10.バレンタインと山田君②
そんなこんなで授業が始まると山田はホッとしていた。授業中は流石に女子もなにも出来ないからな……ときっと山田も僕も思っていた。
「あの、コレ……回ってきたから」
僕の隣の女子が山田に何か渡している……明らかにチョコレートだソレ!! 手紙とかじゃなくてチョコ回ってきた!! 先生も緩い先生だから気付いているけど『若いっていいねぇ』とか思ってそう。山田の気持ち知らないから。可哀想だと思うけど授業中だし、そうじゃなくても僕に出来るのは紙袋を用意するくらいしか……ない!! 回ってきたチョコを受け取るとおそらく『別の人に回せって意味かも!!』なんて淡い期待をして一緒についてきた手紙を見て項垂れている……そっと後ろを振り返って手紙を見ると思いっきり『山田君へ』って書いてあった。でもそもそも話しかけるなオーラ出している割に女子に優しいし普通に話しかける事もあるし山田にも責任が……いや、それは違うかー、優しい奴だからな。それを山田が悪いと言ってしまうのは違う気がするな。
授業が終わってバレンタインの日三大怖い時間の一つ、昼休憩がきてしまった。ちなみに一つ目はは登校時……そしてこの日の山田は昼休憩に購買とか絶対行かない。なるべく席から離れない。それでも山田はチョコから逃れられない……。
「山田君」
「……何」
山田の隣の女子だ。たしか隣の席になった時山田が声を掛けていた……。
「コレ、良かったら」
「チョ、コ……ありがと。別に何もしてないのになんで??」
「えっ、あ、隣になった時優しい言葉をかけてくれたから……それのお礼っていうか……うん」
「そう……分かった」
山田が無自覚すぎて駄目だ!! 一生このまま……社会に出ても……山田。
「今日は購買行かないだろ?? 山田」
話が終わったのを確認してから山田に話しかけた。
「うん。教室でも十分危ないのに廊下に出るなんて嫌だ、トイレもなるべく行きたくない!!」
「体に悪いからあまり無理するなよ……」
「もう二袋目も……ヤバイ。どうやって持って帰るんだよコレ」
「いっそバレンタイン禁止にすればいいのにな、この学校」
「それだ、意見箱に入れておく!!」
「そ、そうか……じゃあ僕も入れといてあげる」
「ありがとう雪。俺も初めは嫌な気はしなかったんだよ、でも普通のチョコだと思って割ったら髪の毛出てきたり、物凄い悪臭を放っているものだったり……本当にただの嫌がらせチョコだったりで……そんなのもあってから嫌いになったんだよ」
「うっ……それは、嫌いになるね……山田、可哀想だな」
「そうだろ……」
「最近ではバレンタイン禁止にしている会社とかあるらしいぞ」
「おお!! 俺絶対その会社入る!!」
「バレンタインで決めるのかよ……」
「トラウマ、だからな……」
そう言うと急にハッとして山田が真後ろにあるロッカーに入ってしまった……急な事すぎて僕も何も言えなかった、どうしたって言うんだ!? というかその身長ではいれるんだぁ……。あまりにスピーディーだった為に僕以外誰も気付いていないな、すご。
「山田君いますかぁ~??」
「山田が隠れてからすぐに他クラスの女子が、いち、にー……五人!? 付き添い?? いや、みんな何か手に持っている!! チョコレート!!」
「山田君ならあそこに……アレ?? どっか行ったみたい」
「えー、どうするー?? あ……」
一人の女子と目が合ってしまった、何、山田のは第六感みたいなやつ??
「佐藤君、これ山田君に渡しといてもらえるぅ~??」
「お願いっ!!」
「佐藤君に頼むのも悪いんだけどー」
「え、なんで??」
「だって付き合ってるんでしょ??」
「そんな訳ないっ!!」
「え、そうだったんだ……」
「これからもない!!」
「そうなんだ、じゃあコレお願い」
「……分かった」
断りづらい……。僕にチョコを預けたらすぐに女子達は教室を出て行った。そして山田が出てきた。
「山田、お前怖いよ、何で分かった??」
「俺の話をしながら近付いてくる大勢の女子の声が聞こえた……背筋がブルっとして嫌な予感が……」
「やっぱり第六感も働いてるじゃん。はいこれ、チョコ」
「なんで預かるんだよ!?」
「預からなかったらお前帰るまで追いかけられていたぞ。感謝しろよ」
「それもそうか……雪、ありがとう」
「おう」
俺もアレは怖かったわー。なんであんな大人数で来るんだよ。山田はギュウギュウと紙袋にチョコを突っ込んでいるもうほとんど入らないから仕方ない。
「大丈夫か??」
「精神的には大丈夫ではない!!」
「そんなお前にコレを……」
「三つ目の紙袋!! ありがとう雪ー!!」
「いいよ、流石にこれで足りるだろ。帰りも持ってやるよ」
「お前は優しい奴だな!! 紙袋が今日渡された物の中で一番嬉しいし、今言われた事が一番嬉しいわ」
「おま、そんな事言うから……」
めっちゃキラキラした目で見られている……たぶん本を入れた人達だ。
『二冊目描くわよ!!』
『もちろんよ』
『あの二人お似合いすぎて』
『尊い……』
あの『尊い』の人あれしか言わないのか?? ホント怖い。また本が入れられる日が来るのかと思うと僕も寒気がする。燃やす燃やす燃やす。
――バレンタインでは第六感が働く山田。
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