109-91 幕間:聞いた話
本編の続きは月曜日に投稿する予定ですが、ちょっと思いついたのでごく短い幕間を。
読まなくても問題はないです。
「して、その出自不明の〝不死の魔法使い〟を名乗る者は如何でしたかな?」
暗く大きな部屋の中、大きなテーブルの上にある数本の蝋燭の僅かな光でのみ照らされた白髪白髭の老人の声が、闇に吸い込まれるように響かず通る。
その問い掛けを受けたのは、同じくテーブルに掛けた妙齢の女性だった。
「〝不死〟なのは間違いなさそうだったよ。聞いた限りでも、感じた限りでも。……で、自分は異世界からやって来て、身に覚えのない内に〝不死の魔法使い〟になってたんだって」
その女性は、おどけるように肩をすくめてそう言った。
「それはまた…… 珍妙なことを申される。トタッセン先生は、その……ノノカ殿の言葉をどう捉えられるのかな? その通りであると?」
「そうねぇ……」
トタッセン──名をマリュー──は、先日出会ったひとりの未熟な魔法使いのことを思い返す。
お初の顔合わせでこの上なく怯えた様子で、ちょっと調子に乗ってからかっていたら、ぼろぼろ涙を流して泣いてしまった彼女。さすがにやりすぎたかな、とちょっと反省はするが、可愛かったのでマリューとしては満足感が大きかった。
しかし、その彼女──サクラの正体は何者なのだろうか?
「どうも、嘘を言ってるようには思えなかったんだよねぇ…… まぁ、不可思議な存在であることは間違いない。油断してたとは言え、私の《オートディフェンス》を突き破るような魔力を持ってたから、只者じゃないのは間違いないんだけど……」
「では、本当に異なる世界から来た、と? 正直なところ、とても信じられん。……〝記憶操作〟を受けたような様子はあったのかの?」
「いや、簡単に見てみた限りではそんな様子もなかったんだよ。まぁそれに関しては、もうちょっと念入りに確認するよ」
軽い様子を崩さないマリューとは対照的に、報告を受けた白髪白髭の老人の眉間にはしわが寄り、こめかみに三指を添えている。
「火種にならんのならば良いんじゃが…… 要観察じゃな。済まぬが、よくよく用心してやってくれるかの?」
「うーん。心配し過ぎだと思うんだけどね。まぁ言われなくても、可愛かったし、私が面倒見てあげるから心配しなさんな」
にやりと笑ってマリューは席を立つ。
その背を見送った白髪白髭の老人は、その白髭をしごきながら立派な椅子の背もたれに背を預けて、ひとつ溜め息をついたのだった。




