20話 美少女ハイエルフのパンツをクンクンして最強に!?
「きゃあああ!ヤバみんなの〜!!」
独特な言い回しをするエレナが身体を震わせて、凄いスピードで後方へと跳び退く。
『フェロモンイーター』の効果によって相当な魔力が分配されたので、かなり驚いたのだろう。
だが、俺はエレナ以上に自分の体内を駆け巡るパワーに驚いている。
何故なら俺はレジーの魔法起動よりも早く、ヤツの懐へと飛び込んでいるのだから…
「なっ、お前、いつの間…」
ザシュンッ!
レジーが俺の急接近に驚いている内に、俺はヤツの右腕を斬り落としていた。
何だろう…この感覚。自分がこう動こうと思った時には、既に俺の身体はそれに反応して動いている。
意識から身体へ伝達するスピードが、以前までの比では無い。
「これ以上抵抗するなら次は首を落とすけど?」
俺はそう言って、レジーの首元に魔法剣の切っ先を突きつけた。
これでコイツが大人しく捕まってくれれば良いんだが、レジーの漆黒の闇のような瞳を見る限り望みは薄いだろう。
「何だよ…さっきまでは手を抜いてたって事か…
腕も斬られちゃったし、抵抗するだけ無駄だろうね。
最後に君の名前を聞かせてくれないかな?」
レジーは意外にも諦めたようで、何故か俺に名前を尋ねて来た。
確かに彼はフルネームを名乗ったのに、俺だけだんまりを決め込むのは失礼だろう。
「ヨシュア・ワイルダーだ」
「ワイルダー?もしかして、『暴走超特急』"シュガー"・レイの子供かい?
道理で馬鹿みたいに強いわけだ」
レジーは父さんの事を知っているようだ。まぁ、王国民なら知っていて当然か…
俺も冒険者に成り立ての頃は、やたらと注目されてたっぽいしな。
すぐにクソビッチどもの大躍進の陰に埋もれてしまったけれども。
そう言えば、可愛い妹達も学校で注目されて大変だって言ってたなぁ…ああ、俺の可愛いティファニーは学院で上手くやってるだろうか?
マズい、今はレジーの事に集中しなくては。
「不思議がる事は無いさ。君のお父さんは国民で知らない人は居ない程の英雄なんだから」
レジーはそう言うと、足元に不気味な魔法陣を展開した。何の魔法かは分からないが、ヤツが相当量の魔力を足元の魔法陣に込めている。
「オマエ、何をしている!早く魔法陣を解除しないと叩き斬るぞ!」
「ヨシュア、君は良いヤツだ。無抵抗の人間を殺せないだろ?」
ヤツが勝ち誇ったように言った次の瞬間…
ドグオオオオーン!!!
レジーの足元の魔方陣が大爆発を起こした。
俺は爆発を視認しながら超高速で魔法結界を張り、10mほど後方にいたエレナの近くへと退避した。
「それにしても、我ながら凄まじいパワーだな…
爆炎や爆風が届くよりも速く動けるなんて思わなかった…」
「爆発より速く動くヨシュア様は人間をやめたの〜!」
独り言のつもりが、エレナに聞かれていたらしい。刀を頭上に翳してピョンピョン飛び跳ねていて危ない。
いや、今はそんな事よりもレジーの事だ。
索敵魔法で注意深くヤツの魔力を探るが…ヤツと思しき魔力の反応は何処にも無かった。
まぁ、ヤツが立っていた場所の周囲に色々とグロい肉片が飛び散っているし、死んだと見て間違いは無さそうだ。
さて、刀を片手にみんみん歌っているエレナに、改めて注意しないとな。
「み〜んみんみん〜♫可愛いエレナはヤバみんみん〜♩」
「なぁ、エレナ。前にも抜剣したまま跳ね回ってたけど、淵明流の師匠みたいな人に注意されなかったのか?」
「みん…?淵明流はエレナが考えた剣術なの。シショーなんて居ないの〜!」
やはりそうか…型の稽古はしないし、戦闘時のエレナは構えがその時によって違うから、それっぽい名前を付けてるだけだとは思っていたけども…
俺はエレナやクソビッチアマンダのような天才肌の剣士に、何故か嫉妬や羨望を覚えてしまう。
子供の頃から毎日鍛錬と反復練習を重ねて、何とか今のスタイルを確立した俺とは違い、彼女ら天才は感覚的に小難しい事をアッサリとやってのける。
先程のエレナとレジーの闘いの時も、彼女の天才ぶりは垣間見えた。
ヤツの動きを探り、どの角度から魔法を打ち込んで来るかを考えて防いでいた俺と違い、エレナはただ単純に飛んで来た魔法を剣の衝撃波で反射的に撃ち落としていたんだ。
しかも、クラスアップ前の俺よりも、エレナの方が的確にレジーの魔法を防いでいたんだから何か悔しい。
俺もジョブがクラスアップして、思考と運動が直結するような感覚が身に付いたので、彼女ら天才との差が埋まったのかも知れないな…
「ハァ…ハァ…だ、大丈夫か、兄弟!?」
ラフィ達から遅れる事5分、ハルトのキョーダイが息を切らせて駆けつけてくれた。
「ああ、ウチの頼りになるメンバー達のおかげで、何とか『ミッドナイト・ランブラー』を倒したよ。
寝てただろうにわざわざ来てくれてありがとな」
「ゼェ…ハァ…み、水臭えぜ兄弟。
そ、それにしても、あ、姐さん達滅茶苦茶速えぜ…ハァ、ハァ…」
いくらハルトとは言え、全力で駆けつけたラフィ達には付いて来れなかったみたいだ。
「ねぇ、ねぇ、ハルト〜。さっきヨシュア様がラフィお姉様の脱ぎたてパンツをクンクンしたの〜!」
「はっ!?ラフレシア姐さんのパンツを!?
…変態過ぎるぜ、兄弟」
エレナの唐突なカミングアウトによって、五分の兄弟分から軽蔑の目を向けられてしまった…
◇◇◇◇◇
結局、その後のダンジョン探索は打ち切りとなった。
レジー戦後にセーフスポットに戻った俺たちが、他のパーティーに事のあらましを説明した所、今回の合同探索のまとめ役である『ライ麦畑で羽交締め』リーダーのエルドがギルドとやり取りをして、大規模探索打ち切りが決まったのだ。
ダンジョンから帰還した我々を待ち受けていたのは、ギルドでの事情聴取だった。
当事者の『豊穣の翠』のメンバーと、俺と一緒に見張りをしていたホドリゴが、ギルド長の執務室に呼ばれて事細かな説明をする事になったんだ……が。
「ほう、ラフレシア嬢の脱ぎたてパンツの匂いを嗅いだら最強に…ねえ…」
ギルド長のドミンゲスが、ニヤニヤした下衆いツラで俺とラフィを交互に見やる。
エレナが余計な事を話したせいでこの有様だ。
「ヨシュアよぉ、冒険者業界では今、女性冒険者へのセクハラが問題視されてるのは知ってんだろ?
お前、幾らツラが良いからって調子に乗り過ぎてんじゃねえのか?」
ドミンゲスはニヤケ面から打って変わって、鋭い眼差しを俺に向けて来る。
確かにセクハラ問題は冒険者新聞でも度々取り上げられており、冒険者の多い王国内では社会問題と化している。
「ヨシュア様は決してそのような下賤な男性では有りませんわ!
ヨシュア様は私たちを『ミッドナイト・ランブラー』から守る為に…その…私の下着を…ああ、もう!
とにかく、今回の事はセクハラなどでは有りませんので!」
ラフィが赤面しながらドミンゲスに食ってかかった。
普段お淑やかなラフィが、パーティーメンバー以外に感情を露わにする事はとても珍しい。
「ま、まぁ、ラフレシア嬢が嫌じゃないなら良いんだ。
俺も冒険者のプライベートに口を出す程野暮じゃねえしよ。ただ、今後イチャイチャするなら他の連中の目に付かねえ所でやってくれ」
「分かったからその話はもういいだろ。
それより、レジー・オブライエンってのは何者だったんだ?」
俺は下衆な話題を打ち切り、レジーの事をギルド長に尋ねた。
「その冒険者なんだがな、恐らく偽名だと思うぜ。
オブライエンって姓は珍しくてな、ギルドに登録しているオブライエン姓はこの2人だけだ」
そう言ってドミンゲスは2枚の紙を俺の前に差し出した。
紙には冒険者のプロフィールと、胸から上の写真が載っている。
一方はレジエルト・オブライエンという赤髪にブラウンの瞳の温厚そうな顔の男のプロフィールで、もう一方はメアリー・オブライエンという群青色の髪の女のプロフィールだ。
確かに2人とも、あのレジーとは似ても似つかない。
レジエルトは愛称でレジーと呼ばれそうだが、レジエルトの写真を見る限り、首回りは太く、胸板も厚いガッシリ体型に見える。
変装しても、あんな病的にガリガリな体型にはならないだろう。
ドミンゲスの言う通り、ただの偽名なのかも知れない。
「名前的に考えると、そのレジエルトだがなぁ…聴いてた見た目と違うし、ソイツはユークライン連邦国のギルド所属だ。
念のために向こうの冒険者ギルドに連絡を確認してみたが、レジエルトは昨日ユークラインのダンジョンに潜ってたらしい」
そっか、コイツ外国人なのか。
ユークラインまでは魔導飛行船を使っても9時間はかかる。ダンジョン探索を終えて直ぐにこちらに向かっても、深夜0時に到着する訳が無い。
では、レジーと名乗った男は何者だったんだろう?
俺は心の何処かにレジーがまだ生きているんじゃないかという不安が有り、ヤツの素性を突き止めておきたかった。
しかし、これと言った有力な情報を得る事は出来ず、俺たちはパーティーハウスへ帰る事にした。
アイツは近いうちに俺たちの前に現れるかも知れない…
俺は隣で寝息を立てる全裸のラフィのオッパイをサワサワしながらそんな事を考え、いつのまにか眠りに落ちた。




