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11.ホワイトデーと山田君

「お前さ、ホワイトデーどうすんの??」

「飴、配る」

「え、飴って……」

「一粒ずつだ!!」

「それでいいのか??」

「全員にちゃんと返してたら破産するわ!!」

「僕は結局五個だったからちゃんと持って来たよ」

「もらえてもそれくらいがちょうどいいんじゃないか」

「お前……ホント男子に嫌われるぞ」

「別にいい。それより名前も分からないくらいぐっちゃぐちゃのもあって困っている」

「ああ、靴箱の……」


 アレは凄かったからな……。困っているとは言っていても山田は今日、とても機嫌がいい。さわやかな笑顔に女子達もざわついている。何故か?? それはこの一年山田が一番嫌いなイベントが終わるからだ。バレンタインとホワイトデーはセットなのでこの一ヶ月不機嫌な事が多かった山田もついに解放されるんだな。


「良かったな」

「何が!? 靴箱の惨事は一緒に見ただろう」

「いや、お前の嫌いなイベントが今日終わるだろう??」

「そうなんだよー!! 本当に、嬉しい」


 爽やか、山田。


「それより名前分からないのは困るね」

「『俺にチョコくれた??』とか確認も出来ないし!!」

「どこのナルシストだよ」

「だろ!? やっぱりそう思うよな」

「うん、あんなに突っ込んでいった女子達も悪いからもういいんじゃない??」

「あ……」


 隣の女子が来て山田が飴を取り出した。


「おはよう」

「あっ、お、おはよう山田君、佐藤君」


 僕にも挨拶してくれた、いい子。


「おはよう」

「今日ホワイトデーだから、こんなんで申し訳ないけど、いる??」

「うん!! ありがとう、嬉しい」


 アレ……三個ある。どうしたんだろう。


「みんなには一個だけどお隣だから三個、秘密、ね」

「う、うううんっ!! ありがとう」


 真っ赤になってしまった……お前、そういう事したり言ったりするからだろう……どうしてこいつはバレンタインの日以外は無自覚に女子を落としていくんだよ、未だに分からない。そのせいでバレンタインが、ホワイトデーが、大変な事になるんだろうよ。


「お前さぁ……」

「なんだよ雪」

「本当に分かってないの?? 何度か言ったと思うけど……まぁ、無自覚だもんな」

「俺なんもしてないけど」

「してるんだって!!」

「ええー……」


 またむくれたフリしてる。


「ははっ、お前はいつもそうだよ」

「何がだよ~」


『喧嘩!?』

『ケンカップルもいいよね』

『次それでいこうか!?』

『尊い』


 またかよ!! もう山田は別に気にしてないし僕もそろそろ諦めようかなぁー。ケンカップルとは!? 分からん言葉がよく出てくるんだよな。腐女子の会話って。別に人様の趣味にどうこう言いたい訳じゃないけど僕が出てくるのはやめて欲しいんだよな。ただ話しかけるのもなんかヤダ。向こうも話すより見ている……というか見学?? しておきたいんだと、たぶん。


「で、チョコって何個くらいあったんだ??」

「六十個くらい」


 ……次元が……違う……。


「お前もうモデルとか目指したら??」

「スカウトならよくされるけど」


 ……次元が……やっぱり……違う。


「ああ、もういいやそれは。飴いくつ配ったんだ??」

「まだ朝だからクラスの女子だけ」

「昼休憩に回るのか?? 着いて行く??」

「いいのか雪!! ありがとう」


 それから授業の合間にもこそこそ来る女子を見つけては山田は飴を渡していた。もちろんイチゴ味だ。山田いわく余ったら自分で食べるかららしい。モテなさそう……なんだけどな。


「ふふっ」

「何笑ってんの雪」

「いやまぁ大変だなーと思って」

「雪はもう渡したのか??」

「僕はすぐだからね。もう渡したよ」

「何渡したの??」

「なんか、美味しくて可愛いって有名なグミ」

「おしゃれ~……俺なんて大入りの飴一個だぞ」

「まぁ解せぬとは言いたい」

「ははっ!! なんだよソレ」

「次昼休みだから準備しとけよー」

「あー、確かに。分かった……あ、思いついた。飴の袋持って歩いたらホワイトデーの配ってると思って集まってくるんじゃ……ね??」

「確かに!! 不審者みたいだけど山田なら大丈夫だ」

「不審者……まぁいいか」


 昼休み、本当に大袋を持って廊下を歩いたらわらわら女子が集まってきた。


「山田君、ホワイトデー?? 欲しいっ!!」

「山田君私もー」

「山田君~っ!!」


 次元が……以下略。

 いやぁそれにしても凄い数だな、あんなにあった飴がほとんどなくなっている。しかもたまに「君、きょうだい多いよね?? 一緒にどうぞ」なんて言ってまーた落としている。いや、チョコを渡している時点で好きなのかもしれないけど山田君かっこいいからチョコ渡したーいっ!! って感じの女子も多いと思うんだ。でもそういう女子をばんばん本気にさせていく。もうやめたげて。


「よし、こんなもんかな」

「ほら雪」

「なんだよ」

「付き合ってくれてありがとう」


 山田は僕の手のひらの上にイチゴ味の飴をコロンと乗せると自分の口にも放り込んだ。


「いや、まぁ、こっちこそありがとう。飴」

「美味いよ、この飴。良かった~、大袋ってたまにハズレあるよな」

「だな!! ははっ」


 ハッ!? また見られて……ないー、良かったー。


 ――ホワイトデーも山田は無自覚だ。

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