眷属魔法・叛逆の意思
目が覚めた俺はリベルの心配そうな顔を見て少し笑ってしまった。
「何笑ってるんですか。心配したんですよ?」
「ごめん。MPがきれたら気絶するなんて知らなかったから」
「それにしても私の許可もなく眷属するなんて酷いです」
リベルがぷいとそっぽを向く。眷属とはその者の魂と結びつくこと。即ち、真の家族として結びつくことなのだ。リベルはそれを怒っている。それでも俺はリベルに辛い生き方はさせたくなかった。
眷属魔法・叛逆の意思。神からの干渉を防ぎ、あらゆる状態異常を無効化する。まさに今のリベルにぴったりな魔法だ。
「リベルには辛い生き方はして欲しくなかったんだ。俺はリベル為ならなんでもするよ」
「それって愛の告白ですか?」
「はは、愛の告白か。そうともとれるね」
「私をからかっているんですか?」
少し起こった顔でリベルが俺の胸を叩く。可愛い顔でそんなことをされても逆効果だ。
「いつかはそうなるかもね。でも、今じゃないお互いそれほどの仲じゃないだろう?」
「それもそうですね。ずっと独りだったから私がどうかしてました」
「そこまで言わなくても。まぁいいけどさ。俺はリベルの為に何でもするよ。神殺しすら厭わない」
一度決めたことだ。男として二言はない。独りで全部やらなくてもいいんだと思えるだけで少しでも楽になってくれれば俺は嬉しく思う。
リベルは俺の体を枕にして少し恥ずかしげに言った。
「じゃあ私の為に何でもしてくれる?」
「何でもするよ。俺はそのためにここにいるんだ。とにかくまずは戦力の増強だ。リベルの力も貸してくれよ」
「私の目的だもの。でも、ありがとうタツ」
「どういたしまして」
俺はリベルと少しだけ仲良くなった気がして嬉しくなった。次にどうするか考え始めた。
「これからどうしようか。DPももう800しかないし」
「そうですね。DPを増やすにはダンジョンに侵入したものを倒すか、叛逆の意思を使うかですかね」
「そう言えば叛逆の意思にもあったねそういう効果」
眷属魔法・叛逆の意思のもう一つの効果。それはダンジョンマスターの近くにいるだけでDPを100増やすというもの。これは一時間ごとに適応される。ということはと俺は思いついたことをリベルに言った。
「一緒に寝るか」
「結局そうなるんですね」
「リベルとくっ付いてると暖かいからね」
「私、これでも女の子なんですよ?」
「大丈夫、ちゃんと意識してるよ。可愛いからねリベル」
「本当にそう思ってるんですか?」
リベルは怪しげに思ってるようだがこれは本当だ。身長が120センチぐらいで腰まで伸びる黒い髪、目はくりっとしていてとても愛らしい。胸は残念だがそれもまだ十歳だというのだからこれからに期待できる。そんな所はなくても俺は別にいいんだけど。
とにかくリベルはとても可愛い少女なのだ。襤褸布なんて来ているがドレスなんてきたらきっと似合う。少女らしさにある可愛いというのはとても魅力的に移るものだ。別に俺がロリ好きであるとかではない。本当にそのまま意味だ。
「疑うのも仕方ないけどさ。きっとリベルがそのまま成長すれば俺の好きなタイプと同じなんだ。理想が目の前にあって嘘をつく奴なんていないよ」
「そ、そうですか。それならいいです。私も少し恥ずかしくなってしまいました」
何も思うことがなく、俺に背を預けてすっぽり収まっていたのに恥ずかしさを覚えるのか。それでも俺に寄りかかって座るのだからよほど気に入ったのだろうか。俺も二日目にして慣れたが恥ずかしいものはあるな。これじゃあリベルと変わらないか。
「のんびりやっていこう。俺もリベルも不老だからね。あ、ということは成長しないのか。残念だな」
「む、それは残念です。私も大人の女性になりたかったのに」
リベルは本気で残念そうにうなだれる。そこまで落ち込まれると俺が悪い気がしてくるのでやめてもらいたい。まぁ今のままでも可愛いので問題ないとは思うんだけどな。
俺はリベルが話すことに相づちをうちながらリベルがどのように育っていくのかを楽しみにしている自分に苦笑した。