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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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雑文やきにく「勇者、明日私の屋敷で焼肉パーティをするから、あなたも来ていいわよ」

掲載日:2026/07/06

ここは異世界。そして今、統治する地域は田舎なれどそれなりに裕福な貴族様のご令嬢であるお年頃なコロンディーナ嬢が、その身分を隠しお忍びで町に買い物に来ていた。

勿論ひとりでではない。護衛として幼馴染の万年貧乏勇者を連れ立ってだ。


まぁ、幼馴染といってもお嬢様と勇者は対等な立場ではない。そもそも勇者はお嬢様の屋敷に下働きとして出入りしている近隣の村人の息子なのだ。

そしてこの村人の男は9年前に息子を連れてふらっと村にやって来てそのまま居つき、その際、周りへの挨拶時に自分は元勇者だったと言ったので、その息子も周りの子供たちからからかいの意味を込めて『勇者』というニックネームを付けられたのである。


さて、この風来坊だった男が本当に勇者だったのかは眉唾モノなのだが、そこそこ真面目に働く男だったので村人も多少のホラは気にしなかった。

ただ、この男は真面目ではあるが農業や商業などの知識が全く無く、出来る事といったら簡単な単純作業と力仕事くらいだったので、自立生活が基本のこの世界では中々収入が得られず常に貧乏だった。


なのでこの地を統治する領主様が男を哀れんで屋敷内のちょっとした仕事を男に与えたのである。

その際には息子も仕事を手伝ったので、息子と年齢が近いお嬢様も勇者を見知っていたのだった。


そんな関係のふたりではあったが年齢が近いこともあってそれなりに仲は良かった。まぁ、それでも主人と使用人という立場なので人目があるところでは素っ気なく振舞っていたのだが、それでもお嬢様は何かに付け勇者を連れ回した。


そして今日も、お嬢様は勇者を供に明日開催するパーティの為のお買い物に出かけた。

まぁ、本来ならば、このような買い物は召使たちにさせるのが普通なのだが、そこはお嬢様の息抜き的な意味もあるのでご自身で出かけたようである。

そんな中、お嬢様が勇者に声を掛けた。


「勇者、明日屋敷の庭で私のお友だちを招待して焼肉パーティをするから、あなたも雑用係として来ていいわよ。」

「えっ、本当?わーっ、うれしいなぁ。うん、絶対行くよっ!」

お嬢様主催のパーティに雑用係とはいえ呼ばれた事に勇者は有頂天だ。だが、ここでひとつ問題が発生した。


そう、如何に親しい者たちだけを招いたパーティとはいえ、招かれた者はお嬢様へプレゼントを持ってくるはずなのだ。

しかし万年貧乏の勇者にはお嬢様へ差し上げられるようなモノを何一つ持っていなかった。


いや、多分お嬢様はそんな事を気にはしないだろう。だが、呼んだ方がそうだとしても呼ばれた方としては悩んでしまうものである。

そもそもこれはお嬢様と勇者だけの話では済まない。多分勇者が何も持って行かないと他の招待客たちは『影で』あれこれ言うはずなのだ。


勇者としては自分が言われるのは気にならないのだが、自分の行動によってお嬢様まであれこれ言われるのは嫌だったのである。

なので勇者は悩んだ。そして3回くらいぐるぐる悩み抜いて突拍子も無い結論に達した。


それは、ここ最近近隣の畑を荒らし回っている豚の化け物、オークを狩って持って行けば畑の被害はなくなるし、焼肉パーティの材料まで調達できて一石二鳥と思ったらしい。


と、思いついたのはいいが、そのオークは大人でも太刀打ちできずに対応に苦慮している荒くれ魔物だ。

この前も村人が賭けた懸賞金目当てに討伐に向かったBクラス冒険者のパーティがほうほうの体で逃げ帰ってきたくらい手ごわい魔物なのである。


しかし、3回ぐるぐる悩みまくって他に方法が思いつけななかった勇者には、それらのネガティブな情報はすっかり頭から抜け落ちていたようである。

なのでお嬢様のお供が済んだ後、勇者は父親が昔の勇者時代に使っていた勇者の剣をこっそり持ち出すと、意気揚々と森に向かったのであった。


しかし翌日、パーティが始まってもそこに勇者の姿は無かった。お嬢様は他のお友達とお喋りをしながらもその事が気がかりなようである。

そしてテーブルの上に積まれたプレゼントの山を見て、もしかして自分は勇者に過度な負担をかけてしまったのかも知れないと思い悩んだ。


だが、用意した肉が程よく焼けだした頃、パーティ会場に勇者が血まみれの状態で現れお嬢様に挨拶してきた。


「いや~、オークは割りと簡単に倒せたんだけど、こいつ結構でかくてさ。血を抜いたり皮を剥いだり内臓を取り出す処理が結構大変で遅刻しちゃった。でもこの量があればみんながお腹いっぱい食べられると思う。だからこれ、僕からお嬢様へのプレゼントです。受け取って下さい。」

そう言う血まみれ勇者の背中には内臓と血が取り除かれ、剥いだ皮を被せられた状態の3mはあるかと思われるオークが担がれていた。

その状況を見て、動物を精肉する過程を見た事が無い招待客たちの一部は、その迫力と剥き出しの肉の塊に青ざめてしまったようである。


とは言えここは異世界だ。なのでそれなりに裕福な家庭の子供でも家畜の屠殺とさつは普通に見知っている者も多い。

それでもその殆どは鶏やガチョウなどで牛、豚クラスの処理に慣れている者はあまりいなかった。


そしてお嬢様も初めて見る丸々一頭分のオークの肉塊に言葉を失ったようだ。いや、実際には血だらけの勇者にびっくりしてオークの方までは気が回らなかったようである。

因みに勇者が血だらけなのはオークの返り血を浴びたからであり、勇者自体はそれ程怪我は負っていない・・かも知れない。


うん、本当に血だらけだから判らないや。

で、そんな凄惨な状況なので、お嬢様はまず勇者にシャワーを浴びて着替えてくるように『命令』した。


だが、シャワーから帰ってきた勇者を見て、またしてもお嬢様は顔をしかめる。何故ならば勇者の両手には、着替えを手伝った使用人が傷を見つけたらしく包帯がぐるぐる巻きにされていたからである。


「ちょっと勇者っ!もしかして怪我をしていたのっ!なんで言わないのよっ!」

「いや、その・・、えへへへへ、かすり傷だよ。オークの急所に剣を突き立てた時、こいつ最後の足掻きで噛み付いてこようとしたのを素手で押さえちゃったんだ。でもまぁ、本当に大した事はないんだよ?手当てをしてくれた人がちょっと大げさなんだ。こんなの直ぐ治るよ。」

お嬢様の剣幕に勇者は誤魔化すように言い逃れをしてきた。

まぁ、実際にその傷処置はやり過ぎなくらいだったのだが、これは怪我の処置をした使用人が『お嬢様の為』に、勇者がひとりではフォークもナイフも持てないようにわざとそうしたのである。


なのでお嬢様はため息混じりに勇者を自身の隣に呼んで、お嬢様手ずから勇者に焼肉を食べさせることにしたようだった。


「さっ、勇者。私が食べさせてあげるわ。あーんしなさいっ!」

「えっ、いや大丈夫だよ!、自分で食べられるよっ!」

思いがけぬお嬢様のお誘いを勇者は咄嗟に拒否してしまう。だがどうみてもそれは無理だろう。そもそも両手とも指すら動かせないくらいぐるぐる巻きなのだから。

なので勇者も再度自分の両手を見て観念したのか、お嬢様が勇者の口元に差し出した焼肉を大きな口をあけてぱくりとした。


もぐもぐもぐ、ごっくん


「おーっ、おいしいっ!このお肉すごくおいしいよっ!」

「そお?ならこっちも食べなさい。」

そう言うとお嬢様は厚切りの上ロースに『エジンバラ・ゴールドソース』を塗りこみ、その肉を葉物野菜で包んで勇者の口に押し込んだ。


もぐもぐ、しゃきしゃき、もぐもぐ、ごっくん


「うんっ、これもおいしいねっ!」

「勇者っ!怪我を治すには栄養を取らなきゃ駄目なんだからこっちも食べなさいっ!」

そう言うと、次にお嬢様はスライスしていない牛タンを丸々1本無理やり勇者の口にねじ込んだ。

うん、傍から見ているとまるでイジメである。だがまぁ、得てして若い男女の衝動とはこうゆうものなのだろう。

因みに牛タンには一応レモン汁が振りかけられていたようだ。でも丸々かぁ。うん、ワイルドだね。


その後もお嬢様は勇者につきっきりで甲斐甲斐しく?焼肉を食べさせ続けた。

おかげで他の招待客たちはその光景にアテられて別の意味でもご馳走様だったらしい。


だが勇者とお嬢様のふたりはもう周りが見えないらしい。なので気を利かせた?お客たちはその場を仕切っていた執事に挨拶すると会場を後にした。

そして執事や屋敷の使用人たちもふたりを邪魔しないように影からそっと見守る事にしたようである。


「はい、勇者。あーんして。」

「あーん。」もくもぐ。


「ほら、こぼしちゃ駄目じゃない。後、口の周りが油だらけよ。拭いてあげるから目を瞑って。」

「うん、ありがとう。こう?」

お嬢様に言われるがまま目を瞑り口をすぼめた勇者に対してお嬢様はナプキンで念入りに勇者の口周りを拭いた。

そして最後の確認とばかりにすぼめた勇者の唇にチュっとキスをしたのであった。


因みに勇者が狩ってきたオークは執事の指示で料理長が肉を熟成させる為に保管庫へ仕舞われた。

まぁ、今回のパーティ用には既に十分な量の肉が別途用意されていたので勇者が持ち込んだオークの肉はまた今度という事になったらしい。


いや、実際にはオークの肉は小分けにされ後日領民たちにお嬢様からという名目で配られたらしい。

まぁ、なんで勇者からではなくお嬢様からとしたのかは作法と言うか建前なのだろう。領民たちもそのオークの肉は勇者が狩ったものだと言う事はお嬢様のご友人たちを伝って知っていたのだから。


そして多分、彼らはそんなに遠くない将来に今度は結婚式の場で花婿直々に狩ったオークが食べられるはずだと思ったのだが口には出さなかった。

何故ならば、この異世界では幸せは大っぴらに話すと小鳥に姿を変えて飛んでいってしまうと言う伝説があったからである。


その甲斐あってか数年後、領民たちは三日三晩にも及ぶ披露宴で花婿が仕留めたオークの丸焼きをお腹いっぱい堪能したのであった。


-お後がよろしいようで。-

4千文字制限に引っかかり、勇者とオークのバトルシーンは『やきにく和尚』により削除されました。

更にはオークの肉をケバブに料理する場面や、勇者が切れ味鋭い『勇者の剣』にて、たったひとなぎでオークを100人前に切り分けた逸話も削除されました。

更には何故か酒盛り部分も「嫌味かっ!」と言う事で削除です。せっかく勇者とお嬢様の結婚式シーンでライスシャワーならぬビールがけをさせたのになぁ。

うん、おちゃけを撒き散らすなんて勿体無いから駄目っ!と言う事でした。


・・、嘘です。そんなシーンは書いていません。

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― 新着の感想 ―
お嬢様、グイグイいきますねえ。 肉食系女子っていうやつでしょうか。 和尚に割愛されてしまった部分が気になります……。 エジンバラ・ゴールドソースが良かった。 食べたことない異世界秘伝のソースなのに、…
あとがきにニヤリとさせていただきました笑。 勇者とお嬢様、微笑ましいカップルですね(*´ω`*) 皆が優しくふたりを見守っている画が浮かんでほっこりさせていただきました。 エジンバラ・ゴールドソースは…
 ぽっち先生/監修俺さん、こんにちは。 「雑文やきにく「勇者、明日私の屋敷で焼肉パーティをするから、あなたも来ていいわよ」」拝読致しました。  貴族のお姫様が、お忍びでお買い物へ。  お供は勇者。…
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