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54話 最恐のママ襲来!そして…

 


「ワッシャッシャッシャ!タ、タツノオトシゴじゃあるまいし!!!」


「ヒーッ、ヒーッ、ちょっ、ヨシュア様…プッ、プププッ、ちょっ、わ、笑い死ぬ!」



 ギルドの酒場で俺の冗談を聞いたAランクパーティー『ヒャッハーズ』リーダーのハルトと、我らが弓皇シンシアが腹を抱えて笑っている。



「プフーッ!そ、それって…あ、穴子の佃煮とか…プフフッ、も、もう駄目ですわ…」


「アハハハハハッ、アハッ?アハヒヒヒヒ、イヒーっ、イヒーっ…く、苦しいの…アハ、アハハハハ」



 普段冷静なラフィもテーブルに突っ伏して笑う始末。

 エレナについては…うん、笑い過ぎて怖いくらいだ。


『ヒャッハーズ』と合同で、王都東門の水源に巣食った変異種のスライムキングを討伐した我々は、そのままクエスト成功の打ち上げをハルトのキョーダイの奢りでする事になった。

 まぁ、エレナにお肉タワーを好きなだけ奢るって約束だったし、そのついでに皆んなの飲みも奢るという流れになったのだ。


 今回は王宮からのクエストという事も有り、報酬も1人200万ゲスと大盤振る舞い。

 キョーダイもかなり気が大きくなっているので、飲み代を奢るくらいどうって事無いんだろう。



「ワーッシャッシャッシャ!いやぁ、兄弟のジョークはホント面白えなあ!」


「ジョークも最高ですし、メチャクチャ強えし。

 ヨシュアの兄貴はサイコーっすよ!」



 キョーダイに相槌を打ったのは『ヒャッハーズ』で随一の魔法使いグラフだ。

 コイツはワイルドな風貌の割にかなりストイックな男で、ジョークで笑いながらも魔力の訓練をずっと続けている。



「ヨシュアちゃん!こんな所にいたのね!」



 不意に後ろから聞き覚えのあり過ぎる声が響いた。

 俺の向かいに座っているハルトとグラフは、当該の人物を見上げて口をパクパクさせている。



「や、やぁ、母さん…何でここに?」



 俺は振り返って引きつった笑顔を作り、後ろに立つ人物に返事をした。



「「アグネス・ラムジー!!!」」



 ハルトのキョーダイとグラフの声が見事にハモった。

 そう、この女性は俺の母さんで、『白銀の悪魔』ことアグネス・ラムジー(今は結婚してワイルダーになっている)だ。

 酒場にいる全員が息を飲む中、母さんは俺に抱きついて来た。



「ああ〜ん!!ママの可愛いヨシュアちゃん、大丈夫だった?

 あのクソ女供に追い出されたって聞いて、ママはホントにホントに心配したんだからぁぁ!!」



 涙目で俺を抱きしめる母さんの姿に、余計に周りは引いている。

 先ずは母さんに落ち着いて貰わねば。



「か、母さん、ひとまず落ち着こう。

 ホラ、今仲間達と打ち上げしてる所だしさ?ね?」



 1人で興奮気味の母さんを何とか引き剥がし、俺は呑みの席にいる仲間達を紹介した。

 変に因縁をつけられては困るので、皆んな俺に凄く良くしてくれている事を伝えると、外面の良い母さんは満面の笑みで「ヨシュアちゃんがお世話になってます」と挨拶してくれた…のだが…



「んん〜?アナタ物凄く可愛いわねぇ…しかも、ヨシュアちゃんにベッタリくっ付いて。

 アナタ、私のヨシュアちゃんとはどういうご関係かしら?」



 さ、早速ラフィに悪絡みしてるぅぅぅ!!



「い、いや。どういうご関係も何も、同じパーティーの仲間で…その…か、か、か、彼女っつうか…いや、こ、こ、こ、婚約…」


「いえ、お母様。お母様のでは無く、私のヨシュア様なのですわ。

 私は婚約者として身も心も魂も、全てをヨシュア様に捧げておりますわ」



 俺の言葉を遮って、ラフィが母さんの事を煽ったぁぁぁあ!!!

 俺が何とか宥めようとした意味ないじゃん!!!



「あぁん?婚約者ぁ?ふざけた事抜かすんじゃねえぞ!この腐れ泥棒猫が!!」


「いいえ。泥棒猫ではございません。ラフレシアという名がございますわ。

 私はヨシュア様を心より敬愛致しておりますので、以後お見知り置きを」



 母さんの凄まじい怒気に怯むどころか、真っ向から立ち向かうラフィTUEEE!

 酒場にいる外野の連中は泡を吹いて卒倒しているし、ハルトのキョーダイやシンシア達は、恐怖のあまり身動き1つ取れずに居るというのに…



「ほほう。私に対してその態度…余程殺されたいらしいわね」


「ヨシュア様に娶って頂く前に、おめおめ死ぬ訳には参りませんわ。

 お母様がその気でしたら、私も抗うまで」



 母さんの恐ろしい量の魔力が一気に膨れ上がった。

 マ、マズイ!冗談では済まされないぞ!



「母さん、待ってくれ!!

 ラフィを殺されては困る!!彼女は…彼女は俺にとってかけがえのない、大切な女性なんだ!!!」



 し、しまった。慌てる余り、どストレートな言い方をしてしまった…これでは母さんが余計に怒り狂ってしまう…

 慌てて訂正しようとするも、氷のような表情でラフィを睨みつける母さんを見て、思わず怯んでしまった。



「ふふふ。ラフレシアさん、あなた素晴らしいわね。

 私に魔力を向けられて気絶しないなんて、余程の実力と覚悟が無いと不可能な事よ。

 ヨシュアちゃんへの気持ちは本物なのね?」


「はい、お母様。私は命を賭してでもヨシュア様をお守りする覚悟がございますわ。

 そして、ヨシュア様を敬愛するこの気持ちに、嘘偽りはございません」



 ぬぉ、何故か2人から不穏なオーラが消えて、お互い優しく微笑み合い出したゾ!

 これは事なきをえそうだ。



「うんうん。ラフレシアちゃん凄く素敵なコ!

 この子だったら、ヨシュアちゃんのお嫁さんに相応しいわ!

 ヨシュアちゃん、ラフレシアちゃんと今すぐ結婚しなさい!そしてジャンジャン孕ませなさい!」



 ちょっ、何を言ってるんだ母さん?

 正気とは思えんぞ?泥酔してるんだろうか?



「お母様、ありがとうございますわ。

 ヨシュア様に今すぐ娶って頂いて、誠心誠意ヨシュア様に尽くしますわ。

 そして、ジャンジャン孕ませて頂きますわ」



 この子も何言ってんの!?

 ラフィはそこまで酒を飲んでないハズだ。

 しかし、この流れは非常にマズいぞ。ラフィの事はメチャクチャ大好きだし、オッパイも凄く大きくて綺麗な形をしている。

 俺も漢だから、ラフィをジャンジャン孕ませたい気持ちもある…だが、俺たちはパーティーとしてこれからもステップして行くんだ。

 結婚はSSランクに上がるまではしないと決めたんだ。

 何とか話の矛先を変えて有耶無耶にせねば。



「い、いや…余りに気が早すぎるだろ…あ、そうだ!!!

 父さんはどうしたんだよ!!!あの人母さんが居ないと、若い女にすぐ手を出そうとするダメ人間だろ!!

 まさか置いて来たんじゃあるまいな?」



 そうだ、父さんの事を思い出させて帰らせるのが一番だ。



「俺ならさっきからいるぞ、ヨシュア」



 上から父さんの声が!!俺の索敵魔法に引っかからぬとは…

 コイツら夫婦して人外過ぎるだろ!

 完全に気配を遮断して天井に張り付いていた父さんが降りてきて、自分の口で「シュタッ!」と言って着地した。



「はじめまして。ヨシュアの父の"シュガー"・レイ・ワイルダーだ。

 いやぁ、こんな凄え美人を嫁にもらうとは、流石は俺の息子だなぁ。

 パパは嬉しいぞ!」



 何で父さんまで結婚に賛成するんだよ…

 ダメだ…何だか目眩がして来た…


 因みに、父さんの出生名はレイモンド・ワイルダーなんだが、15歳のイキっていた時に「頭にシュガーを付けたらカッケェ!」とか言って、役所で改名手続きをしたらしい。



「はじめまして、お父様。ラフレシア・ファン・ロスフィールドと申しますわ。

 これからはヨシュア様の妻として、この身を尽くしてヨシュア様をお支え申し上げますわ」



 もう完全に今すぐ結婚する流れじゃん…ん?ロスフィールド?

 ロスフィールドって言ったら…



「ちょっ、ラフィ!お前公女様なの?」


「え?申しておりませんでしたか?

 私はロスフィールド公国の第3公女ですわ」



 ロスフィールド公国はエルフが統治する国で、そこの公女殿下は王国で言えば、王女殿下みたいなものだ。


 え、俺みたいな冒険者風情が、公女殿下の股座やパンツをクンクンしたと言うのか?これは不敬罪で死刑確定のヤツだな…



「まあ!道理で気品に満ちている訳だわ!

 ラフレシアちゃん、ヨシュアちゃん共々よろしくね」


「こちらこそ宜しくお願い致しますわ。

 それからお母様、お父様、私の事はどうぞラフィとお呼び下さい」



 何か公女殿下と分かっても、母さんはラフィに全く物怖じしてないんだが?

 さっきまで公女殿下を殺そうとしてましたよね?母さんは叛逆罪で打ち首間違いなしだな。



「あ、あの…ヨシュア様。わたしもお父さんに…」



 俺の後ろで様子を伺っていたシンシアが、照れた様子で声をかけて来た。俺とした事が、テンパる余りに大事な事を忘れていた。



「そうだ、父さん。彼女は同じパーティーの仲間でシンシアって言うんだ。

 父さんにお礼が言いたいんだって」


「あの、初めまして。シンシア・リングストンと申します。

 10年前、ワイルダーさんに…」


「おお、キミかわうぃーね!何?俺みたいなダンディな男がタイプなのかい?

 いやぁ、照れちゃうなぁ。どうかな?あちらのカウンターで2人きりで…」



 ドグワシャァァア!!



 ただお礼が言いたいだけのシンシアを、秒で口説きにかかった父さん。

 そんな父さんの頭頂部に、母さんの容赦ないジャンピングゲンコツが振り下ろされた。父さんの頭からは血が吹き出し、完全に白眼を剥いている。

 母さんの目の前で若い女の子を口説こうとするなんて、自殺願望でも芽生えたのだろうか?


 その後、母さんが何発か父さんをシバいて落ち着いた後、改めてシンシアがお礼を言った。

 父さんがポンコツ過ぎて、10年以上父さんに憧れ続けていたシンシアに対して、申し訳ない気持ちで一杯だ。



 ◆◇◆◇◆



 その後、落ち着きを取り戻した仲間たちも一緒になって打ち上げが再開。

 俺の両親は飲み会中もラフィにベッタリで、娘のように可愛がりだす始末。

 母さんはラフィをめっちゃハグして頭を撫で撫ですらしていた。


 で、だ。

 現在『豊穣の翠』のパーティーハウスにまで上り込んだ父さんと母さんは、ラフィが大広間に出した来客用のベッドにて爆睡中だ。

 まぁ、ラフィが泊まって行ってくれと2人を招いたから、まぁそれは良いんだが。

 で、俺はというと…



「ヨシュア様、お風呂から上がりました」



 子作りの前に身を清めると言い出したラフィが、風呂から上がって来た。

 セクシーなネグリジェを着て、髪はしっとりと濡れてとても妖艶だ…が…完全にそういう流れだ。

 公女殿下とそういう関係になっておいて、結婚はまだ先ですという訳には行かない…致すという事は、即ち直ぐに結婚するという事になる。



「いや、ラフィ。落ち着くんだ。

 俺たちは婚約者ではあるが、冒険者パーティーの仲間同士だろ?

 パーティー内でそういう関係になると、それは流石に色々とマズいよ。シンシアやエレナだってリーダーが急に結婚とか、気不味く感じるかも」


「大丈夫ですわ。

 あの2人は以前から、私がヨシュア様の妻になる事を応援してくれてますし、早く結婚した方が良いと言ってくれてますわ」



 何…もう完全に周りを固められてるのかよ…

 完全に流されてしまいそうだ…いや、イカンぞ!

 俺はSSランクになるまでは、結婚はしないって決めたんだ。


 無論、ラフィを好きな気持ちに嘘は無い。こんな美少女と結婚したくない訳がない。

 それでも、俺は災害級魔物の脅威から、世界中の人々を守る冒険者になると決めたんだ。

 せっかく信頼出来る仲間達と、最高のパーティーを組めたのに、煩悩に負けて目標を疎かにする訳には行かない。

 俺は鋼鉄の意思を持った、芯の強い冒険者なんだから。



「俺はこのパーティーをSSランクにするって決めたんだ。

 信頼するラフィ、シンシア、エレナとは常に対等の関係でいたいと考えている。

 だから、こういう事はいけないと思っているんだよ」


「夫婦になると、対等の関係では無くなるというのですか?

 パーティー内で結婚する例は珍しく有りません。ヨシュア様のお父様とお母様も、元は同じパーティーのメンバーだったと先程お聞きしたのですわ。

 ご夫婦になられた後も冒険者パーティーを続けて、SSSランクまでのし上がったとも」



 くっ、確かに…父さんと母さんが結婚した当初は、父さん達のパーティーはBランクだったと聞いている。

 父さんと母さんが結婚した事で、パーティーで一緒に行動する際の絆も深まり、結果SSSに至る事が出来たとも聞いた。

 でも、俺の意思は固い。オリハルコン級の揺るぎないハートがある。



「……そうですわね。私に何の魅力も無いという事を悟られまいと、お優しいヨシュア様は理由をつけて…

 これまで勇気を振り絞ってヨシュア様に素肌を晒しても、何も無かったというのはそういう事ですわね」



 きゅ、急に自虐モードに…ラフィが言うような事は断じてない。

 つーか、お前の事が大好きだし、抱きたくてたまらねえよチクショウ!

 だが、俺は自分の決めた鋼の掟に従うんだ。



「いや、ラフィは正直言って、とても魅力的だよ。ただ、俺の中のSSになるまで結婚やエッチな事は我慢するっていう決意は鋼鉄よりも硬いんだ。

 そ、それに…何回か…手は出してる…

 ラフィが寝ている間に…気付かれないように何回かオッパイは触ってる訳で…」


「あ、胸を触られていたのは気付いてますわ」



 何だよバレてたのかよ!クソ、だが俺の決意は変わらない!

 流されるような男では無いのだ。



「私は…ヨシュア様に抱いて頂きたいですわ…

 妻として、冒険者として、ヨシュア様のお側でお仕えしたいのですわ…」



 ラフィがとても綺麗なブルーの瞳を潤ませている…

 いつの間にかネグリジェを脱いで、豊かで美しいバストがコレでもかとアピールしている…

 ああ!ホントは今すぐ抱きたいさ!ギンギンさ!

 だが、オリハルコンメンタルを持つ俺は煩悩に負けない!!!

 いつも通り眠りに就くだけだ!!!




 チュンチュン




「ヨシュア様…昨夜は…まるで夢のようでした…」



 俺の隣に体を横たえているラフィが、眼を潤ませてこちらを見つめて来る。



 煩悩に流されました…

 ラフィの魅力に骨抜きにされました…

 僕はトウフメンタルでした…



 いや、寧ろ正常な20歳の男なら、彼女を抱きまくるよ。

 しかも、俺はラフィに一目惚れしたんだ。そんな彼女にああまでされて、抱かない男なんていませんよ。うん。



「ヨシュア様、心より愛しておりますわ」


「そ、その…だな…俺も、ラフィの事が凄く好きだ」



 愛らしい笑顔を浮かべたラフィが、俺に口付けをして来た。

 よし、第3ラウンドに突入だ!




いつもお読み頂き、本当にありがとうございます!


入院中に書き溜めていた物なので、文字数を注意する余裕が無くて長くなっちゃいました。


読み辛くてゴメンなさい(>人<;)


今後も定期的に投稿するようがんばります!!

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