01.親友、佐藤雪と山田君
よろしくお願いします。
「おい、山田おはよう」
「ん……おはよう」
机に突っ伏して寝ていた山田の背中を叩きながら声を掛けるとまるで猫みたいに目を擦りながら「ふぁぁ」とあくびしながら伸びをする。親友である僕、佐藤雪は毎朝こうして山田莉音を起こしている。山田はどこかぼんやりしていて放っといたら授業が始まっても起きない。あとは……今は高校一年生、十六歳だけど中学の時山田は女子にモテすぎて少し女子が苦手になっているので山田に声を掛ける女子は少ない。何せ高身長で顔も良い、モテの要素を詰め込んだみたいな奴だけど遠巻きに見ている女子がほとんどだ。そう、山田は無口でちょっと怖く見えるから、特に女子には。
「一限目は数学だぞ、お前宿題やって来たのかよ??」
「えー……ちゃんとやってきたよ俺……」
「へえ、珍しいな」
「失礼な……でも、確かに、ふっ」
あまり笑わない山田がふわっと優しく笑った。あーーー。
『きゃあぁぁ、山田君が笑った!!』
『何あの可愛くてかっこいい笑顔ー!!』
『きゃーーー』
『きゃーーー』
あー。山田がモテる理由は別に見た目だけではない。その行動一つ、言動一つがかっこいいのだ!! そしてその行動も言動も山田は無自覚なのだ!!
「お前やめろよなーそういうのー」
「は?? 何を?? 宿題やってきたら駄目だった??」
「違うわっ!! ったく」
「よく分かんないけど、ごめん??」
「ああ、ああ、分かったよ」
無自覚すぎて本人は気付かない。それも含めて女子にはたまらないのかもしれない。かっこいい、なのにぼんやりしているところが母性本能とやらを刺激するらしい……前に女子から聞いた。別に僕が聞きたくて聞いた訳じゃない、勝手にべらべら話し出したんだ。はいはい、僕は話しやすいってよく言われますよ……。「佐藤君は緊張しないのにー!!」って失礼じゃないか??
「とりあえずお前は大人しくしとけよ」
「うん??」
ホント分かってない!!
一限目が終わってトイレにでも行こうと廊下に出たらとんでもないものを目撃する事になるとは思いもしなかった。山田が女子に壁ドンしていた。
「おおお、お前何やってんだよ!?」
「え……壁に虫が止まっていたように見えたから捕まえようと思ったんだけど……壁のヒビだった」
「そこに女子いるから!!」
「え……あ、ああ、ごめんね……」
「ひっ、ひあっ、ひゃ、らいじょぶれすぅーっ!!」
女子は真っ赤な顔で走り去っていった。
『きゃぁぁぁ!!』
『見た!? 今の!!』
『羨ましすぎるあの子!!』
『私も閉じ込められたい!!』
女子たちはどんどん熱く、激しくなっていく。凄まじいな……。
「おい、山田、気付かなかったのか??」
「だから気付いたから捕まえようと……」
「虫じゃない、女子だ!!」
「ああ、全然……」
「お前モテたくないんだったらちょっとは気にしろよ!!」
山田は無自覚。分かってはいても女子の為に自重して欲しい。
「雪が何言っているのか分からない」
「そういう奴だよな、お前はな、山田」
「うん、おかしな事してた??」
していたよ、おもっくそ。壁ドンがあんなに絵になる奴、僕は山田以外見た事がない。
『佐藤君と仲いいのもなんかいいよねー』
『あの身長差、ドキドキする!! 堪らない~』
『分かるー』
ふ、腐女子めぇぇぇぇ。僕も山田も完全無敵のノーマルだ!! こうして腐女子の餌食になってしまったのも中学の時からだ。女子とあまり話さなくなった山田と、どちらかというと可愛い系だと言われる僕は腐女子的には堪らない組み合わせらしかった。勘弁してくれ。
「雪、どうしたの、お腹痛い??」
「違うっ」
だからと言って山田と話さないとか友達を辞めたいなんて思った事はない。山田はいい奴だから。
「あ……髪、良い匂い」
「へ!? お前がそんな事言うの珍しいな、どの子だ??」
「あの子、俺の家の犬と同じ匂いだった」
「お前……それ絶対本人に言うなよ……」
「なんで?? 言わないけど」
「天国に上げて地獄に突き落とすみたいな事やめろって言ってんの」
「俺の家の犬は……地獄犬なのか??」
「そう言う事じゃなーーーい!!」
「ん、そっか、分かった」
絶対分かっていない。コイツ……。面倒になって適当に答えたな。無自覚怖い。
「ぶっふふ、おま、なんで山田みたいなのがモテるんだよ」
「モテないし」
「いや、そこまでいったら嫌味だから山田」
「中学の時は……まぁ少しは」
「はいはい」
中学の頃はまだ話しかけやすいオーラがあった。だから毎日のように靴箱に手紙、所謂ラブレターなる物が入っていたし休憩時間は女子の壁が出来ていた。今時手紙なんて、って思う人もいるけれど僕も山田と仲良くなってから手紙で想いを伝えるのが消滅していないのがよーく分かった。高校に入ってからはかなり減ったけれどーもー……モテ度は上がっている気がする。いつも寝ているか僕と話しているから呼び出しとかも減ったけどな。やっぱり『話しかけるなオーラ』を山田がだすようになったからだろうな、でもそれも……
――僕の親友、山田は無自覚だ。
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