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ハズレギフト【非才無能】で落ちこぼれだった俺、伝説の魔剣を手にして成り上がる~元仲間がすがって来るけどもう遅いと斬り捨てる~  作者: 折本装置


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16話「非才無能、魔人について知る」

ギルドマスターの言葉を聞いて、俺が最初に感じたのは恐怖だった。

 マリィと引き離されたら、貴重な味方を失い、ルーチェ復活から一気に遠ざかる。

 そして、隣の少女から発せられる殺気も感じ取っていた。

 これはまずい。

 一触即発、そんな空気は。



「ま、別にいいんだけどね」

 ふっ、とギルドマスターが唇を緩めた瞬間に霧散した。

「え?」

「確かに、魔剣が持ち出されたのは問題だよう。それは事実だ」

「…………」



 ギルドマスターが何を言いたいのか、まるで俺にはわからなかった。

 上に立つものの考えなど、俺のような人間にわかるはずもないが。



「だけどよう、僕も別に意地悪したいわけじゃない。そもそも僕たちが魔剣を管理していたのは魔人化を防ぐためだからね」

「魔人?」

 聞きなれない単語に、俺は首をかしげる。

「説明。魔剣を装備した人間は、人ならざる生物に進化する。その総称を魔人と言います」



 マリィが俺の方を向いて説明してくれる。

 人間を辞めるとは聞いていたが、魔人なんて呼び名があるのか。



「なるほど、流石は魔剣だよう。よくわかってるね、ありがとう」

「魔人が恐ろしいのは二点。一つは、圧倒的な戦闘能力だ。今のモミト君もそこそこ強いが、仮に魔人になっていた場合その戦闘力は比較にならないんだよう」

「具体的には?」

「そうだね、文献によれば第七十二魔剣の魔人は、四方八方に防御不能の斬撃をまき散らして山岳や城砦を一瞬で裁断したという伝承があるよう」

「…………」



 言葉が出てこなかった。

 マリィの力は強力だ。

 少なくとも俺なんかが、SランクモンスターやAランク冒険者に勝利できるくらいには。

 だが、一瞬で山を吹き飛ばせるほどの怪物になった覚えはない。

 次元が違いすぎる。



「……あの、もう一つの恐ろしさというのは?」

「ああ、そうだったね。もう一つの恐ろしさはね、同族意識の喪失かな」

「同族意識の、喪失?」



 俺は意味がわからず、オウム返ししてしまった。



「躊躇。人が人を殺すのには通常、ブレーキがかかります」



 マリィがぽつりとつぶやいた。

 それは、ただの事実。



「同族。同じ生物だと、感じていれば殺すこと、傷つけることを躊躇うでしょう。誰かが傷つけば自分も痛いと感じることだってあるはずです」

「そうだな……」



 俺だって、ルーチェが黄金病になったとき、何度代わってやりたいと思ったことか。

 同族や同胞だと認識していれば、愛や情が生まれる。傷つけようなどと思うはずもない。



「戦争なんかではよく使われる手だよう。『あいつらは同じ人間ではない。ただの獣だ』なんて言って闘争心を煽るのさ」



 ギルドマスターは紅茶をあおる。

 もしかすると実体験なのかもしれない。



「つまり……」

「魔人はねえ、人を殺しても何も思えなくなる。それが、真の恐ろしさなんだよねえ」

「理解できたよ」



 城砦すら粉砕する力を持ちながら、人間を羽虫程度にしか思わない。

 人の心をなくした破壊兵器。

 それこそが、魔人。魔剣を使ったものの末路というわけだ。



「でもだからこそ安心したのも事実だ」

「え?」



 ギルドマスターの言葉に、俺は恐る恐る顔を上げた。



「君は魔剣に支配されていない。人ならざる怪物に変じることも、人への関心を失うこともない。それは君を観察していればよくわかるよう」

「え、あの」

「君は誰かを愛し、思いやれる男だ。僕の見立てに間違いはないよ」



 ひとつ気になったことを訊くことにした。



「一つ訊いてもよろしいですか?」

「なんだよう?」

「いつから、俺を観察していたんですか?ギルドに入ってからとか?」



 おおかたギルドに入った直後だろうとは思う。

 ギルドマスターの二つ名は“千里眼”。

 彼が保有するスキルの前では隠し事ができないと言われている。

 だが、ギルドマスタ―は首を振って否定し。



「ああ、君達が宿を出た直後だよう。食べ歩きや買い物までばっちり見させてもらったさ」

「「何見てるんですか!」」



 思わず突っ込んでしまった。

 隣にいたマリィも同様である。

 じゃあなんですか?

 マリィの泣き顔にみとれていたり、きわどい衣装を見てあたふたしていたところなんかも見られていたと?

 後者はともかく前者は本人すらバレてないのに?

 顔が熱くなるのを感じる。

 ちらりと彼女の方を見ると、マリィも顔を真っ赤にしていた。



「いっそ殺せよ……」



 唇をかみしめてプルプル震える俺を見かねたのか、ギルドマスターが咳ばらいを一つして。



「一応弁護させてもらうと、デートをのぞき見するつもりはなくて」

「デートじゃなくてただの買い出しです!」



 俺は思わず突っ込んでしまった。顔が熱い。

 だが、この流れは悪くない。



「ともあれだよう、君達は決して人やこの街に害をなす存在ではないとわかった。だから、私の権限で君にその魔剣を預けよう」

「!」



 冒険者ギルドが冒険者に備品を貸与するのは珍しい話ではない。

 マリィに対しても、それを認めるということだろう。



「ただし」


 ギルドマスターは指を一本立てた。



「君は絶対何があっても人を殺すな。正当防衛であってもダメだ。もしその禁を破れば――」

「破れば?」



 俺は、ごくりと唾をのみながら尋ねようとして、遮られる。

 眼前に、前触れなく銃口が出現したからだ。

 言うまでもなく、ギルドマスターが銃を抜き放ち、俺に向けたのだ。

 いつの間に抜いたのかまるで見えなかった。



「君を危険性ありとして処断し、魔剣は回収させてもらうよう。それが私からできる最大限の譲歩だ」

「……承知しました」

「感謝。寛大な処置に感謝します」



 俺とマリィは、ギルドマスターの厚意に対して深々と頭を下げることしかできなかった。



「あっ、それともう一つだけ」

「まだ何か?」

「君確かEランクだったよな?今回の件でCランクまで上げといたから、頑張ってよう」

「「……はい?」」



 俺とマリィの声が重なった。

 まあ要するに、昇格である。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


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