41話 Cランク冒険者達への指導 ①
「本日指導員役を務めるヨシュアだ。
Cランクに上がる程の君らには耳タコな話も有ると思うが、俺のカリキュラムに最後まで付き合って貰えると有りがたい」
俺はギルド内の会議室の壇上に立ち、集まったCランク冒険者達に挨拶をした。
今日はギルドマスター直々に頼まれた、Cランク冒険者講習の指導員としてやって来たワケだが…
「ねぇねぇ、アレが『万能の貴公子』ヨシュアさんでしょ?マジでカッコ良過ぎじゃない?」
「ヨシュア様に気に入って貰えたら、『豊穣の翠』に加入出来て、ヨシュア様ハーレムの一員になれるみたいよ?」
「あ、今ヨシュア様と目が合った!コレは私がハーレム入りで間違い無いわ!」
「ヨシュアさんがアンタみたいなブスを見る訳無いでしょ。あたしを見たに決まってるわ」
「クソ、『無能のヨシュア』が調子こきやがって」
「こうなったら、模擬戦でボコってビッチどもの目を覚ましてやるしかねえな」
ううむ。講習の参加者が矢鱈とざわついておる…
とてもやり難い雰囲気だな。
「私はヨシュア様の婚・約・者で、『豊穣の翠』のリーダーを務めております、ラフレシアと申しますわ。
本日はヨシュア様のサポートを務めますので、くれぐれも、わ・た・く・し・の大切なヨシュア様にちょっかいなどかけぬようお願い致しますわ」
指導員補佐のラフィが、何故か敵意むき出しで参加者一同に婚約者宣言をし出した。
やだなぁ。そんなに堂々と言われると、めちゃくちゃ照れ臭いじゃないか…
『Yo!Yo!Yo!今のは聞き捨てならねえぜ!ラフィYo!お前のVirginは俺様へのmarginって約束したじゃねえか!』
突如、魔導マイクを片手にしたチンピラ風の男が、独特の言い回しでラフィに反論した。
っていうか、ラフィの処女が奴のマージンの意味がよく分からんが、何とも殺意を覚えるフレーズだ。
「あ、貴方はペイロン!まだCランクで燻っていたのですわね!
それよりも、私の処女はヨシュア様のモノですわ!今の発言を取り消しなさい!」
『Oi!Oi!Oi!照れんなよラフィ!オレとお前は夜のバディー!早く抱かせなよ、そのナイスバディ!』
ラフィがペイロンと呼んだその男は、尚も独特の言い回しでラフィに失礼な事を言いやがる。
ペイロンは鳥の巣のような縮れ毛ヘアで、大きなグラサンをかけている。首には金の太いチェーン。やたらとダボダボしたTシャツとデニムで決めている。
「おい、君。ペイロンと言ったか?俺のか、か、か、彼女に失礼な事を言うな。
他の受講者にも迷惑だし、罰としてバケツを頭に乗せて廊下に立ってなさい」
『邪魔すんじゃねえよこのどもり野郎!所詮てめえはタダの無能!俺がぶちかます一流のフロー!かまされたお前のチ◯ポは不能!』
ペイロンは独特な節回しを止める事なく、なんかムカつく事を言って来た。
語尾で韻を踏むのがコイツのスタイルなのか?
「おい、やっぱペイロンのフリースタイルは最強だよな」
「ディスられたヨシュアは何も言い返せないぜ」
「ザマァねえな。ラップバトルでキング・ペロンに敵うわけねえYo!」
ううむ…何やら受講者の男連中から専門用語が飛び出している。
あの韻を踏んで相手を馬鹿にするのがラップバトルとやらなんだろうか?
『ヨシュアはビビりで吃るタイプ!皆の賛同を得る俺のライム!ラフィが求めるのは俺の愛撫!今夜は2人でラブラブタイム!』
クソ!この野郎言いたい放題言いやがって!
よし、俺だって即興でぶっ放してやらあ!
「うっせえ喋んな息が臭え!お前のねとねとライムはまるでスライム!I'm No. 1!ラフィにホールインワン!ワンダフルタイムはお前に無縁!所詮お前は冒険者では食えん!」
「お!ヨシュアが小刻みに韻を踏んだぞ!」
「語尾でしか韻を踏まないペイロンを出し抜いた形か。面白え」
「これぞラップバトルの醍醐味!それ以外は全部粗大ゴミ!」
成る程、即興で韻を踏んで相手を馬鹿にすれば、周りのみんなが盛り上がるシステムか。
『何だよそのチャチなライム!滞ってんぞ俺への債務!利息がわりにカットするテメエのパイプ!ひれ伏すテメエは俺の座椅子!』
「おお、何ともダサいお前のフロー!風呂入って1人センズリでもしな!粗品にもならねえモジャモジャ頭!仲間からハブられたお前はオカマ!最早ラフィに見向きもされない、ここがお前のクソなお墓!」
「おっと、コレはヨシュアが優勢か?」
「ペイロンはライムという言葉を使い回したしな」
「ラフレシア様はヨシュアに見惚れてる!俺が欲しいのは真夜中のテル!」
おお、どうやら俺が優位なようだ。ペイロンは顔を歪ませて、中々次の言葉が出てこない様子である。
『俺はイケてるモテモテボーイ!お前はイケてないシャバシャバボーイ!そんなにイケてないヤツは見た事が無いぜアニマルボーイ!』
「能無し野郎はボーイを連呼!援護射撃も無く喚く負組!させ過ぎてガバガバな君のアナル!余る皮を持て余す君のチ◯コ!インコのブツよりもてんでお粗末!鼓膜に響かねえ君の泣き言!編み物でもしてな、お友達と!Yo,この波を逃して負け確定!イカ臭えぜこのヘナチン野郎!」
「コレは完全に勝負アリだぜえ!ボーイ連呼はダサ過ぎだぜえ!」
「ヨシュアさんマジでドープだな」
「くたばりな、この負け犬野郎!俺たちは早く講習やろう!」
周囲の反応で己の負けを悟ったのだろう。ペイロンは崩れるように床に這い蹲って、両肩を震わせている。
「分かったね。ラフィは俺の大事なこ、こ、こ、婚約者なんだ。他の男に指一本触れさせない。
ラップバトルの敗者の君は、大人しくバケツを頭に乗せて廊下で立ってなさい」
「ヨシュア様…ラフレシアは世界一の幸せ者でございますわ。
今日は講習は適当に切り上げて、私を存分に抱いて下さいまし」
俺がペイロンを廊下に立つよう支持すると、ラフィはピトッと巨大なメロンを俺の腕に押し当てて来て、潤んだ目で俺を見つめて来た。
オッパイと潤目のダブル攻撃はズルい。気を抜くと、ラフィの誘惑に負けてしまいそうになる…
「んんっ、そういう行為は俺たちにはまだまだ早いだろう。
それに、講習はキチンとやらないとな。
さて、諸君。午前中は座学講習となる。先ずはCランク冒険者の心掛けについてお浚いをしよう。
君たちがクエストを行う際に、特に心掛けている事を教えて欲しい。では、そこのラップが得意そうな赤髪の君」
俺は先程のラップバトルの際に、微妙に韻を踏んでガヤっていた男を指差した。
「あ、俺スカ?スープスパ!えっと、やっぱどんな事をしてでも、クエを達成させる事すかね?」
「うむ。それも大事な事では有るが、どんな事をしてでもというのは少し違うかな。無謀な事をして死んでしまっては、元も子もない。
他にも聞いてみよう。そこのツインテの女性はどうかな?」
俺はエレナっぽい髪型をした女性にも問いかけた。何となくエレナとステフを思い出して、ホンワカした気持ちにさせるからである。
「ひゃっ、わ、わたし?えっと、わたしはリマ・エッカートって言います!22歳です!
上から87、62、89のボッキュッボンのナイスバディです!えっと、好きな体位は正常位で、理想のタイプはヨ、ヨシュ…」
「んんっ!君は何を発表してるのかね?
Cランク冒険者として、クエストを行う際に特に心掛けている事は何かと聞いているんだ」
「あ、ご、ゴメンなさい!あの…やっぱり無事に帰って来る事ですかねぇ…」
「うん!それはとても大事な事だね。
やはり命あっての物種だ。失敗をすると冒険者としての評価は下がるかも知れないが、無事でさえ居れば幾らでも巻き返す事が出来る。
他には居ないかな?他に大事だと思う事が有れば、挙手をしてくれ」
俺が全体に投げかけると、手を挙げた者が2人居た。
俺は黒髪のぽっちゃり男を指名すると、おどおどしながらも答え始めた。
「う、うんと、、、ぼ、僕は…その、依頼人の人が…その…喜んでくれると良いなって思います」
「おいおい、『ぽっちゃりセレン』よぉ。ガキみたいなこと言ってんじゃねえよ!」
「そうだぞ、セレン。これだからアイドルヲタクは…」
「アイツ、推しと繋がる為に冒険者になったらしいぜ」
何人かの男が、『ぽっちゃりセレン』と呼ばれた彼の事をディスり始めた。
「おい、セレンが言った事はとても大事な事だ。
我々冒険者というのは、依頼人の方が居るからこそ成り立っていると言っても良い。
君らは研鑽を怠らなければ、じきにBランクへ上がるだろう。Bランク以上は指名依頼を受ける事が増えてくる。
今の内に依頼人の方に喜んで貰いたいと思って努力をしなければ、指名依頼を受けた時に100%のパフォーマンスが出来ないんだ。
依頼人の顔が見えようが見えまいが関係ない。例えば、薬草の採取依頼1つにしても、依頼して下さった方に感謝をして、喜んで頂けるように頑張るヤツが採取した場合、状態の良い薬草を採取して来るだろう。
子供の理想と侮る無かれ、ウチのパーティーのシンシアは、正にそう言う誠実さと謙虚さを兼ね備えた冒険者だ。
俺はシンシアのような冒険者が大成すると信じているし、俺も彼女を見習って努力しようと思っている。
中堅という重要なポストに居る諸君らも、セレンやシンシアのように、依頼に対して誠実で謙虚な冒険者になって欲しい。
セレン、素晴らしい心掛けだ。引き続きその心意気で頑張ってくれ」
話が長くなってしまったが、セレンを馬鹿にしていた連中も一様に静かになったし、納得もしてくれた様子だ。
その後も座学講義は続き、クエストを受ける際の下準備、クエスト種別で警戒すべきポイント等、基礎的な講義をして午前中の座学を終えた。
一旦昼食休憩を挟んで、午後からは訓練場で実技演習である。




