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侵入者

「ん?侵入者?」


 俺は目の前に侵入者の文字が浮かび上がりメニューが勝手に開いた。画面には侵入者二人の文字とモニターを開きますか?の表記があった。


「リベル、これはもしかしてダンジョンに入ってきた奴のことだよな?」


「そうですね。まぁ今は一階しかないので問題はありませんけどね」


「とりあえず見てみるか。この世界初の外との間接的接触でもあることだし」


 そう言ってから俺はメニューのモニターを開きますか?の表示のはいの文字を押した。



 廃棄のダンジョンに異変が起きたとの報告があったのは一昨日のことだった。廃棄のダンジョンのゴミが消えたとの報告がゴミを捨てに行った村人からの出てきたのだ。それを調べるために今日、この廃棄のダンジョンにやってきたのだが。


「何もないな本当に」


「ああ、報告ではゴミが山のようにあったそうだが」


 俺、フェルナーはうっすらと漂う魔力を感じながら相棒のセルスに話しかける。

 この廃棄のダンジョンは前は酸のダンジョンと呼ばれ、人間が住む大陸テリダンにおいて、もっとも危険のないダンジョンとして知られ、あるいは忘れられていた。モンスターの一匹もでず、不活性ダンジョンとして扱われることになった酸のダンジョンが忘れられるのは当然の結果だった。それに酸のダンジョンの近くにある沢のダンジョンの方が知られており、リザードマンなどの魔物を求めて冒険者がそちらの方へと集まる。魔物が出ないダンジョンと魔物が出るダンジョン。どちらの方がいいかなど子供でも分かることだ。


「しかし、酸のダンジョンと言うだけあって靴が溶けるな」


 足元を見てみるとじゅうじゅうと先程から音を立てて靴を溶かしている。この酸のダンジョンはその名の通り、酸が散りばめられており、そのせいで何でも溶かされるという。酸がどういったものなのかは分からないが昔からこの酸のダンジョンと呼ばれるものは変化がなかったそうだ。


「ゴミが消えたそうだが本当にそうなのか?この酸とかいう奴ならすぐにでも消えてしまいそうだが」


「それはないらしいぞ。このダンジョンの酸は定期的に消えるらしい。今、偶々酸が出ているだけで数分もしないうちに消えるそうだ」


 俺達はゴミが消えた謎を求めてこの酸のダンジョンにやってきた。酸のダンジョンの近くにあるサルダリア村出身だった俺達は村人の要請に答えてやってきたのだ。酸のダンジョンの変化について冒険者としても村出身としても気になったので受けたのだが。


「これ以上何も分からないな」


「ああ、消えたことしか情報がないし、何よりこのダンジョンはずっと前から何もないからな」


「じゃあ帰るか?」


「そうだな」


 俺達は結局帰ることにした。ゴミが消えたことしか確認できず異常は見られなかったからだ。これ以降あのダンジョンについて何か関わることもないだろう。



「すぐに出て行ったな」


「はい。この者達は冒険者ですね」


「冒険者?」


「はい、魔物を討伐したりして稼ぎを得る者のことを言います。彼らはダンジョンを攻略して突破することを栄誉しているそうです」


「神の知識とやらか」


「そうですね」


 冒険者か。これから俺がダンジョンを大きくするのに当たって障害になる可能性もあるかもしれないな。神に一泡吹かせる前に死ぬわけにはいかない。注意しすぎでも過剰ではないだろう。


「しかし、ここは酸のダンジョンなんて名前があったんだな。しかも酸が出てくるだけの使えないダンジョンなんてな」


「今ではゴミ捨て場ですよ。もう山のように積もることはないでしょうけど」


「スライムがいるからな。スライムで世界を取るのも面白いかもしれんな」


「流石に無理でしょう。スライムでは」


「まかり間違っていけたらどうするんだ?」


「それは……そうですね。私の秘密を教えてあげますよ」


「リベルの秘密、ね。興味深いな。いつか聞いてやるよその秘密。強制的に」


「身の危険を感じました。眷属としてダンジョンマスターに抗議します」


 この生意気娘は少しばかりちょうき……もといお説教が必要なようだな。


「まぁそんなことはしないけどな。ほら、リベルこっちこい」


「む、そんなことで私の秘密を知ろうとしても無駄ですからね」


 そう言いながらも俺の所まできてちょこんと座って背中を預けてくる。頭を撫でてやるとくすぐったそうにして頬を緩める。この生物、可愛いすぎる。


「リベルが可愛い。なんという奇跡」


「お兄ちゃんはどうしてそうストレートに表現するのですか」


 顔を赤く染めて問い詰めてくるリベル。これぞ、俺の兄弟プレ……はっ、危うくトリップしかけた。妹だったら深い仲になれないじゃないか。あ……。


「まぁ俺も男だしね」


「誰に言い訳してるのですか?そんなことよりダンジョンの性質を変えたりしないのですか?」


「変えれるのかそんなの」


「一度限りの変更は可能みたいですよ。それ以降はDPを消費しないと無理ですけど」


 リベルの暖かさを感じながら俺はメニューを開く。ダンジョンの性質変更という項目をすぐに見つけた。初期状態はもちろん酸である。他の性質はというと死臭がする、沢になる、霧が出る、など臭いや地形変化から気象変化まで色々とある。


「これだけあると迷うな。複数選ぶことは無理なのか?」


「一応できるみたいですけど、初期状態からの変更時は一つしか無理ですね」


「そうか。選択の幅減ったな」


 魔物をそれにあわせて選ぶなら選択肢は更に減る。専用の魔物しか呼べなくなるデメリットがあるがそれだけメリットもあるはずだ。だが俺はここで一つの項目を見つけた。


「迷宮化か。ダンジョンらしくていいよな」


「それはそうですが結構複雑になるみたいですよ?」


「まぁそれくらいの方がいいだろう。条件設定なんかもできるしダンジョンらしい」


「お兄ちゃんがそう思うなら私はいいですけど」


「じゃあ決まりだな」


 俺は迷宮化を選択する。人に分かるか分からないかくらいの揺れが起き、やがて揺れは収まった。変化完了と文字が表示される。どうやらすぐに終わったらしい。試しにメニューにある地図を開いてみる。自動で作った割には結構複雑にできあがっている。ここに罠なんかと合わせれば魔物無しでもってDPを稼げるかもしれない。


「まぁいいか。リベルと戯れよう」


「む、お兄ちゃんは最近サボリすぎな気がします」


 リベルよ。お前さんもお兄ちゃんという呼び方が完全に固定されているぞ。俺はリベルの言うことを聞かなかった振りをしてリベルを抱きしめる。


「お兄ちゃんはずるいです」


 ぷくっと膨れるリベルの可愛さは世界一だと思う。俺は声に出さずに思った。



 

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