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ハズレギフト【非才無能】で落ちこぼれだった俺、伝説の魔剣を手にして成り上がる~元仲間がすがって来るけどもう遅いと斬り捨てる~  作者: 折本装置


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7話「非才無能、変身しない」

「何も変わってない?」




 俺は恐る恐る自分の体を見下ろす。

 無駄に筋肉のついた手足も、傷だらけの胸や腹も、変化はない。

 元々の、【非才無能】の、モミト・イクスキューションそのまんまだ。

 アンドロマリウスの黒く光る美しい刀身、そこに映る醜悪な顔すら変わらなくて。





「なあ、これって」

『不明。意味不明です』



 アンドロマリウスが変化を止めたのかと聞こうとするも、帰ってきた言葉はそんな推測の

 おそらく、この状況は彼女にとっても想定外なのだろう。

 念話であるはずなのに、いや、だからこそというべきだろうか。

 彼女の戸惑いがしっかりと伝わってくる。



『私たちは、人を強制的に成長させるって……なのに、どうして?』



 ……待った。



「強制的に、成長?」



 そもそもとして、人間を辞めるということを誤解していたのかもしれない。

 人間を捨て、畜生に《《成り下がる》》のだと思っていた。

 


 しかし、だ。

 魔物は人間より優れている。

 こんなことを言うと教会からは怒られそうだが、事実だ。

 人よりも固い皮膚や鱗を持つモンスター、人より強靭な脚力を有するモンスター、人より長く生きるモンスターなどいくらでもいる。

 要するに何が言いたいのかと言えば。

 人から魔物になることは成長の一種と捉えることが可能であり。



「【非才無能】の効果が適用されて、《《無効化》》された」



 俺の恩寵である【非才無能】はあらゆる成長を無効化する力。

 ゆえに、魔剣アンドロマリウスをいくら使おうが、俺が人間を辞めることはできないということだ。

 ということを、アンドロマリウスに説明した。

 今更ながら、俺は彼女に俺の恩寵のことを全く説明していなかったのだ。

 思い当たる節がなく、混乱するのも当然である。

 さて、謎は溶けたし混乱も解けたかなと様子を見ると。



『ま、まさか。そ、そんなことが……』



 どうやら、まだ困惑しているらしかった。



『う、ぐすっ』

「え、あ」

『う、わああああああああああ!』

「だ、大丈夫か?」


 

 どうしよう。

 急に泣き出してしまった。

 いや涙は出てないけど、声が泣いていた。


「えーと、ハンカチハンカチ、いや涙が流れてるわけじゃないし……」




 俺はハンカチを出して、落ち着くまで刀身を拭っていたのだった。

 多分、いや間違いなく何かが間違ってる気がするが。

 あと、周囲からの視線がちょっと辛い。



 ◇



 その後、落ち着いたアンドロマリウスが言うことには。

 『断罪魔剣アンドロマリウス』はあらゆるものを断ち切る究極の武具として作られた。

 その価値は、単なる一本の剣にとどまらない。

 その真価こそは、他の魔剣同様、人間を人ならずざる魔人に変える進化を促すこと。



『不満。本当は、そんなことしたくありませんでした』

「そうなんだ?」

『害悪。人を捨てて魔剣と同化した魔人は人としての心を失うから……魔物同様人を襲うようになるんですよ……』

「それは聞いてないぞ」



 まあ、あの状況であれば使わない選択肢はなかっただろうけれど。

 あのゴーレムを放置していれば、どれだけの犠牲が出ていたかもわからない。

 なにより、俺にとって一番大事なものが失われていた可能性もある。

 俺が冒険者として活動する理由であり、生きる目的、そのものが。



『安堵。だから、よかったです。ご主人様を化け物にせず済みました』

「あはは……」



 今日は生まれて初めての経験ばかりだ。

 【非才無能】で良かったなんて、きっと二度と言ってもらえないだろうから。



 

 銀色の髪を覚えている。

 銀色の瞳を覚えている。

 涼やかな、雪景色を連想させる声を覚えてる。

 取り戻すまで、忘れてはやらない。



「ルーチェ」



 その名前を口にすると同時に、

 なんだろう、温かい。

 そして、柔らかい感触が手についている。

 そうだ、これは人肌の体温であり、感触だ。

 昔一家四人で寝ていた時のことが思い出される。

 昨日、ギルドに報告をして、そのまま疲れてたから家のソファに倒れ込んで……。



「ううん……」



 悩ましい、それでいてどこか官能的な声が、聞こえた。

 どういうわけか、すぐそばから聞こえるように感じられて。

 俺は、寝ぼけまなこをこすりつつ、あたりを見回す。



「んう……」



 可愛らしい声の主を見つけた。

 俺のすぐそば、同じベッドの上、俺以外は誰もいないはずの場所に。

俺以外の人間がいた。

 真っ先に目に入ったのは、黄金を糸にしたような長い髪だった。

 さらさらした髪は絹糸のようにも見えるほど艶やかで。

 艶があるのは髪だけではなく、長い睫毛や、閉じられた薄い唇も同じ。

 すらりとした形のいい鼻、シミ一つない肌、柔らかそうな耳。

 まず間違いなく美少女の部類である。

 身長は俺と同じか、わずかに低い。

 加えて、何よりも問題なのは。

 そんな美少女が、何故か全裸であるということだった。



「……なんで?」



 娼婦を買った覚えはないし、恋人も生まれてこの方できたことがない。

 どうしてこんなことに。

 というか、なんだこの柔らかいの、は。

 



「わあ……」



 いまさら気づいたのだが、俺の右手が彼女の胸元に当たっている。

 というか、無意識の行動だとは思うのだが――思い切り鷲掴みにしている。

 柔らかい感触の正体はこれか、などと納得している場合ではない。

 性犯罪者の烙印を押されてしまう。


「んっ」



 悩ましい声を上げて、少女が目を開く。

 空をそのまま投影したような、綺麗な水色の瞳が、俺をとらえていた。



「挨拶。おはようございます」

「あ、ああおはよう。君は、誰だ?」

「謝罪。申し訳ありません、説明が不十分でしたね」



 俺、なんで全裸の美少女を部屋に連れ込んで、謝られているんだろう。

 どちらかというと謝罪しなきゃいけないのはこっちな気がするんだけど。



「名前。私の名前は、アンドロマリウスです」

「……え?」



 少女は、あの魔剣と同じ名前を名乗り。



「っ!」



 直後、消失する。

 否、消えたのではない。

 光の粒子へと姿を変えたのだ。

 そして光の粒子は俺の手元に集まり、裸身の美少女とは異なるカタチをとる。



「君は――」

『再度。改めて、もう一度名乗りましょう。私の名前は、断罪魔剣アンドロマリウス。万物を切り、斬る、一振りの剣』



 

『何卒。これからも、よろしくお願いいたします』

「あっはい」



 あまりにも唐突過ぎる展開に。

 俺はただ、アンドロマリウスを手に持ったまま――首を縦に振ることしかできないのだった。


ここまで読んでくださってありがとうございます。


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