29話「非才無能、ハメ技を使う」
とはいえ、勝ち目がないわけでもない。
「迂回するのは難しい相手だからな。ここは倒してしまうのが一番いいと思う」
ハードオーガとの戦闘を回避できるというのは、やつが洞穴の中に引きこもっているからだ。
フレイムタイガーのように、見晴らしのいい場所に陣取っているタイプのボスには効かない。
「倒せますか、モミトさん」
「このメンバーなら、勝てると思う」
俺達は剣を構えた。
作戦を伝えた。
フレイムタイガーは、全身を炎に包んだ虎だ。
それゆえに前衛殺しとも言われている。
けれど、その言葉は俺とマリィには当てはまらない。
フレイムタイガーは前足で迎撃。
矢が粉砕され、焼失する。
だが、それだけで十分。
「FOOOOOOOOOO」
フレイムタイガーは口から火を噴いた。
ブレス攻撃もまた、フレイムタイガーの持つスキル。
『《断》』
火炎放射を、斬撃が断ち割った。
刃に触れさえすれば、斬れないものはない。
それが炎や雷撃のような実体がないものであってもだ。
ゆえに、斬撃を合わせさえすれば、俺に攻撃は届かない。
俺が炎を防げるのは剣を振るっている瞬間のみ。
継続的かつ広範囲の炎まで、防ぎ続けることはできない。
かといって、《速度強化》や《加速》などのスキルを持っていない俺は下がって避けることもできない。
だから――。
「《バインド》!」
すぐさま、俺を回収する役が必要だった。
ナナミが俺に縄を巻き付け、引っ張って俺をフレイムタイガーから回収する。
「FOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
フレイムタイガーは、当然敵である俺を許さない。
俺に向けて跳躍しようとするが――。
『《裂》』
「《赤の気孔》!《功夫掌》!」
俺の《裂空斬》と、バフの乗ったヒュンリの拳が、フレイムタイガーに命中し、その動きを止める。
「あっつ、あっつ!何こいつ、やばい!」
「ひゅ、ヒュンリ、すぐに下がって!《ヘビーアロー》」
少し遅れて、シャーレイが弓矢での牽制を行う。
「FOOOOOOOOOOO!」
「隙ありだ」
『《断》』
またしても、俺達の斬撃が、フレイムタイガーを切り裂く。
「FO、FOOOOOOOOOOOOOOOOOO!」
フレイムタイガーは狂乱するが、それだけ。
俺をとらえることはできず、マリィの斬撃を防ぐ手段もない。
フレイムタイガーは決して知能は低くない。
俺たち四人の中で、誰が一番脅威かを理解して、俺に的を絞るくらいのことはやってくる。
それはわかっていた。
「次だ!」
「《功夫掌》!」
ヒュンリが、アンドロマリウスに乗った俺を、拳を使って弾丸のように射出する。
相手が、こちらの行動を読んでくるなら、想定外の一手を打つまで。
実際、火炎放射で牽制すれば俺が近づけないと思っていたフレイムタイガーは、何もできずに硬直しーー。
『《断》』
「《バインド!》」
「《ヘビーアロー》」
シャーレイがデバフ付きの矢で牽制を行い、同時にナナミが俺を縄で回収。
「決定打にかけるな……」
俺はぽつり、と呟いた。
実際、すでに三度斬りつけておきながら、未だにフレイムタイガーは死んでいない。
理由は二つ。
単純にフレイムタイガーのタフネスがとんでもないということ。
あのハードオーガよりも、当然上。
そして最大の理由だが――。
「急所を斬れてない」
斬撃は、急所に当ててこそ意味がある。
頭部などの重要器官や、首や脇など太い血管が通っている場所を狙わなくては、決定打足りえないということ。
急所に当てられなかった理由は単純で、狙いが定まらなかったからだ。
さもありなん。
空中を飛びながらで、まともに狙えるわけがない。
というか、マリィでなければ斬ることすら難しいだろう。
そして、時間は俺達の味方ではない。
「ヒュンリ、大丈夫か?」
「バフかけてたから平気……といいたいところだけど、正直キツイかも。あと二発食らったらヤバいかな」
「わ、わたしもあと矢が三本しかないです……すみません」
タンクを担当しているヒュンリの消耗が激しいのに加え、消費アイテムも残り余裕がないときている。
「さっさとケリをつけるしかない、か」
俺は、剣を構える。
『どうされますか?』
「プランCだ」
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