3-2話
「それでは、校外清掃を開始します!」
彩乃が高らかに宣言すると、四人が拍手を送る。全員が片手に大きなゴミ袋を持っていたせいで、音はわしゃわしゃと大きく広がった。
全員校外に出る前に動きやすい格好をするべきだろう。というココの提案で今は全員がジャージに軍手、トングにビニール袋を装備しており、これが集団になると余計に格好悪い。
くわえて将吾のルックスだ。
ココは何かを言いたそうにじっと将吾の顔を見つめている。
「……なんだよ」
「いや、服役囚みたいだなって」
将吾の目元に暗い影が入る。
そりゃ確かに将吾の見た目でこの格好をしたら明らかに塀の中でお勤めをしている人だが、あまりにもストレートすぎる。顔と同様に心にも傷だらけにするような発言だ。
将吾の暗い顔を吹き飛ばすようにヴラッドが笑った。
「ギャハハハハ! それ言い出したらここにいる全員が札付きのワルってことになってるんだから、この状態は何かの罰食らってるようにしか見えねーだろ!」
「でも、どんな風に見られてもゴミを拾ってる姿を見れば悪いことしてるとは思われないでしょ。今は反省してるって思われてもいいから、悪い人じゃないって思ってもらおうよ」
「そ、そうですね……頑張ります」
「おー! レナも頑張るよー! ……で、何をすればいいよ?」
「オメーは三話の最初から読み直してこい!」
ヴラッドが訳の分からないことを言っているが、全員が無視してともかくゴミ拾いは始まった。
ひとまずは学校周辺のゴミを拾って、駅からここまでの通学路を通ることになった。
「まったく、自分が出したゴミくらい捨てる場所があるまで持ってろよな。どんな神経してんだ」
早速文句を言いながら将吾は側溝に落ちているペットボトルや菓子の袋をトングで摘んでは袋に入れていく。
「やあ、将吾。順調みたいだね」
ジッと側溝に目をこらしていると、横からココが話しかけてきた。
「おお、そっちはどうだ……?」
将吾は不思議そうにココが持っている空っぽのゴミ袋を見つめた。
「おまえ、ゴミは?」
「いや、ゴミ拾いなんて生まれてこの方やったことがないから、なかなか感覚がね?」
そう言ってココはトングを見せるように前に出したかと思えば、そのまま下に落ちていたペットボトルを摘もうとする。が、トングはまるでUFOキャッチャーのやる気のないアームのようにペットボトルを下に落としてしまう。
その後、何回もチャレンジするがペットボトルはスルリと滑り落ちていく。
「……ね?」
「いや、ね? って言われても……普通に掴めるだろ」
将吾は言いながらトングを使ってたやすくペットボトルを持ち上げてゴミ袋に入れる。
「いや、ほら私はあれだから……箸より重いトングを持ったことないから」
「重いものだろ。なんで箸より軽いトングは持ってるんだよ。てか、これも別に普通のトングだからな?」
将吾はカチカチとトングを鳴らしてみせる。
それを見たココは、
「交換しよう」
自分の非を認めず、道具のせいにして交換を要求してきた。
「別にいいけど……道具のせいじゃないと思うぞ? ほら、そこにもあるから取ってみろよ」
交換したトングで将吾は再び近くのペットボトルを指した。
ココは真っ直ぐにトングを伸ばしてみるが――やっぱりココのトングは空中でペットボトルを逃がした。
「……」
ココは呆然と落ちるペットボトルを見つめた。
「ふう、今日は重力がすごいな」
「どんな言い訳だよ! あと、お前が持ってたやつもちゃんと使えるからな!」
将吾は証明するために転がったペットボトルを摘んでゴミ袋に入れた。
「ふむ、これはきっとアレだ。私が下手なんじゃなくて、将吾にゴミ拾いの才能があるとみるべきかな」
「そこまでして自分の非を認めたくないのか……」
「それとも、将吾の前世が空きペットボトルで向こうが親和性を感じているのか……」
「生まれた時から空きペットボトルってなんだよ!? 生まれた時からゴミじゃねえか! いい加減に自分の非を認めろ!」
「非があるとするのなら、私が神からその才を授からなかったことだよ。誰にだって得手不得手がある。そうでしょう? それに、他の子だって上手くやってないかもしれないじゃない」
「そんなわけないだろ……」