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鹿羽高校 暴乱帝阿部  作者: 松雲
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3-14話

 将吾は自分の粗相の始末を終えると、よいしょと立ち上がった。

「……俺が作る」

「あ、でも……もう乾麺のパスタとバターくらいしか残ってないんですけど」

「まあ、それだけあればなんとかなるだろ……」

 将吾はまだ具合が悪いのかフラフラした足取りで客間を出ると、女子四人も心配そうに後をついて行く。

 台所に到着すると将吾は早速パスタを茹で初め、その間に冷蔵庫の野菜室を覗く。中に入っていたピーマンを出すと細かく刻んで炒め始める。その中に茹であがったパスタを投入するとそこにケチャップを大量にぶち込んで麺に絡ませてバターも一塊落とし、まんべんなく溶け込ませるとそれを大皿の上に乗せた。

 彩乃たちが作る倍くらいの速さでナポリタンが完成した。

「ほら、食ってみろ」

 四人は顔を見合わせると、箸を手にとって口に入れる。将吾も味見と言って一口食べた。

 ケチャップの酸味が鼻から抜けて、バターと混ざり合ったナポリタンの濃厚な味わいが舌を歓喜させる。自分で作っておいて、絶賛したくなる美味さだ。

「……バターが良いとここまで違うか。どうだ? 美味いか?」

 ココはいつもと同じ笑みを返すだけだったが、彩乃と瑠璃は何度もコクコクと頷き、レナに至っては飲むようにナポリタンを食っていた。

「将吾は人が悪いね、こんなのが出来るなら最初に言えばいいのに」

「審査係に任命したのはお前だよな?」

「だって、そんな見た目で料理できるなんて思わないでしょフツー。なんにしても、これで料理担当は決定だね。これならパックに詰めて持ち帰りも出来るから店の回転率が多少悪くても売り上げは伸ばせるし、ナポリタンを作る店もそんなにないだろうし、完璧だね」

 すでにパックで持ち帰り販売まで考えているココに将吾は舌を巻く。部室の模様替えにしても今の販売計画にしてもココの両親が経営する下着屋は安泰だな。などと余計なお世話なことを考えた。

「それじゃあ、後はイスとテーブルの設置と私たちの衣装だね。家具はサンプルを調達すればなんとかなるから」

「あ、あの……そ、それって反則とかになったりしませんか……?」

 瑠璃が目の下の隈をさらに濃くして上目遣いで訪ねてくる。

「ふむ、瑠璃は文化祭のために家からガムテープを持ってくるのは反則だと思う?」

「い、いえ……」

「出し物のためにCDを持ってきて、BGMにするのは?」

「そ、それも……あ、でも著作権とか……」

「ほら、そういうことに比べたら家具の一個や二個どうってことないでしょ? それに家具はうちの宣伝用にまた大きなタグも着けるし、入り口にはラックも設けて同じ家具のパンフも置くから。文化祭の為に用意したんじゃなくて、うちの会社の宣伝のためにやってることなら問題ないでしょ?」

(いや、その理屈はおかしい)

将吾は言いたかったが、一言ったら十の反論が返ってくると思うと口を開く気にはなれないし、あの家具に今更学校の机と椅子は合わないだろうとも思い、口にするのを止めた。

「問題は衣装なんだよね。それを大金つぎ込んで買ったらさすがに反則だろうし」

「ああ、そういう節度はあるんだな」

 こっちを見てくるココから視線を外すと、瑠璃がおずおずと小さく手を挙げた。

「あ、あの……私でよかったら、衣装……作ってきても、いいですか?」

「ギャハハハ! こいつ、ここぞとばかりに手を挙げやがった! 裁縫はお前の得意分野だもんなぁ?」

「そうなのか?」

「その辺の高校生よりかは色々出来るだろうぜ? 部屋は自分で作ったぬいぐるみだらけだからな」

 将吾は、へえ、と改めてヴラッドの身体を見つめた。

ぱっと見では縫い目も見えないし、目や鼻の位置もきちんと整っている。

売り物と手作りの違いが分かるほどの目利きなど出来ないが、これが良い出来なのは間違いないだろう。

「おいおい、オス熊の身体をジッと見つめるなんて、お前そっちの趣味があるのか?」

「ねえよ! お前の出来映え見ればどれくらい得意なのか分かるだろ」

「俺様はぬいぐるみじゃねえぞコラァ! マジもん100%クマなんだよ!」

 ヴラッドはふかふかの両手で殴ってくるが全く痛くない。

「ええっと、それじゃあ瑠璃ちゃんに衣装はお任せするってことでいいですか?」

「は、はい! ……あ、あの! 死ぬ気でやります! と、ところで……どんな衣装を作ってくればいいですか? 希望があれば……近いものを作ります。というか……希望を言っていただけると……助かります」

「うん。とりあえず料理も決まったし、全員分の衣装を考えようか。ええっと……まずは将吾の衣装がフランケンシュタインで決まりとして」

「待て待て待て待て」

 将吾は手の平を突きだしてココを制する。

「なんでもうすでに俺の衣装は決まってるんだよ。話し合おうぜ。ある意味、ここが一番楽しい時間だろ」

「だって、身体が大きい、顔が傷だらけっていう将吾の特徴を活かせるとしたらそれしかないでしょ? それとも、他になにかやりたいものがあるの?」

「いや……特にないけど」

「じゃあいいじゃん。はい決定!」

 ココはパンパンと手を叩いて話を終わらせた。別にやりたいものはないけど、なにかこう……釈然としない。

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