非才無能、Aランクに挑む
以前、ライラックと戦った闘技場。
そこに、俺達は連れてこられた。
「じゃあ、さっそく始めるカ。とりあえず、お前らの実力を見てやるヨ」
リップはボタンを押して、チェーンソーを起動する。
刃が高速で回転を始める。
「【樵】は《耐久強化》と《筋力強化》を取得できる。あとは、チェーンソーや斧みたいな近接武器の扱いに優れている」
「モミトちゃん、よく知ってるね」
「恩寵については色々調べたからね」
【非才無能】以外の恩寵であれば何でもいいのにと、現実逃避のように恩寵について学んだ。
結果として理解できたのは、【非才無能】以外の恩寵に関しては、みな何らかの使い道があるということだった。
本当に、我ながら意味がわからない。
どうして、俺の恩寵だけが、ここまで何の使い道も存在意義もないのか。
神が本当にいるなら、きっと神は俺のことが嫌いなんだろう。
俺も、神は嫌いだ。
閑話休題。
「とにかく、相手は足も遅いし、距離を取って遠距離攻撃で削っていこう」
「了解です」
「異論はないけど、ボクはどうしたらいいかな?」
「ヒュンリは、《発勁》を使いつつ、着かず離れずでいてほしい」
「アタシは縄を使った妨害をすればいいのかい?」
「そういうこと。とどめは俺か、シャーレイに刺してもらうことになる」
審判は、メルティーナが務めることになった。
「勝敗だけど、両者全員の戦闘不能、もしくはリーダーの降参をもって決着とするよ。それでいいかな?」
「大丈夫です」
「問題ないゾ。どうせ、俺が勝つからナ」
リップは余裕そうに、わらっている。
いや、表情はわからないが、声でわかるのだ。
間違いなく、相手はこちらを舐めている。
だが、そこに付け入るすきがある。
「じゃあ、はじめっ!」
開始の合図と同時に、俺達は動いた。
俺とヒュンリが前に出つつ、後衛二人が後ろに下がり、攻撃を加える。
俺達にとっての、基本的な布陣だ。
さらに、今回は全員がアタッカーだ。
「《裂空斬》!」
「《発勁》!」
俺とヒュンリもまた、遠距離攻撃を発する。
「おいおい、つまんねーナ」
吐き捨てるような、嘲笑が聞こえた。
俺達の後ろから。
「シャーレイ!」
「早いっ」
どうやって、一瞬で俺達の背後にいるシャーレイのところまで跳んだのか。
闘技場の床にある、靴の形をした穴をみて、俺は何が起きたのかを悟る。
筋力任せにジャンプしたのだ。
力が強ければ、相手を吹き飛ばすことが出来る。
それを、リップは自分自身に使用した。
リップ自身ですら見えていないはずなのに、うまく制御している。
これが、A級冒険者。
「《バインド》」
「《アイビーカッター》」
ナナミが縄を投げて拘束しようとする。
敏捷性に優れた彼女は、リップの動きを目で追えていた。
ゆえに、対処しようとして。
「がっ」
「ナナミっ!」
チェーンソーを振り回したリップは、縄ごとナナミを斬りつける。
どうやら、間合いを伸ばすスキルだったらしい。
「危ないね、かすり傷だよ」
「やるなお前、殺す気はなかったが、腕の一本くらいは落とす気だったのに」
リップは嘆息しつつ、チェーンソーを片手で持ち――シャーレイに向かって投擲した。
「きゃっ」
「シャーレイ!」
「《裂空斬》」
飛来した斬撃がチェーンソーに食い込み、裁断せずとも軌道を変えることには成功する。
結果として、
「ふうん、なるほド。おおよそ力の程度はわかったゾ」
リップは、超然としたまま言い放つ。
そして。
「お前が一番見どころはないナ」
リップの言葉は、明らかに俺に向けられていた。
「動きは遅い、剣術は凡庸そのもの、何よりもひらめき、センスをまるで感じなイ」
「くっ」
それはすべて事実であり、俺に反論する資格はまるでなかった。
ゆえにこそ、俺達は。
「勝てるよ、マリィ」
「肯定。ご主人様なら届きます」
勝てると、信じていた。
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