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04.雨と傘と恋と山田君

「今日は夜から雨だって言ってたけどもう曇ってるし帰る頃には振り出しそうだよなぁ」

「うん、雪は傘持って来た??」

「一応、でも持ってきて良かったよホント」

「あ、降りだした。まだ昼なのに……逆に帰る頃には止みそう」

「そうだな、まだ昼だし。止めばいいな」

「面倒だもんな……雪は雨好きそう」

「なんでだよ。いつそんな事言った」

「なんとなく。名前に雨入ってるし」

「雪ならまだしもあめかんむりなだけだろ」

「ん……確かに」


『やだぁ~、今日傘持ってきてないのに~』

『えー、アンタ流石に今日は忘れないでしょ』

『だって夜からって言ってたし』


 チラチラこちらを見ながら女子が結構大きい声でアピール?? している、いや、知らないけど僕にはそう聞こえるし見える。当然山田目当てだろうな。コイツも本当に大変だよなー。


『あー、雨だー、傘待ってきてないー』


 こっちもか!! でかい独り言だなオイ。


『あ、俺折り畳みも持ってるから貸そうか??』

『ちょっと、余計な事言わないで』

『えっ……あ、ごめん』


 うーそーだーろー……凄い可哀想あの男子……胸が痛むよ。シュンとしてしまった男子は女子が去ってから深い溜息を吐いている。もしかして……好きな子だったのかな。おおおなんて残酷な世界なんだよ。


「お前さぁ、ああいうのとかどう思ってんの?? どういう感情で見てるの??」

「は、何が」

「え、見てなかったのか??」

「だから何が」

「聞こえても??」

「ハッキリ言ってよ全然分からないからさ」

「雨と傘の話だよ」

「うん?? そうだよね、さっきからずっとその話してるじゃん」

「僕等じゃないよ」

「そんな……雪としゃべりながら他の会話聞くとか器用じゃないから」


 僕だってそんなに器用じゃないけどさっきのアレは勝手に聞こえるでしょ。まぁ山田だからな……コイツぼんやりしてるところもあるから、でも肝心なところはちゃんと聞いていたり見ていたりするから凄いんだよな。なんか脳が勝手にいるもの、いらないものって分けているみたいだ。誰だってそういうのはあるだろうけれど山田のは性能が凄くいいんじゃないかな。

 放課後、まだ雨は降っている、というか雨量が凄い事に……。これは傘ない人まずいだろ。ちらほら持ってない人がいるけど友達とかが入れてってくれていたり家族が迎えに来たりしていたので安心した。


「山田、雨、凄いな」

「うん、止むかと思ったのにこんなにひどくなるなんて思わなかった」

「これじゃ傘あってもびしょぬれになりそうだ」

「ちょっと待ってみようか??」

「あー、そうだな。少しでもこの土砂降りがマシになるなら」

「これ以上ひどくはなりようがないんじゃない??」

「まぁそうだな」

「靴下がぐしょぐしょになるのが嫌なんだよね、俺」

「分かる。乾かすの忘れて次の日に靴が濡れてるのとかもホントやだわ」

「ははっ、分かる」


「あ、あの、山田君」

「何??」


 なんだ?? こんな時にこんなところで告白?? 僕は気配を消すんだ気配を、消す!!


「傘持ってないの??」

「いや、持ってるよ」

「えっ!? じゃあどうしてここに??」

「少しマシになるのを待ってるんだよ」

「そ、そっかぁ……あ、一緒に帰りたいなって……思って」

「ごめん、雪と帰るし。傘なくても君の肩を濡らすわけにもいかないしね」

「や、優しいんだ。山田君」

「え?? 優しいのは声かけてくれた君でしょ」


 おいいい、また無自覚に女子落としてんじゃねー!! 僕なんて放っておいて女子と帰れば?? と思うけど山田は絶対そういう事しないんだよね。頬を赤く染めて小さく手を振って山田と話していた女子は大雨の中帰って行った。


「良かったのか??」

「何が」

「いや、まぁ、何でもない……」

「なにそれ、ははっ。雪は面白いよね」

「そっくりそのまま返すよ」

「何で……あー……うーん……ちょっと待ってて」

「お、おう」


「もう随分ここにいるよね?? 傘ないの??」

「えっ、はい……」

「これ使いなよ」


 山田が自分の傘を差し出す。おい、お前は誰の傘に入るつもりなんだ。女子は驚いた顔をしながらその傘を受け取った。


「あ、本当にいいんですか??」

「うん。だって帰れないでしょ」

「あ、名前教えてください」

「山田莉音」

「何年何組ですか??」

「一年一組」

「あ……年下だ、私二年なの」

「そう、ですか。じゃあ、その傘はあげるんで」

「え、悪いよ!! 教室に返しに行くね」

「あー……じゃあそこの傘立てに入れといてもらえます??」

「わ、分かった……」


 あからさまにがっかりしている女子!! 山田、お前ってやつは。お礼、言いたかったし何かしたかったのかもしれない。そんな女子の気持ちを……


「分かってない、お前は何も分かってない」


 戻ってきた山田に説教をする。山田には言っても伝わらないけど言わずにはいられない僕はいつもこんな話をしてしまう。


「何がだよ」

「それで、お前はどの傘を使う気だ」

「ソレ」


 山田が僕の傘を指差して言う。当然だとでもいうように。


「どうせ相合傘するなら女子がいいよ!!」

「え、なんで……」


 ――雨の日だって関係なく山田は無自覚だ。

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