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ハズレギフト【非才無能】で落ちこぼれだった俺、伝説の魔剣を手にして成り上がる~元仲間がすがって来るけどもう遅いと斬り捨てる~  作者: 折本装置


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3話「非才無能、魔剣を手にする」

 今回の俺の仕事は、呪いの武具を町の外の集積所に捨てることだ。

 この仕事にどんな意味があるかは、よくわかっていない。

 食い扶持に困った冒険者に対する救済だとも言われているし、あるいは冒険者ギルドにとって都合の悪い何かを隠蔽するためだといううわさもある。

 どちらであっても、汗を垂らしながら武具を運んでいる俺には関係のないことだ。

 



「くそっ、重すぎるだろ……」



 当たり前だが、武具とは金属の塊である。

 《筋力強化》などのスキルがあれば容易だろうが、なんのスキルも持たない俺には重労働だ。

 全身鎧一式運ぶのにも、足がもつれて中々思うように進めない。

 武具を持ったまま南門を出て、迷宮近くにある集積所に武具を置き、また戻る。

 普通の人間なら五分で終わるようなことが、俺には三十分以上かかる。

 とはいっても、これしかできることがないのだから仕方がない。



「これで終わり、と」



 最後に運んだのは、一本の剣。

 それを、武具が積みあがった集積所に

 ずん、と揺れた。



「なんだろう、迷宮の方角で……爆発でもあったかな?」



 とはいえ、俺に何かができるわけでもない。

 せめて、俺に少しでも力があれば、な。

 そう考えていた時だった。





『質問。貴方は、力を欲していますか?』



 声がした。



「誰?」



 周囲を見回しても、誰もいない。

 人どころか、鼠一匹見当たらない。

 気のせいだろうか。



『質問。貴方は力が欲しくないのですか?』



 まただ。

 鈴の音のような、少女の声。

 それも、頭の中に直接響くかのように、騒音に妨げられずにはっきりと聞こえた。

 無視すればよかったのかもしれない。

 けれど、俺は質問に対して正直に答える。



「欲しいよ、力が」



 本当はずっとほしかった。

 自分の望みを自分で達成するための力が。

 けれど、俺には何の力もなくて。

 いやそれどころか、力を得る手段すらなかった。




『了解。であれば、この私を掴んでください』

「私?掴む?」

『肯定。私は貴方の手の中にある、大剣です』

「は?」



 混乱しつつも、俺は手の中を見る。



「君は?」

『提言。もし私を掴んでくれれば、私は貴方に力を与えましょう』




 声の主は、大剣だった。

 俺の背丈ほどもある長大な剣。

 刃も柄も、黒一色で装飾と呼べるものは最低限しかない。

 特徴的なのは、この剣には切っ先がないこと。

 刃の先端に当たる部分は、折れたかのように平らになっている。

 突く必要のない、斬ることしかしないと言わんばかりの剣。

 いわゆる、処刑人のエクスキューション・ソードだ。



「そんな大剣が、なんで俺に話しかけているんだ?」

『回答。特に理由はありません。しいていうなら、たまたま貴方がその辺にいたからということになります』

「なるほどねえ」



 まあ、そう言われた方が俺としては納得できる。

 これで俺が特別なんだとか言われたら、反応に困っていたことだろう。

 秀でたことなど何もない、むしろ何の役にも立たないのが俺だ。



「そういえば、元々封印されてたんだっけ」



 長い間蔵に封印されていたこの剣は、人と接することもなかったのだろう。

 そして、たまたま剣を運ぶ仕事を請け負った俺に、話しかけたというわけだ。



『質問。それで、どうなさいますか?』



 普通の人間なら、真っ先に飛びつくのだろう。

 けれど、俺は、俺だけは。


 

「ううん、悪いけど断らせてもらうよ。才能ないし、無能だし」



 ギフトである【非才無能】は一切の強化を俺に許さない。

 たとえ力を与える剣であっても意味をなさないだろう。

 それに、この剣も俺なんかよりライラックのような優れた人間に振るわれた方がいいはずだ。

 そう思って、俺は断ろうとして。



『否定。貴方の懸念は否定されます』

「何?」

『紹介。私の名前は、断罪魔剣アンドロマリウス。人を人より強い、人ならざるモノ――魔人に変える魔剣です』

「魔剣……」



 おとぎ話で聞いたことのある言葉だった。

 いわく、それを手にしたものは強大な力を手にするが、代償に人間を辞めることになるという。



『説明。魔剣を使用すれば誰であろうと、元々の能力や人格など一切関係なく強くなることが出来ます。無論代償に人間を辞めてもらうことになりますが』

「……なるほどね」



 嘘をついているとは、思えなかった。

 魔剣の伝承とも合致する。

 人を辞めてでも、力が手に入るのなら……。

 もしもこれで、俺の望みが叶うのなら。



「俺は――」



 答えを返そうとした瞬間、爆発音が、響いた。

 



「なん、だ?」

『敵襲。魔物などの外敵が出現したものと推測されます』

「……そんなバカな。ここは街の中だよ?」



 だが、理屈から言えば最も疑わしいのはその線だ。

 ダンジョンから外に魔物が出てきたのだろうか。

 俺は咄嗟に、『魔剣アンドロマリウス』を抱えて走り出した。

 自分に何ができるのかも、わからないままに。



「酷い……」



 南門をくぐると、街中は混とんとしていた。

 家屋が壊れ、悲鳴がこだまする。

 いったい、何が通ればこんなことになるのか。



「これは、一体何が起こってるんだ?」

「おい、アンタこんなところで何してるんだ?逃げたほうがいいぞ?」

「逃げたほうがいいって、何かあったのか?」

「ああ、そうなんだよ。実は、ゴーレムが南門を突破して街中に入ってきたんだ」

「嘘だろ……」


 

 東西南北四つしかない門は、防衛の要だ。

 ゆえに、Aランク冒険者が門番を務めているはず。

 それが、あっさりと突破されたというのはいかにも信じがたい話ではある。

 

「でも、事実だ」



 南門は壊されていて。

 街はあれていて。

 今もなお、魔物は進撃を続けている。

 俺は、どうすればいいというのか。

 俺に、何ができるというのか。

 


「この先に、いるんだ」

『質問。それは、敵のことですか?』

「いいやちがう。家族が、いるんだ」

『納得』



 魔剣が、うなずいたような気がした。

 


『選択。貴方には、二つの道があります。一つは、人として生きる道。力を得ることはできませんが、人間として生き、死ぬことが出来るでしょう。最善ではありませんが、最悪でもありません』

「…………」



 俺は答えない。

 言葉の意味がわからないのでも、答えに迷っているからでもなく、答える必要性を感じていないから。



「人間なんて……」



 あまりにちっぽけだった。

 大切なもの一つ、守れなかった。



「今までの俺なんて……」



 何もできなかった。

 荷物持ちという小さな役割一つこなせなかった。

 ゴミ呼ばわりされ、パーティから追放された。

 そんな俺は、もう。



「いつでも、辞めてやるよ」



 ――魔剣の柄を掴み、ボロボロの鞘から引き抜いた。



『承認。個体名、モミト・イクスキューションを所有者マスターとして登録します』



 少女の鈴のような声が響いて。

 漆黒の刃が鈍く光った。

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