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神憑もの達  作者: 桐地栄人


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3/4

第三話

「なん……だと……?」


 シークは思わず声を上げる。よく見れば切断された首からは血が一滴も流れていない。

 その代わりに溢れるようにサラサラと首から砂が流れ落ちている。


 分身、もしくは身体そのものを砂に変えられる能力。


 分身の可能性はない。シークは暗殺者としての訓練で本体と分身を見分ける訓練を受けている。


 実際、何十回もこなしてきた暗殺業務や学園での活動において、分身に騙されたことは一度たりとてない。


 それならば、ジンは身体構造そのものを砂に変えられるという事だ。

 

 身体構造そのものを別の物質に変えるというのは、能力の中でもかなり珍しく、また難しい。


 シーク自身、過去の暗殺対象者にそれを使えるターゲットはおらず、また学校にもいなかった。

 それゆえに、その可能性を失念していた。


 だが、唖然としている時間などシークにはない。


『シーク!!!! 糸を切って逃げなんし!!!!』


 頭の中にヨミの怒声が響き、その声にハッとしたシークは即座に神経糸を切り離す。

 だが、判断が一瞬遅かったようだ。


 背後から伸びてきた腕にガバリと羽交い絞めにされる。


「捕まえた」


 ジンがシークを背後から羽交い絞めにする。ジンの視線の先では首から上が吹き飛ばされたジンの姿が映っている。

 シークの背後にジンが自分の分身をだして、シークを捕まえたのだ。

 

「くそっ!」


 シークは即座に神経糸を使い、ためらいなくジンの首や心臓に突き刺そうとする。

 しかし、何度神経糸で心臓を突き刺しても、首を跳ね飛ばしてもジンの拘束はびくともしない。


「くそ!」

「話がしたいんだ。おとなしくしてくれないか?」


 ジンが穏やかな声でそう言ってくるが、その言葉をシークが信じるはずがない。

 どれだけもがこうと全く緩むことのないジンの拘束に、シークはためらいなく奥の手を使う。


「ツクヨミーーーーーーー!!」

『任せんし!! (いざな)え! アクルコトナキヤミ!』

 

 月明かりに青白く照らされた周囲一帯に闇が覆う。

 シークもジンも周囲の草木も、全てが真っ暗な闇に浸食され、その闇の中に飲み込もうとする。


 だが……。


 ヒツジが動き、また羽ペンで手帳に何かを書き込んだ瞬間、まるで太陽でも現れたかのように辺り一帯が照らされ、闇を祓う。

 その驚愕の光景にヨミも唖然とした声を漏らす。


『なんじゃと!? 我の闇を……くそ! あやつ、運命系の能力者じゃ! しかも神憑じゃ!」


 月の女神であり、闇を司るツクヨミの最強の能力である『アクルコトナキヤミ』を跳ね返すほどの能力。

 それはもはやヨミと同等以上の神が宿っている者としか考えられない。


 運命系。

 事象そのものに干渉し、起こった現象そのものを捻じ曲げる。


 ヒツジの能力。

綴り織り(つづりおり)


 ヒツジはその右手に持った羽ペンで手帳にこう書いたのだ。


「昼」

 

 ただそれだけで夜の闇に浸食された世界を昼間のように明るくして見せた。

 シークの能力もヨミの能力も通じない。

 

 勝負は決した。

 

 ジンの砂分身がただの砂となりシークを地面に押し付ける。砂はシークの首から下全体を多い、神経を出す隙間さえない程にガチガチに固められていた。


「くそっ……」


 シークは悪態をつく。もはやシークに打てる手はない。完全な暗殺失敗であった。


 人生で初めての失敗にシークは歯噛みする。だが、一度失敗しただけ。それは次に活かせばいい。

 地面に倒れ伏したシークの前にジンを含めた四人が歩いてきた。


 そしてシークを見下ろしながら驚愕に顔を歪めながら呟く。


「……信じられん。これだけ近づいたというのに目の前にいるこやつの存在を確信できない」

「……ええ。見たところ14かそこらなのにこの隠密力。超能力……いえ、違うわね。恐らく天職かしら……?」


 天職。

 それはシークが使った神経を硬質の糸に変え操る能力やジンの身体を砂に変えるような超常的なものではなく、ある種誰しもがもつ能力の究極系のようなもの。

 

 シークの天職は『隠形』。

 その能力は、影が薄いということ。

 目の前にいても気付かれず、認識を逸らす。シークの暗殺対象は殺されるその瞬間までシークを認識出来ずに死んでいった。


 今日この日までは。


「すごい力だね。僕ですら殺される寸前まで君の存在に気付くことが出来なかった。非常に卓越した隠密能力だよ」

「ジン様、こいつは危険です。それにジン様の身体に傷をつけました。殺しましょう」


 ジンは殺されそうになったというのに穏やかな声であり、逆に横のヒツジは底冷えのするような声でそう言い放つ。


 だが、シークはそんな四人を見上げ、未だ諦めない強い瞳で呟いた。


「ツクヨミ……」

『なんじゃ?』

「沈めろ」

『了解じゃ!』


 次の瞬間、シークの体の()()から先ほど世界を覆ったような闇が溢れてくる。


「ジン様お下がりください!」


 シークがまだ何かしようとした気配を察してヒツジが叫ぶ。

 だが、この能力は攻撃用ではない。逃走用の能力だ。


 シークがヒツジの言葉通り後ろに下がりのと同時に闇に吸い込まれたシークはその場から姿を消した。

 


 

3/25 ラスト少し変えました

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