ミミという少女①
『→武器レベル表示』
右 木製の剣(片手剣 レベル12 500/6100)
左 木製の盾(盾 レベル12 500/6100)
俺も、早いもので4歳になった。
一年間、コツコツ頑張った成果が、これだ。
毎日毎日、飽きもせず、良く続けていられるものだと我ながら、関心する。
福引券は、一週間に一度、再出現だったが、食堂の方は、毎日出てきた。
お陰で、5000ゴールド以上、お金は貯まった。ポーション(粗悪品)の方は、売ってもお金にならないので、20個ほど、溜めたら、後は集めていない。
そんなある日・・・施設に一人の少女が施設に入ってきた。
明らかに人間ではない。獣人属の少女だ。
大きめの耳が頭についていて、ふさふさした長い尻尾もある。
おそらく犬の獣人属だろう。
この時期に・・・という事は、それなりに良い家の子なのだろう。
獣人属は人に比べて成長が早く身体能力も高いので優秀な冒険者になる可能性が高い。
優秀な冒険者ということは、お金も稼げるし、ダンジョニアでの地位も高くなる。
良い家なのも当然だ。
ちなみに・・・この世界の種族構成は人間80%、獣人5%、エルフ3%、ドワーフ6%、龍人1%、混血やその他種族が5%となっている。
それなのに、その犬の獣人の少女は泣きながら、職員に連れてこられていた。
名家の子が、堂々と入ってくる、という感じではない。
俺も含めて、子供達は、珍しそうに、その茶色い髪の犬耳の少女を見る。
背が低く、可愛らしい。
俺は犬も猫も差別しない。両方好きだ。
『表示』
名前 ミミ(4)
種属 犬人属(0)
職業 --(--)
スキル 成長遅延(5)
他の子達と同じように、表示を見て・・・納得した。
え?個人情報保護?
この世界では、そんな物ありません。
誰でも、『表示』と意識すれば、最低限の情報だが、こうやって誰の情報も見れてしまう。
成長遅延のレベル5という事は、成長が50%遅いという事だ。
あ、成長といっても体の発育が・・とかではなく、種属レベルを上げるのに、必要な経験値が50%多く必要、という事だ。
この世界の基準は全てダンジョンでの活動・能力が基本なのだ。
税金を多く払うような家は間違いなく、氏が存在する。家名のようなものだ。それが、この子の表示には無い。
せっかくの獣人属でも成長が遅ければ・・・捨てられるという事か。
それか無理に家名を背負わせて、深い階層に挑ませるよりは、普通に低い階層で生き延びて欲しい、という寧ろ、親心か?
まぁ、俺も、社会に出た経験があるから、言える事で、四歳だったら、普通に親に捨てられたとしか思わないだろうな。
ミミ・・・そんなに泣くな。弱くても生きる権利はあるし、生きる方法はあるのだから。
ダメなスキルを抱えたミミを、他人事とは思えず、心の中で応援する。
ミミは、メソメソ泣きながら、通り過ぎていく。
他の無邪気な男子達は・・・
「わぁー・・・獣人属だー、俺、初めて見た!!」
「ミミ、凄い可愛いよな~!!」
と、はしゃいでいる。
コラコラ・・・あまり、露骨に態度に出すと、他の女子から・・・・
・・・って手遅れだった。
その日の夕方、俺は、素振りをしながらも無心にはなれてなかった。
ミミの事が、どうしても気になってしまうのだ。
スキルやステータスに縛られた世界・・・努力(というか行動?)は必ず、経験として蓄積されレベルに反映される、ある意味、良い世界だ。
だが、やはり、それでも、生まれ持った何かに、どうしても縛られたりするのは仕方のない事なのだろうか?
ついつい、そんな事が頭から離れないのだ。