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錆と男  作者: 松田晃一
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後編

「あ、見つけた」


学校で魔法の粉が発見された。

それは、茶色くて、衝撃を与えると七色にひかり輝き、願うものの全てを叶えるという粉。

世界中が血眼になっても見つけられずにいたものを、グラウンドで遊んでいたサトルとその仲間達は、いとも簡単に見つけてしまった。

しかしこれは、彼らが選ばれしものであるとか、何かを願うに値する素晴らしい人間であるからとか、そういう主人公補正の働いた裏付けとかでは全然ない。


魔法の粉と呼ばれるものは全世界をランダムに転々としている。そして数秒たつごとにその位置座標を変える。

経度、緯度とかいう平面を基準にした移動パターンですらない。深海の奥底に現出する時もあれば、高度5000mの上空に出現することもあり、壁の中や、岩の中なんて、物理的に感知することも出来ない場所にさえ現れるものだ。


よって、これは午後三時という視覚の効く時間帯に、グラウンドの上という接触するには最適過ぎる座標に、丁度今日、理科の授業で魔法の粉について教えてもらった小学生が、丁度放課後に友人とサッカーで遊んでいたところ、自分のミスと友人の下手なパスによって明後日の方向に飛んだサッカーボールの衝撃が丁度その魔法の粉に当たり、虹色の輝きを放ち、そこに駆け寄った小学生が、あ、これは魔法の粉じゃないか、見つけた。

という、ただの偶然である。


偶然によって手に入れた魔法の粉を前に、サトル達は再度魔法の粉に衝撃を与えた。


願いごとを考える間もなく、光は武器へと変わっていった。何故か?


サトルたちには、言葉によって意識を浮かべるよりも先に、無意識がそのまま意識となるほどに日頃願うもの、足りないものが多く、そして失うことを恐ていなかったからだ。

交渉はしなくても構わなかった。

どこからかサトル達に言葉が舞い降りた。


「これで君たちの願いは叶った、大人への願望、無力感への反抗、知識、このつまらない日常から離れてどこか遠くの世界に行ってしまいたい欲、ヒーロー欲、その武器は全てを覆す。叶える。そして、皆の力を合わせ、悪い奴を一人倒せば次の願いが叶うだろう。もちろん強制的に願うものではない。幸運を祈る」


サトルたちはそれぞれの武器を手にして学校を飛び出した。不思議と体が軽かった。みんなで駅へと走り出した。


悪い奴を見つけるために。


悪い奴の頭を潰した。アボガドとトマトのサラダのようだった。これおいしそうだね、もらっていい?と幹部らしき男に聞いた。ヤクザだって怖くなかった。

サトル達はもっと願いを叶えるために、他にも悪いやつを教えてくれ、と願った。俺たちの知らない悪いやつを教えてくれ。と願った。

その瞬間、サトル達を取り囲む世界が少しズレたように見えた。

サトル達はいくつもの悪者を倒していった。サトル達はヒーローだった。

だけど、誰かにとっての悪者も、誰かにとっては大切な人だということを知らないヒーローだった。


サトルたちは、ある日とある女性を襲った。

彼女はとある人間を堕落させている、という情報がサトルたちの脳へ届いたからだ。

サトルたちは悪者をこらしめることがヒーローの役割だと認識していた。

そして、認識出来ることがそれしかなくなっている事実を認識出来ずにいた。

サトルたちは勝ち誇った。サトルたちは悪者をこらしめた。

サトルたちの前に男が現れた。サトルたちは全滅した。


男は願った。もう一度、あの頃に戻してくれと。

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