4-8話
『自分一人ではたぶん二人とも助けられなかった。周りの助けがあったから死なずに済んだ』
将吾は校内新聞のインタビューに短くこれだけ答えた。
さすがに学校が火事という大きな事件が発生すると生徒たちも興味を持つようで校内新聞は新聞部が創設して以来初めて増刷が行われた。
「火事の中から生徒会長助けたのってあの九頭竜なんだろ?」
「そうそう。火の中から子供と生徒会長抱えて飛び出したら、今度は犯人を速攻で捕まえたんだって?」
「俺、九頭竜って手のつけられないヤバい奴だと思ってたけど意外とそうでもないんだな」
なんだか色々な人間の手柄まで将吾のおかげということになっていたが、この間までの噂に比べればその内容は段違いによくなっていた。
気に入らない奴を片っ端から半殺しにするヤバい奴から、喧嘩や暴力を振るうにも筋を通す不良、くらいには評価が変わっていた。別に筋を通しても喧嘩も暴力も振るったことは無いが、それでも将吾は嬉しかった。
「結局、途中で文化祭は終わっちゃいましたけど、あの時点では売り上げ一位はボランティア部だったみたいですよ」
将吾は他の三人が来るのを待ちながら彩乃の言葉を聞いてホッと胸をなで下ろした。
「そうか……いや、結局銀子が部の活動を継続していいって言ってくれたし、こうして新しい部室にココが家具を運んで元通りにはなったわけだけど、気になってたんだよな。まあ、あの後も続いてたらどうなってたか分からないけど」
「そうですね」
将吾が革張りのソファにくつろいでいると彩乃は対面のソファに腰掛けた。
「こうやって、部が続けられるのも将吾くんが頑張ってくれたからです。本当にありがとう」
「なに言ってんだ。礼を言うのは俺の方だよ」
「え?」
彩乃がキョトンとした顔をすると、将吾はソファに座り直して彩乃の顔を見た。
「お前が、保健室で俺をボランティア部に誘ってくれなかったら俺は今も他人から誤解され続けてたはずだ。……最初っから、俺はずっとお前に助けられてたんだよ」
将吾は二人の間を挟むテーブルに額がつきそうなほど頭を下げた。
「ありがとう」
将吾が短くその言葉を口にすると一瞬の沈黙が流れ、彩乃が喋り始めた。
「最初から、ていうのなら……それこそ私の台詞ですよ」
「ああ。 お前が血ぃ吐いてたことか? それなら誰だって……」
「違いますよ。もっともっと前の話です」
そう言われて将吾は彩乃の顔を見つめる。
あの時が、彩乃とは初対面のはずだ。それより前に助けた覚えなんてない。
将吾が固まっていると、彩乃はスカートのポケットから二つ折りになった紙を出した。それはくしゃくしゃの折り紙だった。




