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52話 護衛クエスト ⑥

 


「うぶぇっ!」

「ごぱぁっ!」

「むすんっ!」



 フランキーのアジトに侵入した俺は、ヤツが居ると思しき部屋の前を見張っているボディガードに当身を食らわせた。

 俺の接近にすら気付かずに倒れ臥す3人のボディガードを見下ろし、本当に警備がザルだと実感した。

 あの情報屋の言っていた事は本当だったらしい。



「お、おい…マジかよ…」

「アレ、暗黒街屈指の実力者3人だぞ…赤子扱いて…」

「やっぱヨシュアさんって鬼畜だよな…」



 俺の一連の動きを見て、パイヤ、アッシュ、ボルテガの『青い3年生』の3人が何やらヒソヒソ話している。

 時間が無いので、さっさとして貰いたいんだが。



「おい、さっさと来いよ。俺が全部片付けても良いのか?」



 青い顔で内緒話をする暗殺者3人に声をかけると、連中は一様に頬を引き連れせた独特の表情でドアの前にやって来た。



「ホラ、さっさとドアを蹴破らんかい」


「その前に一つ宜しいっすか?」



 俺がパイヤに突撃を指示したが、彼は何やら質問があるらしい。

 さっさとフランキーを片付けたいのだが、重要な事かも知れないので首肯した。



「ドルドの奴は放置して良かったんすか?超一流と言われるヤツの事だ。

 また狙いに来るかも知れませんぜ?」


「ああ、アイツか。いちおーヤツの両手は異空間収納に入れているから大丈夫だろ」



 そう言うと、俺は異空間収納からドルド46の両手を取り出した。

 切断されたドルドの手を見た暗殺者3人は、「ひぃっ」という情け無い声を上げる。


 暗殺者集団の癖に肝っ玉の小さなヤツらである。


 ともあれ、ちんたらしても居られないので、再度怯えた暗殺者3人組を無視して俺がドアを蹴破った。



「い、いやぁぁあ!!!」


「う、うわわわ……な、何だテメエらぁ!」



 フランキーの部屋のドアを蹴破って目に入ったのは、豪奢な皮のソファで半裸のド派手な赤毛ギャルに良からぬ事をしていたフランキーと思しき下半身丸出しのチンピラの姿だった。

 赤毛ギャルとフランキーはパニック状態なようで大声を上げた。



「女は服を直してさっさと出て行け。俺はそこのフランキー・ロッキードに用が有るんだ。

 おい、フランキーはそのまま両手を上げて座れ。下手に動いたら首を刎ねる」



 俺が魔法剣をフランキーに向けてそう言うと、赤毛ギャルはそそくさと上着を羽織って駆け足で出て行った。

 フランキーは額から汗を垂らしながら、両手を上げてソファーに座っている。



「て、てめえ…俺が『ロッキード・ファミリー』の大幹部様だと分かってんだろうな?」


「当然だろう?お前にコイツらを差し向けて来やがったんだからな」



 フランキーの問いに答え、俺は後ろの3人に目で合図を送る。

 3人はビビり状態から一変、目をギラつかせて俺の横に並び出た。



「て、てめえら!しくじりやがったのか!

 クソ!使えねえヤツらだ!」


「何だとコラァっ!テメエこそ口封じにドルドを雇うとはどういうつもりだコラァ!」


「安い金でこんなバケモンに差し向けやがって!ぶっ殺すだけで済むと思うなよ!」


「あー、マジでムカつくわ。先ずは全身の皮を剥ごうぜ」



 暗殺者を見るなり、ヒステリックな声で非難するフランキー。対するパイヤ、ボルテガ、アッシュの3人は口々に怒声をぶつける。



「ちょ、ちょい待て!ドルドは!?ドルドはどうした!?

 あの野郎もしくじりやがったのか!?」


「ああ、アイツなら遠くから豆鉄砲を打って来るもんで、俺が両手を斬り落としておいた。

 ホレ。アイツの両手だ」



 フランキーはドルドの事が気になったらしい。俺は再び異空間収納からドルドの両手を取り出し、フランキーに放り投げた。

 両手を見たフランキーも、「ひぃぃ」と情け無い声を上げて震え出す。


 暗殺者といいフランキーといい、このファミリーの関係者は肝っ玉の小さな連中の集まりなのだろうか?



「ヨシュア様、奥の部屋に製造や売買に関する書類が有ったのですわ!それから地下室に沢山の違法キャンディが保管されているのですわ!

 衛兵隊のモーゼルさんに連絡をしてもよろしいでしょうか?」



 別行動でコイツらの違法キャンディ売買の証拠を探っていたラフィが部屋に入って声をかけて来た。

 流石俺の最愛のラフィ、仕事が早い。



「うん、お願いするよ。これでモーゼルの面目も立つだろ」


「ヨシュアさん。このクソ野郎をやっちまって宜しいっすか?」



 俺がラフィに連絡を任せると、待ちきれない感じのパイヤが問いかけて来た。

 まあコイツらも口封じで殺されかけたから、相当ムカついているんだろう。



「ああ。ただし、絶対に殺すなよ。コイツは違法キャンディ売買の罪で法の裁きを受けさせるからな」


「ま、待てテメエら!考え直せ!その冒険者どもを殺ったら五千万、いや、1人1億やるぜ!

 な?だから考え直せ!」



 往生際の悪いフランキーは、この期に及んで暗殺者の3人を買収しようとしている。



「うるせえ!俺たちはヨシュアさんに忠誠を誓ったんじゃ!」


「観念しろや!このクソ野郎が!」


「粗末なモノを晒しやがって!」



『青い3年生』はフランキーの買収話に乗る事も無く、フランキーに容赦無い蹴りを浴びせた。

 プロの暗殺者の本気の蹴りに晒され、床で亀のように丸まっているフランキーからは、マフィア幹部の威厳などまるで感じられない。



「もう充分だろ、それくらいにしておけ。

 そろそろここに衛兵隊が来る。お前らは早くトンヅラした方が良い」



 パイヤ達が10分程フランキーをボコボコにした所で、俺は3人に痛め付けるのを止めさせ、さっさと逃げるように言った。

 時間的にも、そろそろ衛兵のモーゼル達がここに来るだろう。

 暗殺者がこの場に居るとややこしくなりそうだから、コイツらには逃げて貰うのが一番である。



「ヨシュアさん、マジでこの恩は忘れねえっす」


「コレ、俺たちの連絡先なんで、お役に立てそうな事が有れば呼んで下さい」


「いつでも、何処にでも駆けつけますんで」


「おう。暗殺を頼む事は無いが、裏社会の情報が必要な事が有るかも知れないから、そん時はお前らに連絡するよ。

 そんじゃあ気を付けな」



 俺はパイヤ、アッシュ、ボルテガと最後に言葉を交わした。

 3人がアジトから出て行ったのを確認すると、ボコボコにされて口から血を流しているフランキーに向き直って問いかける。



「おい。今回の件は上からの命令なのか?

 それともお前の独断でやったのか?」


「くっ…お、俺様の独断だ!」


「そうか。なら、お前が捕まれば一件落着だな」


「ま、待ってくれ!あ、アンタに10億ゲスやるぜ!

 それで見逃してくれ!な?そんだけありゃあ、アンタだって冒険者みてえな下らねえ事をせず、遊んで暮らせ、へげぇぇあけぁあ!……」



 この後に及んで見苦しく買収しようとしたフランキーに、俺は雷属性の魔力を纏わせたデコピンをお見舞いした。

 フランキーは変な声を上げると、身体をピクピクさせて失神した。

 これでコイツは、これ以上余計な事は喋らないだろう。



◆◇◆◇◆



 〈第三者視点〉



「お、おいおい、コレは何だ?

 一体どうなってるんだ?」



 フランキーがヨシュアに気絶させられて数分後、匿名の通報により、アジトに踏み込んで来た衛兵のモーゼルが、下半身丸出しで泡を吹いているフランキーを見て、思わずそう呟いた。

 部屋にはフランキーが違法キャンディー製造に関わった証拠となる書類が撒き散らされている。

 モーゼルが散らばった書類を手に取り、内容を確認していると、他の部屋を調べていた若い衛兵がフランキーの部屋に駆け込んで来た。



「た、大変です!モーゼル衛兵長、地下部屋に大量の違法キャンディが!」



 衝撃的な報告を受けたモーゼルは、他の衛兵にフランキーを拘束するよう命じ、報告して来た若い衛兵の後について部屋を出る。

 若い衛兵に先導されて地下室へと向かうと、そこには大量の違法キャンディが保管されていた。



「でかした!コレは大捕物になるぞ!直ぐに応援を呼べ!

 この建物を徹底的に調べるぞ」



 モーゼルは若い衛兵に指示を出し、地下室内を魔導カメラで撮影し始めた。

 街に蔓延しつつあった違法薬物の本拠地を、モーゼルが抑えたのだから、彼の興奮は計り知れない。

 違法キャンディの保管場所の撮影を終え、一旦一階に上がろうとしたモーゼルは、地下室の扉の内側に、メモ紙が貼り付けて有る事に気付いた。



『昼間は迷惑をかけて申し訳なかった。今回の功績で、貴方のような正義感に満ちた衛兵が正当な評価を受ける事を願う』



 メモに書かれた文面を見たモーゼルの頭に浮かんで来たのは、銀髪のハンサムガイ───ヨシュアだった。



「あの野郎……余計な世話焼きやがって…」



 そう呟いたモーゼルは、言葉とは裏腹に微笑みを浮かべている。

 しばしの間を起いてモーゼルは表情を引き締め、部下達に指示を出すべく一階へと戻るのだった。



 ヨシュアとラフィの暗躍により、違法キャンディの元締めであるフランキーは逮捕され、アジトからは大量の違法キャンディや証拠書類、違法キャンディ密売で得た多額の金が押収された。

 大捕物の立役者となったモーゼルは、衛兵第2隊副長に昇格となるのだが、それはまだ先の話。


 影の功労者であるヨシュアとラフィは、しれっとアズベルト会長と合流し、王都への帰路の護衛を無事完遂したのであった。



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