ラフィは自嘲するように笑っている。
まぁ、公家の親子関係は庶民とは違うのだろう。
挨拶はおいおいとして、男としてのケジメはつけなくてはならない。
そんな事を考えながら服を着てラフィと共に大広間に行くと、食卓テーブルに勢揃いした面々がニタニタしながら俺たちを見てくる。
「おやおや、昨晩は随分とお楽しみだったようで」
「シンシア姉さま、ラフィお姉さまたちは今朝もお楽しみだったの」
ぬ、ぬぅ…エレナのヤツ、何故今朝も交わった事を知ってるんだ?まさか、先程の行為を見ていたと言うのか?
だが、俺もからかわれて動じるようなガキではない。
堂々とすれば冷やかされないという物。
「そりゃあ俺たちは今日、夫婦になるんだから楽しむだろう」
「そ、そうですわ!ヨシュア様は私のだ、旦那様…
ヨシュア様が…私の旦那様…
こ、コレは夢ではないのかしら?…余りに幸せな事が起こると、普通は夢オチだと聞いた事がありますわ」
ダメだ。ラフィがテンパってデレだしてしまった。
「はっ!大人ぶってる割に一瞬で終わったじゃねえか。
全く、パパは同じ男として情け無いぞ」
「あなた、ヨシュアちゃんは初めてですもの。仕方有りませんよ」
「お、お母様!私も断じて…は、初めてですので!」
な、何故父さんが瞬殺だった事を知ってる!!!
そして母さんは何故俺が童貞だった事を知っているのだ!?で、何故ラフィは顔を真っ赤にして処女アピールをするのだ!?
「そりゃあ、おっぱじめた時とフィニッシュ時特有の魔力の揺らぎで分かるだろうが」
「ヨシュアちゃんは昨日まで童貞特有の魔力の巡り方をしていたもの。
ラフィちゃんも処女特有の魔力の巡り方だったから、今の2人が大人になった事も丸分かりよ?」
そ、そうだった…コイツら人外夫婦だった。っていうか童貞の魔力の巡り方って何だよ!?
「まぁ、夜と朝合わせて3回もするなんてねぇ…ヨシュア様も相当溜まってたんだね〜」
「ラフィお姉さまに3回も変なことをしたら、ダメなの〜!」
「え!?どうしてシンシアとエレナが、回数まで知ってるんだ!?」
こ、こいつら…ガチで俺たちのセックスを覗いていたのか…
「そりゃあ、する度に急激に魔力が入ってくるんだもん。
オチオチ寝ていられなかったわよ」
「今までよりも、もっと物凄い魔力だったの!」
迂闊だった!行為に夢中で気付かなかった…『フェロモンイーター』の効果が裏目になるとは…
どれくらいパワーアップしたのか気になった様子のラフィ達は、各々ステータスウィンドウを確認し出した。
「え、あれ?ちょっ…わたし、『弓神』にクラスアップしてる…え、何で?」
「へ?あ!エレナも『剣神』にクラスアップしてるの!」
「そ、そんな…私…伝説の天職と言われる、『精霊王の愛し子』になっているのですわ…昨日までは『精霊導師』でしたのに…」
シンシア、エレナ、ラフィの3人がとんでもない事を言い出した。剣神も弓神も準伝説級の天職であり、精霊王の愛し子は伝記でしか見た事のない伝説級天職だ。
しかも、3人とも今まで気がつかなかったという事は、脳内にクラスアップの声が響かなかったという可能性が有るのかも。
ラフィ達の言葉を聞いた俺の両親も、かなりテンパっている様子だ。
それも無理は無い。魔物と戦闘をしていないのに、クラスアップするなんて聞いた事が無い。
昨日倒したスライムキングとの戦闘が反映されるのに、時間差が生じたのだろうか?
クラスアップにタイムラグが有って、皆んなが熟睡している間に上がったのなら、例の声が聞こえなかった説明も付く。
色々と話し合った結果、タイムラグだろうという事になり、改めてラフィ達は自分のステータスを興奮気味にチェックし出した。
「シンシア、エレナ。クラスアップに興奮している所悪いんだけど、今日から5日間はラフィと婚姻の手続きをしたり、色々やる事が有るから休みにしたいと思うんだ」
「え〜!せっかく弓神になれたんだから、クエストに行きたいんだけど」
「シンシア、せめて3日くらいは新婚気分をゆっくり味合わせてくれないかな?ラフィとデートもしたいし。
5日の内、後半の2日はパーティーの連携訓練に充てよう」
「そうだよね。ラフィはヨシュア様が勇者パーティーに居た頃から、ヨシュア様に片想いしてたもんね。
結婚出来たんだから、いっぱいヨシュア様に甘えて来て?
わたしもエディとデートして来るから」
シンシアは、俺たちの幸せを祝ってくれているよう…ん?シンシアはエディさんとデートだと?
この2人いつの間に…まぁ、良いか。シンシアは色恋にかまけて訓練を怠るヤツじゃないし。
「はぁ、ママとパパはお邪魔みたいね。私たちも行きましょうか?」
「ヨシュア、ラフィちゃん、お幸せにな。
あと、ヨシュアよ。ラフィちゃんを泣かせるような事をしたら、ただじゃおかねえぞ!」
「エレナはこれから、ヨシュア様のママにお洋服買って貰うの!」
「エレナちゃんって本当に可愛いわねえ。ウチのステフみたい。
エレナちゃん、行きましょ?ママが好きなもの何でも買ってあげますからね」
「ハイなの!ママ大好きなの!」
朝の短い時間で、エレナは両親の心を鷲掴みにしたらしい。そういえば、先程からエレナは母さんの膝の上に、ちょこんと乗ってたしな。
確かにエレナをステフとダブらせる気持ちは分かる。でも、エレナはもうすぐ17歳で、ステフより8歳も上なのだ。
そんな事を知ってか知らずか、母さんはエレナと左手を繋ぎ、父さんはエレナと右手を繋いで、市街地の方へと歩いて行く。
その様はまるで、本当の家族のようだ。
両親とエレナを見送った後、俺はさっさとスーツに着替え、テンション高めのラフィは貴族らしいブルーのドレスに着替えた。
ドレスに着替えたラフィはより一層美しくなり、思わず時が経つのも忘れて見惚れてしまった。しかし、今日は色々とするべき事があるので、ラフィの美しさに見惚れるのは後回しにしないと。
手早く外出の準備を整えた俺たちは、王都の中心街にある高級ジュエリー店に向かった。




