15-40 起床
「びびったよ、まじで。話しかけられると思わねえし」
何考えてんだろな、と言ってチュウヒは笑った。呼吸器の傍に置いた椅子に、背もたれに腕と顎を乗せ、後ろの二本を浮かせて前後に漕ぐ。
「どうなってんだよ、お前の兄貴。怪物だよまじ。ノスリでさえ持て余してんじゃねえの?」
散々罵ってみたが、半開きの目はぼんやりとどこかを見つめるだけだった。
突然動いた。上半身を波打たせて両腕をばたつかせている。筋肉の痙攣だそうだ。そこに意思は無い。目覚めている部分と体の神経が時々こうして断続気味に繋がることがあるだけだ。
チュウヒは立ち上がってばたつく肩を押さえた。その体はしばらくのた打ち回っていたが、やがて感情の無い顔と同様、動きを止めた。静かな呼吸が再開される。
「そろそろ行くわ。最近、昼間の警護に回されちまってさ。半分以上嫌がらせだよな、何にも来ねえし」
何にも言い返してこねえし。
「じゃあな」
言い置いて踵を返す。袖が何かに引っ掛かり、チュウヒは脚を止めた。掴まれていた。
チュウヒは息を吐いた。こうした反応に何度期待させられたことか。寝言や寝像と同じで、眠っていても体は動くのだと説明され、ようやく飲み込んだ頃には季節が一つ変わっていた。
「明日も来てやるって。その前にサシバも来るしそれまで…」
言葉を切り、目を見開いた。信じられない気持ちでチュウヒは一歩、歩み寄る。
「ヨタカ?」




