08.僕、俺、問題。佐藤君と山田君
『あの二人って~山田君はかっこよくて佐藤君は可愛いのがいいよね~』
『分かるー!!』
『一人称も大事だよね!!』
『うんうん、だよね~』
またか……女子達は本気で思っている訳ではなく妄想して楽しんでいるんだとは分かってはいるけどそれが嫌なんだよ!! 山田は全然気にしていないというか、聞いてないって感じだけど。
「山田、僕……」
振り返って寝ていた山田の腕をポンポンして起こした。
「何……雪、どうしたの。ふぁぁっ」
山田は欠伸をしながら「うーん」と伸びをしてから話を聞いてくれる体制に入った。
「僕……俺って言おうかな!!」
「は??」
ポカンとした山田が次の瞬間笑い出した。
「そんなに笑う事ないだろう!?」
「だって、雪が『俺』?? いやー、新鮮だけどさ」
「似合わないかな……」
「いや、じゃあ試しに言ってみたら??」
「お、俺!!」
「なんだよソレ。ふふふふっ、俺、だけ言われても!! アハハッ」
くうぅぅぅぅ……恥ずかしい。
「僕だって頑張ってるのに」
「ごめんごめん。でも僕に戻ってるぞ」
「俺も頑張ってる……お、俺だって……」
「ん~、やっぱ雪は僕でしょ」
『頑張れ山田君!!』
『佐藤君は僕!!』
『頑張れー』
『頑張れー』
一体何を頑張るんだよ山田は!! 僕が俺って言っちゃ駄目なの!? そりゃあ今は恥ずかしいし違和感あるかもだけど慣れてくるとそれが自然になるもんじゃないの。
「そんなに変??」
「変っていうか……雪は僕だからさ」
「じゃあ他の僕って言う人が俺になったら気になる??」
「えー……え、え?? んー、気にならないかな」
「どうして僕は気になるんだよ」
「だってずっと一緒、だから??」
「疑問形!!」
「んー……僕が雪の親友だよね??」
『ちょぉぉ、山田君が僕って言った!!』
『かっこいい~』
『僕もありだね、山田君なら』
『むっ、むしろ僕のがいいっていうか……いい!!』
「ほら、俺が僕って言ったらなんかムズムズするだろ??」
いや、女子達がめちゃくちゃ喜んでますけど……。僕の時と反応がちがーう!!
「別に変じゃないけど、まぁ違和感はあるよね」
「だろ?? 雪はそのままでいいと思うけど……」
「いや、なんか……」
「何?? なんか気になる事でもあるの?? 思春期??」
「思春期はお前もだろ、山田」
「ま~、確かに、でも雪は中二病の気もあるから」
「まだそのネタ引っ張るのかよ!?」
「引っ張ってるんじゃなくて本当の事だから」
「もう、もうその話は終わりだ!!」
「まぁいいけど」
『佐藤君、俺になっちゃうのかな??』
『うーん……悪くはないけどやっぱり僕が似合うよね』
『山田君と並ぶと特にね』
『分かる~』
『だよね、でも本人が変えたいんだったら私達も受け入れなきゃだね!!』
どうして女子達は僕の一人称を否定したり肯定したり……どっちなんだよ。受け入れるって何!? 君達と友達になった覚えはない、ただのクラスメイトだろっ!! 山田が目立つから僕まで目立つ!! そして変な妄想をされる!!
「んー、ちょっと待ってて」
「え、うん」
「ねーねー、そこの女子達」
「はっ、話しかけられたよ!?」
「こここ心の準備が!!」
「どうしたのでしょう、山田君!!」
「アンタ強いなっ」
「佐藤雪って分かるよね?? あそこの」
「はい!! 山田君のお友達ですよね」
「うん、親友」
「きゃぁぁ、親友!! いい!!」
「ん?? それでさ、佐藤が『俺』って言いだしたらどう??」
「私は僕がいいと思います」
「私も!!」
「はい!! 僕がいいです」
「私もそう思います」
「ありがとうね~」
「はいぃ」
「ほらね、聞いてた??」
「……やめろよ!! 恥ずかしいだろ」
「えー、っていうかなんで女子達敬語なんだろうね?? 同級生だしクラスメイトなのに」
「そこはどうでもいいよ。山田だからだろ」
「俺だから?? 変なの。って事で多数決の結果、僕で」
何が多数決だよ……あの子達はいつも僕等で遊んでいるからだろ。なんで気付かないんだコイツは……他人の会話に全く興味がないんだろうな、例え自分の事でも。そんでもってなんで話しかけるんだよ。もう喜びすぎて声のボリューム半端ないぞ。お前のせいで教室内がうるさいんだけど、ちょっとは気にした方がいいような……。
「雪?? 聞いているのか??」
「え、あ、他の事聞いてた……」
「他の事~?? まぁそれはおいといて、俺は絶対そのままの方がいいと思うな~」
手首を握るな!! お前は何も考えていないんだろうけど喜ぶ女子達に餌を与えるな!! ああ、ほらもう、さらにうるさいー。
「お前さぁ、分かってないの?? それともわざとやってる??」
「何がわざと??」
「あーまぁいいや。とりあえず俺にしていく予定でいく!!」
「おおー、気合入ってんね」
ちょっとはお前のせいだよ。
「雪ってどちらかというと可愛い系だろ?? だから反対したけど雪が言いたい方でいいんじゃないか」
「それを言われるとそうなんだけどね、僕も思うけど」
「すでに僕って言ってるけど」
「……もう僕でいいよ!! 僕は僕だー!!」
「ええ、雪が壊れた……」
――教室で話している時も山田は無自覚だ。
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