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鹿羽高校 暴乱帝阿部  作者: 松雲
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3-13話

「つ、次は、私の料理も食べてください!」

 彩乃に代わって前に出た瑠璃が差し出したのは汁椀に注がれた味噌汁だった。これもまた豆腐と油揚げとわかめが入ったお手本のような味噌汁だ。

 湯気からは味噌の香りが漂い、将吾の鼻をくすぐると小さく腹の虫が鳴る。質量のある霞を食べた後で味噌の匂いなど嗅げば胃袋が反応してしまうのも仕方がない。

「いただきます!」

 将吾はがっつくように椀を両手で持つとごくっと喉を鳴らし、

「ぶほっ!?」

 全力で噴き出して顔中が味噌汁まみれになった。

「しょ、将吾くん大丈夫!?」

「ご、ごめんなさいごめんなさい! 私の料理不味かったですか?」

 顔面蒼白で何度も頭を下げる瑠璃に対して将吾は大丈夫を連呼しながら彩乃から受け取ったタオルで顔を拭いた。

 なんというか、ものすごく濃い味の味噌汁だった。汁などという名前をしているくせに妙にどろっとしていて、しょっぱさで腎臓が少し痛みを覚えた。

(これはお年寄りに出したら間違いなく死人が出るだろうな)

「……こっちは味が濃すぎかな」

「はうぅぅ……ごめんなさい……」

「ふふふ、二人ともまだまだだね。よし、ここで真打ちの私が……」

「ああ、おまえのはいいや」

 将吾は言い終わる前に手の平をココに見せて動きを制した。

「なんで!?」

「瑠璃が料理作れるかって質問したときの態度見ればおまえが料理未経験者だってことは分かってるんだよ」

「甘いよ将吾、私だって自分が料理できないことは分かってるんだから、その辺をふまえてキチンと料理したよ」

「ほお……」

 自分の力量を認識してそれに見合った料理を作ったというのであれば、ある意味、彩乃や瑠璃よりは期待できるかもしれない。

 と、将吾は思い、

「というわけで――はい、カップラーメン」

 そんなことはないとすぐに考え直した。

「……」

「どうしたの? そんな顔して、美味しいから食べてみ、」

「美味しいだろうよ! 知ってるよ! よく食ってるもの! ていうか、その場でしか食えないっていう付加価値を加える料理じゃないと意味ないって言ったのはお前だよな!?」

「うん、だからにぎやかしにと思って」

「冷やかしの間違いだろ!」

 箸を置いて、後ろに手を着きため息を漏らす。残念ながらこの中で客に出せる料理は無いと言わざるを得ない。

 さて、どういう風に言えば彩乃と瑠璃が傷つかないように料理を却下できるか思案していると、

「おまたせしましたよー! 料理が出来たよー!」

 ふすまが開け放たれてレナガやってきた。両手を背中に回して料理を隠しているようだ。

「レナ、お前今までどこにいたんだ?」

「ん? 料理してたに決まってるよ。ちょっと準備に時間がかかったよー」

「……で、なにを作ったんだ?」

「ふふふ、じゃーん!」

 レナは自信満々に背中に回していた手を前に出す。

「おお!?」

 将吾は思わず驚嘆の声が漏れた。

 レナの出した大皿の上には鳥の丸焼きが乗っていたのだ。キャラメル色に焼きあがった表面にソースの光沢が光っており一から作ったというのならかなりの力作だ。

「凄いなレナ! 俺、鳥の丸焼きとか初めて見たわ」

「えへへ~、美味しいから作りたてのうちに食べるよ~」

 レナはニコニコと笑顔で将吾の前に鳥の丸焼きを置くと、将吾はナイフで大きくカットした鶏肉をフォークで口まで運び、

「う……」

 苦悶の表情を浮かべた。

 ソースは美味い。甘辛い味付けは非常に将吾好みではあるのだが、ソースの奥から、何か得体の知れない生臭さと鉄のような臭いが鼻から抜けていく。

「あのー……レナちゃん? 私、そんな立派な鳥を買った覚えはないんですけど……?」

「うん、買ってないよー。今穫ってきたやつだから、新鮮だよー」

 その言葉を聞いて将吾の身体はピタリと制止する。それを察してココがそっと将吾の前にビニール袋を差し出した。

「ええっと、レナちゃん……その肉は、なんの肉ですか?」

「カラスだよー」

 それを合図としたように将吾はココの用意した袋に全力で吐いた。

「だ、大丈夫ですか将吾先輩!?」

 瑠璃は心配そうに将吾の背中をさすり、レナはキョトンとした顔をする。

「ショーゴはカラス嫌いかよ?」

「食ったことねえよ! そして今嫌いになったわ! こんなもん人に出せるか!」

「なんでよー。こんなに美味しいのに~」

 そう言ってレナはなんてことないようにカラスの丸焼きに手を伸ばすと、まさに野生児さながらにかぶりつきだした。

「むぉ? それも残ってるならレナが食べるよー」

 レナはカラスだけじゃ食い足りないのか三人が作ってきた料理まで平らげ始めた。特に味に文句を言うでもなく、美味いを連呼して四つの料理をあっという間に完食してしまう。

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