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リベルの苦悩と想い

 お兄ちゃんがいきなり気を失ってしまいました。変わりに目の前にとてもきらきらとした物が現れてそこから何かが出てきました。それはチョコレートでした。お兄ちゃんは本当にチョコレート製造機を作り出してしまったようです。


「私のわがままばっかり聞いてバカな人です」


 私はうつ伏せに倒れてしまったお兄ちゃんを仰向けにして息をしやすいようにしてあげます。

 いつの間にかお兄ちゃんと呼ぶようになったタツを見てそういえばと思いました。


「何で手伝ってくれたのでしょうか。私が可愛いからとか?」


 まさかそんなことで受けたりはしないでしょう。仮に私のことを散々に好き放題したいとしても私は恨みません。神に復讐できるのですから。けれど、お兄ちゃんはそんなそぶりを一切見せません。私を抱きしめて眠ることはあってもそれ以上はないのです。前に女の子として意識してると言われましたが半信半疑です。だって、私の体は育たず、心だけが育つのですから。


「好き、なのでしょうか」


 自分に問いかける。顔が真っ赤に染まるのが自分でも分かる。たぶん、お兄ちゃんのことが好き。でも、これはこんな状況だからだと思う。だって、男は一人しかいない状況なのだから。そう思うとお兄ちゃんに悪い気がしてやはり胸が苦しくなる。

 復讐を目的に私は今まで生きてきました。自分がどこの誰なのかもほとんど忘れてしまいました。長い年月が過ぎた訳ではないのに。1ヶ月、一人でいただけでこんなにも私は弱くなってしまった。そのことがとても許せなくなる。私の目的に巻き込ませてしまったお兄ちゃんに申し訳なく思ってしまう。


「きっと許してくれるのでしょうね」


 私の頭を撫でるタツの、お兄ちゃんの顔が浮かぶ。まるで父親のような笑みを浮かべるお兄ちゃんはとても優しく感じた。そう、優しすぎる。私にはそんなことをしてもらう資格なんてないのに。ただのゴミ掃除の女の子なのに。

 私はそれからお兄ちゃんの近くにずっといました。離れたら二度と会えない気がして怖かったから。好きになってしまったお兄ちゃんと離れたくなかったから。きっと伝えることがない想い。けれど、それでいいと思った。私とお兄ちゃんの関係は願う者と聞き届ける者。この契約が終われば終わりの関係なのだから。

 そして、十日が過ぎた。勝手に製造されるチョコレートが部屋に積もるほどの時が。

 お兄ちゃんが目を覚まし、私は静かに見つめていた。


「リベル」


「何?お兄ちゃん」


「リベル」


 もう一度名前を呼ばれ、気がつくと私はお兄ちゃんの腕の中にいた。

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