27話「非才無能、称賛される」
「勝った……」
『肯定。私達の勝利です。流石私とご主人様ですね』
「ああ、そうだな」
『賛同。私のことをたくさん褒めてくださっても構いませんが』
「ああ、お前のおかげだよ。ありがとうな」
『当然。あ、あくまでご主人様の冷静な判断あっての結果ですがね。ありがとうございます』
もしかして照れてるんだろうか。
ちょっとかわいいな。
俺はそっと柄の部分をなでる。
なんとなく、こうするのがいいような気がしたから。
「にしても、本当にすごいことやってのけるねえ。まさか一人でオーガをやっちまうなんて」
ナナミが呆れたように俺を見てくる。
そんな目で見られるような悪いことはしてないつもりだが。
「す、すごいです……あんな化け物を一人で倒してしまうなんて」
「すごいよお兄さん!シャーレイの矢もまるで通じてなかったのに、どんなスキルを使ったの?」
「ええと……」
シャーレイもヒュンリもキラキラと目を輝かせてこちらを見ている。
どうやら、俺の狙いはうまくいったようだった。
俺としては、二つの狙いがあった。
一つは、二人の力を見極めること。
実際に遠距離攻撃ができるのか、タンクとして立ち回れるのか。
そして、練度は二人ともどの程度なのか。
それらをチェックするのは一つだった。
だが、本命はそちらではない。
主目的は、俺たちの力を示すこと。
俺達が弱いと認識されれば、彼女たちは俺とは組んでくれないだろう。
それどころか「モミトは実は弱くて、強いというのはデマだった」という噂が広まれば、俺とはもう誰も組んでくれない可能性すらあった。
だから実力を見せつける必要があったのだが、効果はてきめんだったな。
「いや、本当にハードオーガって尋常じゃないからね!バフかけたボクより遅いから負けることはないけどさ、逆にバフかけて殴っても傷一つつかないから逃げるしかないんだよね……」
「ぜ、前回はそれで撤退しましたからね」
「そうだったんだ……」
ハードオーガは強すぎるので、戦わずに通過するのがセオリーとされている。
討伐難易度で言えば、十階層のボスより高いからな。
「お兄さんが倒せたのって【剣士】が習得できるレアスキルとか?」
「いや、そうじゃないよ。マリィの力さ」
「補足。改めまして、アンドロマリウスと申します。ご主人様の相棒兼メイド兼人生のパートナーです、ついでに魔剣でもあります」
「おいちょっと待て」
属性が過多すぎるだろ。
というか嘘が混じってるし。
少なくとも今のところお前を人生のパートナーに選んだ覚えはないし、メイドのつもりもないぞ。
相棒だとは思ってるけどな。
「え、パートナー?お兄さんの?」
「魔剣、というのは、伝説の?」
二人とも食いつくところが異なっている。
順番に説明したほうがいいか、これ。
「最初から説明すると――」
俺はゆっくりと説明を始めた。
◇
魔剣について、というか俺のこれまでについて話し終えた。
「ううっ、頑張ったね、お兄さん……」
「わかります、邪魔者扱いされるの辛いですよね……」
「えーっと……」
二人とも、涙を流しながら俺に同情してくれた。
「全く、ぐすっ、何泣いてるんだい二人とも……」
「ナナミも泣いてるような気がしますけど……」
マリィ、そういうことは指摘しない方がいいと思うぞ。
まさかこんな反応をされるとは思っていなかった。
俺にとっては、もう終わった話だし、冷遇されていたのも俺の能力不足が原因だと思っているのだが。
「まったく、ひどすぎますね、その幼馴染とやらは」
「そうだね、酒場で攻撃するなんて武闘家の風上にもおけないよ」
「そもそも、扱い自体が相当ひどかったからねえ。ある日突然クビっていうのもどうかと思うよ」
「な、なるほど」
確かにそれはそうだ。
そのライラックとの決着もつけることが出来たし、俺としてはもう気にしてないんだけど。
「ですが、ご主人様の雌伏の時は終わりを告げたのですよ。これからモミト様の時代です」
「ええと、マリィちゃんは何でも斬れる『魔剣』で、でも装備者にはデメリットがあって、そのデメリットがモミトさんだけには適用されないってこと、ですよね?」
「そういうことになるな」
うまくまとめてくれて非常にありがたい。
「そっか、でも何でも斬れるなら例のSランクモンスターに勝てたのも納得だよね。オリハルコンゴーレムだったっけ?」
「そうだよ。まあ、俺だけの力ではないけどね」
あの勝利は大勢の協力あっての勝利だ。
「…………」
いまだに、俺は自分が多きことを成し遂げたという実感がわいていない。
それは当然かもしれなかった。
ゴーレムを斬ったのは俺の能力ではなく、あくまで魔剣アンドロマリウスの力だった。
俺自身の能力でできたのはただ魔剣の副作用を拒んだだけ。
つまり、自分自身を守っただけに過ぎない。
俺の力で、俺以外の誰かを守ったわけではないのだ。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
「え?ああ、悪いちょっと疲れてるのかも」
いかんいかんちょっと考えごとに没頭しすぎた。
「そうですか、でしたらいったん休憩しましょう。膝枕をご所望ですか?」
「いやいい。大丈夫だから」
「それは残念。お望みとあらばいつでもまた、して差し上げますからね?」
「ありがとう……。待て、お前今またって言ったか?」
俺は一度たりともされた覚えがないんだが――こいつ、俺が寝ている間にやっているのか?
「あの、ナナミさん、あの二人ってやっぱりお付き合いを?」
「うーん、どうだろう、まあ見守ってあげるのが一番いいんじゃないかねえ?」
「よくわからないけど、二人とも楽しそうだね!」




