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42話 Cランク冒険者達への指導 ②



「魔力の制御が甘いですわ!Bランクダンジョンボスには魔法防御を使って来る魔物もおりますので、もっと素早く正確に制御するように!」



ラフィは魔法使い系の天職の冒険者達をシゴいてらっしゃる…

たまに見せる鬼の形相で、ちょっとでも甘いと檄を飛ばす。魔法使い系の子らはちょっと可哀想かも…

おっと、俺も近接系の奴に指導しないとね。



「おい、そこ!下半身の踏ん張りが甘いだろ!

んな屁っ放り腰じゃ、足場が悪いと力が入らんぞ!」



俺はペイロンに檄を飛ばすと、素振りをする彼に足払いをかます。簡単にズッコケたペイロンは、最早反論する気力も無いようだ。

無様に地べたにへたり込んで、肩で息をしている。



「なんだぁ?最近のCランクは随分甘ちゃんが多いな!

たかが1時間の素振りでもうギブアップか!?」



俺は他のへばっている冒険者達にも、強い語調で怒鳴り付けた。たかが30㎏の模造武器の素振りで息を切らしているようでは、この先の成長など望むべくも無い。



「良いか!闇雲に振るなよ!自分が苦戦する魔物をイメージして、実際に戦っているように振れ!

魔力を使って身体強化なんぞするな?見かけたらしばき倒すからな!」



俺は何も口だけで厳しい事は言ってない。巡回の時以外は60㎏の模造刀を持って、実際に素振りを見せている。

俺がイメージしているのは、過去に一度だけ戦った事のある厄災級魔物の、エンシェントドラゴンだ。

奴は飛行速度も突風より速く、爪や尾を使った攻撃も強力無比。極め付けは1つの街を一瞬で消し飛ばすブレスだ。

俺は想像上のエンシェントドラゴンの尾の攻撃を受け流し、即座に斬り付ける素振りを繰り返して見せた。



「良いか!俺が使っている模造刀は、お前らの倍の重さのモノだ!

俺よりも速く振るえるよう心がけろ!」


「ハァ、ハァ…あ、アイツマジで人間か?太刀筋が全く見えねえ…」

「エ、Sランて…み、みんなああなのか?」

「ん、んな訳ねえだろ…ヨ、ヨシュアさんが…じ、人外…ウプッ!ト、トイレ…」



前衛職30人の内、まともに素振りが出来ているのは2人だけか…ダメダメだな…



「良し、素振り止めい!獲物を持ったまま集合!」



俺はだらし無さに見兼ねて集合をかけた。皆んなダラダラと集まって来る…



「君らは普段一体どんな鍛え方をしてるのかね?

午前中に何が何でも達成するって言ってた君、重力操作結界が常時発動するダンジョンに挑んだ時、そのザマでどうやって依頼を達成するんだね?」


「重力系の仕様が有るのはAランダンジョンからですし…その頃には…鍛え上げとくっつーか…」


「君ねえ、Aランクダンジョンの依頼はBランクパーティーになれば受けれるんだよ?

現時点でそのザマなのに、飛躍的に力が上がるとでも?」



俺の追及に赤髪の彼は言葉を詰まらせた。ふふふ…悔しいのう、悔しいのう。

その悔しさをバネにして努力してくれると、嫌味を言った甲斐があると言うもの…



「ちょっと、近付かないで下さいまし!」



俺がしたくも無いお説教をしていると、離れた所で魔法の指導をしていたラフィの声が聞こえて来た。

そちらを見てみると、座学の授業で良い事を言っていたセレンが薄笑いを浮かべて、ラフィににじり寄っている。

俺は前衛組に断りを入れて、急いでラフィの方へと駆けつけた。



「ねぇ、やっぱりヨシュアさんが強いから抱かれたいんでしょ?ねぇ、教えて下さいよ」



セレンはラフィににじり寄りながら、何か気持ち悪い質問を投げかけている。



「ぶ、無礼ですわ!ヨシュア様は強いだけの方では有りません!お顔立ちもとても美しく整っていて、凛々しいのですわ!」


「な、何だよう…やっぱりイケメンが良いってのかよう…あなた…僕のぴょこみんよりも可愛いからって、チョーシに乗ってるよね?

外見は完璧でも、中身はビッチだよね?」



こ、こいつ…超ヤバいヤツじゃん…

ラフィにこんな輩の相手をさせる訳にはゆかぬ!



「おい!セレンと言ったね?俺の、か、か、か、彼女は断じてビッチでは無いゾ!

そんな下衆な勘繰りは止めて、さっさと実技演習に励みたまえ!」


「う、うるさい!ヨシュアさんはリア充だから、僕のこの気持ちが分からないんだ!

ぼ、僕は…推しと下半身でも繋がりたいんだ!僕はリア充なんかより、ずっと、ずっと強いんだからなぁ!」



セレンは支離滅裂な事を喚いて、手にした魔導端末に凄まじい量の魔力を込めた。

コイツ…相当プッツン来てやがる…



「待っててね、ラフレシアさん。このリア充を殺して、僕が一晩中君の事を教育してあげるから…

『二次元召喚』!!!」



気持ち悪い事をラフィに言い聞かせたセレンは、何やら聞きなれないスキル名を叫んだ。

その瞬間、ヤツの魔導端末は輝き出し、1人のロリっぽい少女が現れた。



『悪いお兄ちゃんはお仕置きぴょん!』



少女は何かワザとらしい言葉を放ち、何か独特のポージングを取り出した。

服装も独特で、頭にウサ耳のカチューシャを付け、フリルがやたらと施されたミニスカートのドレスに、ボーダーのニーソックス。足元は厚底の靴を履いている。

有り体に言ってダサい。



「ククク…驚いたかい?ぴょこみんがキャラデザを担当したゲームアプリ、『ケモ耳美少女ガールズファイル』のSSRキャラ、バニッサたんだよ。

ちな、CVもぴょこみんさ。この子をゲットする為に20万ゲスは突っ込んだなぁ…」


『ご主人様をいぢめたら許さないぴょん!』



な、何か分からんが、この少女はマニアックなゲームのキャラクターという事か?

そんな物を召喚して何になると言うんだ?



『いっくよ〜!らぶりぃ☆バニー☆ストリームぴょん!』



ウサ耳ちゃんは、何か変な技名を言って体を反転させると、俺に後ろ蹴りを放って来た。

蹴りは大して早くも無いので、難なく躱した俺は、無防備なウサ耳ちゃんの頭にゲンコツを落とした。



『あいたたた〜。失敗しちゃったぴょん』

『ご主人様をいぢめたら許さないぴょん!』



ウサ耳ちゃんはゲンコツを落とされた頭を抑える事もなく、ゆるいファイティグポーズを取って、変なセリフを喋った。

さっきも同じセリフを言った気がするが、ゲームキャラだから決まったセリフしか言えないんだろうか?



『いっけえええ!バニバニしゅうてぃんぐすたぁぴょん!』



ウサ耳チャンがセリフを言って両手を上に上げると、上空からイラストっぽいウサギの顔型の大きな物が、カラフルな光の尾を引いて降って来る。

これも大してスピードはないけど、あんな物が地面に落ちたら訓練場が変形するかも知れない。


俺は直ぐに魔法剣を取り出し、闇属性変換した魔力を注ぎ込んだ。



「『魔力撃:闇渦』!」



ウサギの顔型をした大きな物体に向けて剣を振るうと、闇の魔力撃は螺旋状に渦巻いて飛んで行き、ウサギの顔型の何かをすっぽりと包み込んで、上空で霧散した。

と同時に、俺は速攻でウサ耳チャンに接近して、前蹴りを放った。

ウサ耳ちゃんは凄いスピードで吹っ飛び、訓練場の壁に激突。体はキラキラした光の粒子に分解されて、セレンが持つ魔導端末へと吸い込まれて行く。



「な、何い!1,200万も有るバニッサたんのHPを、ただの蹴り一発で削り切っただとぉっ!?

リ、リア充とは、こんなにも強力な生き物なのか…だが、退けぬ!退けぬのですよ!」



セレンは俺に憎悪のこもった睨みを効かせながら、魔導端末に魔力を込めた。再び光る魔導端末。

現れたのは…



『みぃにゃのご主人様をいぢめるにゃ〜!』


「SSSRキャラのみぃにゃたんですよ!このゲームに3体しかいないSSSRキャラの威力、思い知って下さいよぉ〜」



ふむ…なんか矢鱈とモフモフした帽子を被った女の子だな。帽子にはネコ耳が付いている。

両手に同じようなモフモフ素材の大きなグローブをはめており、それが猫の前脚を意匠しているような感じで、指先に鋭い爪が付いている。

履いているモコモコブーツも、猫の後ろ足をイメージしたデザインで、こんもりと大きく膨らんだ足先からは爪が飛び出してる。

服装は裸にトイレットペーパーを巻き付けて、大事な部分を隠しているだけの簡素なものだ。



『切り刻むにゃ!ぬこぬこパンチだにゃ〜!』



決めゼリフを言い放ったネコ耳ちゃんは、中々のスピードで迫って来た…けど、彼が言う程強いとは思えない。

爪のついたモコモコグローブを稚拙なフォームで突き出して来たけど、父さんの右ストレートとは比べ物にならないお粗末さだ。

俺は魔法剣を異空間収納に収め、渾身のライトクロスを放った。



グシャアアアア!!!



右の拳に肉が潰れたような感触が伝わり、ネコ耳ちゃんは訓練場の壁まで吹っ飛んだ。



「見たか?右ストレートはこうやって打つんだ。

インパクトの瞬間にこう、拳を固く握り込む感じで、ねっ!」



バギャアア!!!



俺は一瞬でセレンの目の前に移動して、彼に右ストレートを叩き込んだ。

セレンは後方に転がって、白眼を剥いている。



「君ら魔法系の天職持ちも覚えておくと良い。

クエスト中に魔物に囲まれて、魔法発動が間に合わない時なんかは、強烈なパンチや蹴りが役立つ時もある」



いつの間にか俺とセレンのプチバトルを受講者達が見ていたので、俺は彼女らに解説をした。



「ちょっ、ヨシュア様の動き見えた?」

「見、見える訳無いでしょ!気付いたらネコ耳の子が吹っ飛んでたわよ!」

「私は辛うじてあのデブ君を殴った時は見えた。手加減してたからだよね?」



うん…あの程度のパンチさえ見えぬとは…いくら後衛職とは言え、前衛の動きを追えないのは問題がある。

今のCランクは問題が山積みだな…



「ヨシュア様はご自分に厳し過ぎる余り、他の方に対する要求も高くなっているのですわ」



俺がCランクの問題点を頭の中で整理していると、ラフィがため息交じりに話しかけて来た。



「そんな事は無いだろう?俺がCランクの時は30㎏程度の模造刀の素振りなんて10時間以上やれてたし、クソビッチのアマンダなんて、Dランクの頃から50kgの模造刀を5時間はぶっ続けで素振りしてたぞ?」


「宜しいでしょうか?ヨシュア様はAランク当時でエディさんを圧倒していたんですわね?

アマンダという方も、勇者の天職を持つ天才だと聞いておりますわ。そんな一部の例外的な方を基準にしていては、とても身体が保たないかと思われますわ」



むぅ…ラフィの言う事には、何とも言えぬ説得力が有る…

確かにアマンダにしても、ラフィにしても、エレナにしても、天才としか言えない逸材だ。俺は特殊な才能を持つ人たちに囲まれていたので、知らずと視野が狭くなっていたのかも知れない。

『宵闇の戦乙女』の時は、他の冒険者との交流が無かったしな…



「そうだな。彼らの仕上がり具合を注意深く見て、それに合った指導を心掛けるよ」



ラフィのアドバイスのお陰で、自分の至らなさに気付いた俺は、その後はカリキュラムを改めた。

時間が限られているので、簡単な模擬戦を行い、各自の長所と短所を簡単に伝える程度だったが、それが良かったようで、実技演習が終わった後には色々な人からお礼を言われた。


俺とラフィはギルド長のドミンゲスに報告を終えて、仲良く小指を繋いでパーティーハウスへ帰ろうとしたのだが…



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