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39話 意外な繋がり

 


「此方がパーティー運用金の今月分の帳簿と、パーティー用口座の通帳ですわ」



 今日は3カ月に一度の『豊穣の翠』の定例会である。

 俺たちはパーティーハウスのリビングの食卓テーブルに座って、ラフィが差し出した帳簿に目を通した。

 ラフィが金をちょろまかす訳が無いので、ここまでする必要は無いと思うのだが、公正を重んじるラフィは毎回コレをしているらしい。


『豊穣の翠』では、クエストで得た報酬の約4割を運用資金にしており、残りの約6割をメンバーで等分している。

 帳簿を見るに、相当額の運用資金が余っており、全て積立金に計上されている。その額何と8千万ゲス。



「それにしても、凄い額の積立金だよなぁ。王都に立派な家が買えるんじゃないか?

『豊穣の翠』は俺が入る前から、凄いパーティーだったんだな」


「はぁ、何言ってんのよ?確かにわたし達はこれまで倹約して来たけど、こんな額の蓄えが出来たのはヨシュア様がウチに入ってくれたおかげよ?」


「そうなの!ヨシュア様が入ってから、エレナはお菓子をいっぱい買えるようになったの!」



 確かに『エレナお菓子代』としてしっかり計上されており、先月の合計額は5万ゲス以上になっている。


 それにしても、シンシアとエレナは俺が加入したからだと言ってくれたが、本当にそうだろうか?

 俺のスキルで3人はかなり強くなったと思うけど、ここに来た当初から3人は相当な訓練を積んだ実力者だった。更にあっという間に超級職にクラスアップする程の潜在能力を持っていた訳で、俺の力など微々たる物なんだが…



「いいえ、ヨシュア様のお力は微々たる物ではありませんわ。ヨシュア様が入る前まで、積み立て金は3千万ゲス程度だったのですわ。

 たった1ヶ月少々で倍以上になったのですから、ヨシュア様のお力は素晴らしいのですわ」



 またしても、ラフィに心を読まれた。俺のか、か、彼女になってから、以前よりもより正確に心を読まれている気がする。



「そ、そうか…役に立てているようで嬉しいよ。

 こんなに周りに慕って貰えるのはいつぶりだろう…

『宵闇の戦乙女』にいた頃も、最初の1年くらいはアイツらもラフィ達みたいに、俺の事を認めてくれていたんだがなぁ…

 その後の4年はボロクソ言われるようになって、すっかり自分に自信が無くなってしまったらしい」



 俺の事を褒めてくれるラフィ達の姿を見て、ふと『宵闇の戦乙女』に加入した当初の事を思い出した。



「シンシア、エレナ、良いですか?

 私たちがこれ程実力が上がったのは、全てヨシュア様のおかげなのです。

 私達は決してヨシュア様を軽んじる事の無いように、日々気を付けなくてはなりません」


「当たり前じゃない。わたし達はバカな勇者達とは違うわ。

 わたしを強くしてくれるヨシュア様に、毎日毎日感謝してるんだから」


「エレナもヨシュア様をお兄ちゃん認定したの〜!

 お兄ちゃんの事は絶対に嫌いにならないの〜!」



 俺は皆んなの温かい言葉に、思わず涙が出て来てしまった。恐らくラフィ達は、クソビッチどものようにはならないだろう。

 金に目が眩んで冒険者としての本懐を忘れたソニアとサーシャは、出逢った最初の頃から金への執着が見られた。

 加入して1ヶ月目には報酬の分配で、めっちゃ揉めたしな…



「あまり聞いたらダメかなって思ってたんだけど、勇者たちはそんなに酷い事をヨシュア様にしたの?」


「ううん…アマンダはまだ良い方だったかな?

 ボロクソ言われまくってムカついたけど、暴力は振るわなかったしな。

 賢者と聖女はマジで酷かった。3日に一度は拘束魔法で俺を動けなくして、半殺しに痛めつけられては治癒されてって感じだったかな…」


「何それ!ふざけんじゃ無いわよ!ヨシュア様にそんな事するなんて!

 ちょっと、聖女と賢者殺して来る」


「エレナも叩き斬るの!ヨシュア様をいぢめた奴らは許さないの!」


「一度殺すくらいじゃ生温いですわね。

 死の寸前で治癒しますので、10度は殺して差し上げましょうか」



 女性陣が急に殺気を放って席を立った…その表情を見ただけで、俺の大事な部分が縮み上がる…

 俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、人殺しはマズイ!



「ちょっ、落ち着いて!な?俺もムカついてるけど、殺すのはダメだ!っていうか、俺は『豊穣の翠』に入れて、皆んなの仲間になれて、今凄く幸せなんだ。

 あんな奴らと関わって、変なトラブルは起こしたく無いんだよ」


「ヨシュア様……ヨシュア様がそう仰るのでしたら…口惜しいですが、聖女と賢者の抹殺はまたの機会に致しますわ」


「う〜ん…わたしはまだちょっと納得行かない。

 そんな奴ら、殺されて当然なのに…」


「シンシア姉さま、ヨシュア様が居ない時にこっそり殺しに行くの!」


「だから、もうアイツらには関わるの無し!

 ハイ!もうアイツらの話はおしまい!

 そうだ!ラフィ達はどうして危険な災害指定特区を目指そうと思ったんだい?そもそも、ラフィ達がパーティーを組んだきっかけとか、俺は何も知らないな」



 殺気立った雰囲気を変えるべく、俺は前々から気になっていた事を3人に尋ねた。

 あのままだと、本当に殺しに行きかねないし。



「私たちがパーティーを結成した時の、いきさつでございますか?」


「確か、ラフィが変な男の冒険者にパーティーに誘われている所を、私が間に入って助けてあげたんじゃ無かった?

 それで仲良くなって…」


「ああ、そうでしたわね。私が冒険者登録をしたばかりで、右も左もわからなくて…」


「そうそう!あの頃のラフィったら世間知らずで、胡散臭い男の言う事を信じてホイホイ付いて行くもんだから、わたしが割って入ったの。

 もしあのまま行ってたら、ラフィは今頃娼館で働いているか、金持ちの性奴隷にされていたんじゃない?」



 な、な、な、何ぃー!?

 それはシンシアのファインプレーだ!こんな高貴なラフィがそんな事をされるなんて、有ってはならないんだからな。



「も、もう宜しいでは有りませんか!過去の事ですし、何事も無かったのですから」


「うん。わたしのお陰でね!それで、当時わたしはソロだったし、ラフィの事を放っておいたら危なっかしいからパーティーを組もうって誘ったの」


「マジか〜。シンシア本当ありがとな。その時ラフィを助けてくれて。

 あれ?そういえば、エレナの話は出てないけど、エレナは最初からパーティーに居なかったのかい?」


「エレナはパーティーを組んで3ヶ月くらい経ってから入ったのよね。

 ギルドの建物の前で、冒険者登録の仕方が分からないって大泣きしてたから、わたしとラフィが登録の窓口に連れて行ってあげて」


「そうでしたわね。私達がこの子を保護して差し上げなくては、野獣のような男に攫われてしまうと思いまして、一緒にパーティーへの加入登録もしたのですわ」


「ハイなの!お姉さまたちに保護して貰ったの!」


「子どもか!

 まぁ、エレナみたいな子が荒くれ者の中に居たら、保護しないとダメだと思うわなぁ。

 良かったな、エレナ。優しいお姉ちゃん達に保護して貰えて」



 俺は無邪気に笑うエレナの頭を撫で撫でした。今日も見事な妹っぷりである。



「あ、そうそう。災害指定特区を目指す理由だよね?

 わたしが子供の頃、故郷の村が災害級のダークドラゴンに襲われたんだよね。

 その時、青い短髪でムキムキマッチョの冒険者が駆けつけてくれて、ドラゴンをパンチ一発で吹き飛ばしたんだ〜。

 その姿に憧れて、わたしもいつか災害級の魔物から皆んなを守れる冒険者になりたいなって」



 青い髪にムキムキの体?ワンパンでドラゴンを吹き飛ばした?



「そ、それって、ウチの父さんじゃないかな?」


「え!あの人がヨシュア様のお父さん!?って事は…救国の英雄に村を助けて貰ったの!?」


「ま、まぁ、俺はその場にいた訳じゃないから断定は出来ないけど、父さんは青髪で拳鬼っていう超級職持ちだし、拳だけでドラゴンをぶっ飛ばせるなんて、父さんくらいしか居ないかも…」


「ウソ!全然ヨシュア様と顔違ったよ!?」


「ああ。俺と妹のうち2人は、顔が母さん似なんだ。その人ってこんな顔だった?」



 俺は魔導端末に保存されていた、父さんとの2ショット写真を開いてシンシアに見せた。



「あ、多分この人だ!10年くらい前でうろ覚えだけど、この人だと思う!え、ヨシュア様、お父さんに会わせてくれない?

 会ってどうしてもお礼を言いたいの!」


「う、うん…お、俺はあまり会うのはお勧めしないけど…」


「え!?どうして?ヨシュア様のお父さんが来てくれなかったら、私も村も焼き尽くされてたのよ!?」


「いや…色々とやらかしちゃう人でさ…会ったらきっと幻滅すると思う…

 で、でも、シンシアにとっては命の恩人だもんね。父さん魔導端末持ってないから直ぐに連絡付かないけど、後で母さんにメールしとくよ」


「ありがとう!ヨシュア様〜!そっか〜、ヨシュア様はあの人の子どもだったんだ〜。

 道理で人外なワケだよね〜」



 シンシアは父さんと会わせる約束をすると、めちゃくちゃ目を輝かせた。

 でも、ホントに幻滅しないだろうか?あの人可愛い女の子に目が無いんだよなぁ…

 父さんは女性関係が原因で、母さんとティファニーに10回くらい殺されかけている。特にティファは父さんを不潔な男呼ばわりして、とても嫌っている。

 弟のタイソンが女好きなのも、父さんの血を色濃く引いているからだろう。



「私は精霊王様のお導きを受けて、災害指定特区を目指しているのですわ」


「なるほど、精霊と心を通わせる事が出来るラフィは、精霊王様の啓示を受ける事が出来るんだな」


「ええ。精霊王様はヨシュア様にも好感をお持ちのようですわ」



 な、何ですと!それは何と光栄な事だろう!

 精霊王様は森羅万象を司る偉大な存在だ。並の人間には、その存在を感じ取る事すら出来ない。

 そんな精霊王様に良く思って頂けるだけで、感極まり過ぎて涙が出そうだ。



「エレナはね〜!お父さまにエンシェントドラゴンを倒して来いって言われたの!

 お爺さまの仇を討つの!」



 それからエレナはお家事情を語ってくれた。

 エレナの祖父が冒険者だった事。護衛クエスト中に現れたエンシェントドラゴンによって、祖父は帰らぬ人となった事。父や兄には戦闘系の天職やスキルは授からなかった事。

 確かに、最初から剣聖の天職を授かる人は滅多にいない。父親が期待を寄せる気持ちも分かるけど、エレナみたいに無邪気な女の子に敵討ちをさせるなんてな…しかも、相手は厄災級のエンシェントドラゴンだ。

 その強さは、ダークドラゴンの比では無い。死にに行けと言っているような物じゃないか…


 俺は災害指定特区に行っても、絶対にこの3人を守ると心に誓うのだった。



「帳簿の事から随分と話が脱線したけど、皆んなの話が聞けて良かったよ。

 それにしても、本当に見事な帳簿だなぁ。いつ、どんな用途で、幾ら使ったのかが分かりやすい。

 ラフィは将来良いお嫁さんになるな」


「何を他人事みたいに言ってるのよ?

 このまま付き合いが続いたら、ヨシュア様とラフィは結婚するじゃない。

 あ、それとも、ヨシュア様はラフィの事を弄ぶだけ弄んで、責任は取らずにとんずらするタイプ?」


「そんな訳あるかぁ!俺はラフィの事が大事で大事で仕方ないんじゃ!

 SSランクに昇格した暁には、結婚を前提とした交換日記を渡すつもりだ!」


「は?何でSSランクで交換日記なワケ?って言うか、結婚前提の交換日記って何?

 今より距離感が離れちゃうじゃん。そこは漢らしく結婚でしょ?

 ったく、ヨシュア様は本当に漢らしさのかけらも無いわぁ」



 シンシアは酷い言い様だ…本当に俺に毎日感謝してるのだろうか?

 って言うか、漢らしくないってのは聞き捨てならんぞ!俺の漢気に惚れたと言ってくれたハルトに申し訳が立たぬ!



「ええい!俺は漢じゃあ!ラフィとけ、け、け、結婚してえんじゃい!

 ラフィ、SSランクになったら、俺の嫁になってくれるけ?」


「もちろんですわ!あぁ、今日は何と素晴らしい日なのでしょうか!

 不束者の私が、ヨシュア様の婚約者に選んで頂けるなんて…」



 またしても、漢のプライドが暴走して大胆な事を…シンシアがやたらとニヤニヤしている。どうやら、またしてもシンシアに嵌められてしまったらしい。

 だが、漢としては責任を取るのは当然だろう。1回とは言え、いい所のお嬢様と言われるラフィとキッスをしたのだ。

 って言うか、俺はラフィと離れる事は考えられない。結果として、暴走して良かったと言える。



「で、ではヨシュア様…そ、その…婚約記念の口付けを…」


「ま、待ちなさい!

 気品に満ちたラフィに2度もキッスするなんて、畏れ多いにも程が有りますぞ!

 ラ、ラフィとのキッスは、童貞の俺には刺激が強過ぎるのだ!か、代わりと言っては何だが、そ、その…ハ、ハグで良いだろうか?」


「ええ、もちろんですわ!ヨシュア様とハグ…素敵ですわね」



 俺とラフィは立ち上がり、熱い抱擁を交わした。

 ああ…俺の腹部に、ラフィの大きなオッパイが感じられる…

 ぬう…こ、コレは…またもや魔力が溢れて…『フェロモンイーター』が働いたのか、女性陣が顔を赤らめて悩ましい声を上げている…

 普段、品のあるラフィの様子も、何処か悶々とした表情になっておるでは無いか。


 もしかしたら、アマンダ達がビッチ化したのはこのスキルのせいかも知れない。



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