瓶
ボク等は等しく世界を持っていた。
それは透き通る小瓶の中。
落ちているものを拾い集めて、
そうしてボク等はボク等を作るのだ。
そんなボクの小瓶は
嫌というほど何も入ってない。
強いて言うなら、それはもはやボク自身の流した血と涙でいやになるほど汚れているだけだ。
割れた小瓶を掻き集めては、ボクはそれを抱えて祈った。
-どうか、最後まで生きられなかった彼等を安らかに眠らせてほしい。
それと同時に、ボクの中にはひとつの嫉妬が生まれる。
ボクはこの割れた小瓶のように、ボク自身も死ねる方法を知りたかった。だが、勇気もなければ、ボクは人のように死ぬことはできない。
羨ましかった。
屋上から身を投げた瓶の持ち主も、散々瓶に傷をつけて最後には首を締めて割れた瓶の持ち主も。
羨ましい。
これは、生きる為に何かを諦めた人達の物語だ。
自分にはできなかったことを成そうとしている人間に、
君は腹を立てたことがあるだろうか?
それとも、
「私だって本当は」
と、悲劇のヒロインのように語ったことがあるだろうか。
相応の覚悟で『諦めた』ものに対して、
彼らはやすやすとその先へ進んでいった時。
君は、置いていかれたと膝を折って泣いただろうか。
いつまでもこうして病んでいるわけには行かないけど、
それでも今は苦しいから少しく唄わせてほしい。