25話「非才無能、新しい仲間を見つける」
募集を見て俺達の前に現れたのは、二人。
「ボクの認識が正しければ、募集しているのは「防御力のある前衛」と「遠距離アタッカー」だったと思うんだけど、問題ないかな?」
「ああ、それであってるよ」
一人は、チャイナドレスを着た赤髪の少女。
両手に籠手をはめていることからして、武闘家だろうか。
「ボクはヒュンリ。ギフトは【功夫】で、前衛を担当してるよ。それで、こちらが……」
ちらりと、ヒュンリがもう一人の少女に目を向ける。
水色の髪をした、目隠れの少女。
フード付きのローブを身にまとっているため、表情はよくわからない。
ただ、細い腕がヒュンリーの腕にしがみついて震えているため、緊張しているのだろうということはわかる。
「わ、わたしはシャーレイといいます。恩寵は【射手】です」
小さく、蚊が泣く様に震えていて、それでも彼女は確かに名乗った。
【功夫】は、東方に伝わる武術、カンフーを使いこなすギフトであり、肉体を強化するすべに秀でている。
前衛向けというのは間違いないだろう。
【射手】は弓矢を用いる恩寵だ。
よくよく見れば、シャーリーは肩にクロスボウを背負っている。
彼女の方は、後衛で間違いない。
「俺はモミト・エクスキューション。前衛をやってる。隣にいるメイドは、アンドロマリウスと言って、俺の魔剣だ」
「名前。アンドロマリウスと申します。マリィとお呼びください」
「アタシはナナミ。【盗賊】の恩寵を持ってるよ。斥候職が主な仕事だ」
俺に続いて、マリィとナナミも自己紹介をする。
二人とも堂々としてるな。
こういうのは慣れてないかもと思ってたが。
緊張していたのは俺だけだったりするのかね。
「よろしく~」
「よ、よろしくおねがいします」
二人はそろって頭を下げる。
随分と仲がよさそうだ。
「二人は前からの知り合いなのか?」
「うん、ボクたち元々故郷が同じでね、二人でパーティ組んでやってきてたんだけど、限界を感じててさ。募集を探してたらお兄さんたちを見つけたってわけ」
「ふ、二人募集ってあんまりなくて……だからありがたいです」
「そっか……」
確かに募集をかけるなら普通は一人だろう。
『聖女の英雄』も、一人ずつメンバーが増えていったのを覚えている。
そういえば、俺が出ていった後、メンバーは補充できたんだろうか。
他さん人はともかく、ライラックとうまくやれる人間がいるとは思えない。
というか、あの三人も怪しい気がする。
大丈夫かな?
まあ俺にはもう関係ないけども。
「ともあれ、よければこれから一緒にクエストを受けないか?君達の実力を見たいし、俺たちの実力も見せたいからね」
「うん、いいね!ボクのカンフーをしっかり目に焼き付けておくれよ!」
「が、頑張ります……」
ヒュンリーは自信満々に、シャーレイはおずおずとうなずいた。
うん、二人ともなんだかいい人そうだ。
何より、募集した人員がしっかりと集まったのだ。
◇
俺たちは『愚者の頭骨』に向かうことにした。
この街の冒険者のほとんどはそこで活動しているから、実力を見るにはぴったりだろうという判断である。
ヒュンリとシャーレイに話を聞くと、「まだ五層までしか潜っていない」とのことだったので五層に言ってみることにした。
適当に五層で出るモンスターの討伐依頼を受けてから、俺達はダンジョンに向かった。
斥候であるナナミが先行し、前衛であるヒュンリが続く。その後には後衛のシャーレイと、最後に殿を務める俺がいるという陣形で進んでいった。
「あ、あの、わたし達駆け出しのEランクなんですけど、だ、大丈夫ですか?」
クロスボウを構えたまま、シャーレイが自信なさげに聞いてくる。
この子はちょっとネガティブなところがあるらしい。
「ああうん、全然心配いらないよ。そういうのは、それより君たちの実力を見て決めたいからさ」
俺だって、肩書で言えばお世辞にも褒められたものではない。
何なら今も【非才無能】のギフトは隠してるし。
まあ、強い能力ならまだしも弱点や欠点を自ら晒すような真似はできないので、黙っておくのだけれど。
「無能とは組めない!」とか言われてパーティの話が破談になっても困る。
……改めて考えると、追い出されたことをかなりトラウマにしているみたいだな、俺。
力を得て、味方を得てもなお、人の本質はあまり変わらないのかもしれない。
「……む?」
『何かあったのでしょうか』
益体もないことを考えていると、先行していたナナミが停止し、右手を上げる。
とまれ、の合図だ。
ついで、右手を動かし手招きをしてくる。
俺達三人は、ナナミの方へと歩いて行った。
そっと、ナナミが指さす方向を見てみる。
「ゴブリンだ……」
前方十メートルほどの場所に、ゴブリンが巣を作っている。
数は十体ほどだろうか。
「奥に洞窟があるから、実際はもっと多いだろうけどね」
ナナミが、斥候らしく俺達に助言してくる。
「ど、どうしますか?」
「戦おう。俺達なら勝てない相手じゃないと思う」
正直、俺とナナミだけでも突破はできる。
というか、過去に突破しているし。
「シャーレイはまず《アローレイン》――範囲攻撃で薙ぎ払ってほしい。そしたら前衛の僕とヒュンリ、ナナミが前に出て残ったゴブリンを殲滅するっていうプランだ」
「し、シンプルですね」
「シャーレイちゃん、これは適当っていうんだよ?まあアタシも反対はしないけど」
「ボクは結構好きかなー。それくらいの方が楽だしね」
「……散々な言われようだな」
ただ、これ以上の作戦は望めない。
今日組んだばかりの即席パーティだ。
お互いのことがわからない以上、緻密な連携は望めない。
なら最低限の立ち回りだけ共有したほうがいい。
『慧眼。流石はご主人様ですね。今ある手札を最適な方法で使われるとは』
「……今のところ、机上の空論だけどね」
剣の姿とはいえ、まっすぐに褒められるとなんだか照れる。
「じゃあ、行きますね。《アローレイン》」
シャーレイがクロスボウを構え、ゴブリンに向かって矢を放つ。
直後、矢はスキルによって分裂しーー雨のように降り注いだ。
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