リーちゃん再び現る!
第三話です
宜しくお願いします
「ふふ~。ふふ~ん♪」
僕は自分の部室で、バッタを眺めながら鼻歌を歌う。ここは生物室。部員は僕ただ一人。
先輩たちはこの夏に引退し、後輩も今年は入部者0人であった。だからここは静かで自分の世界に没頭できる、いわば秘密基地のようなものだ。
いつもなら、静かに勉強もしているが、今日の頭の中は勉強ではなく妄想でいっぱいだ。
「そうか~。僕は、宮城さんと付き合えるのか~~」
嬉しすぎてニヤニヤが収まらない。リーちゃんの言うとおりかもしれない。もしリーちゃんがこの時代に来て、そのことを教えてくれなければ、絶対に自信喪失で告白までの道のりはさらに遠かったであろう。
美化委員の時に、今日は宮城さんとどんな話をしよう。
もうそればかりで頭がいっぱいになるのであった。
「こんにちは~」
宮城さんも花やりにやってきた。この時だけはいつも群衆に囲まれず、僕と二人っきりになる。彼女も水やりをするのだが、花に水をやる彼女の優しい表情に僕は心打たれる。
「ん? どうかした?」
じっと見てるのがバレたか、彼女から声をかけられた。
「ううん、別にっ!」
「……」
はっ、いかん! 恥ずかしくて顔をそらしてしまった。僕たちは付き合える運命なんだ。自信を持って彼女に声をかけよう。
「動画とかは見るの?ミーチューブとか?」
いつもは花のことばかりの話だけど、今日はそれ以外も訊くぞ。やっぱり彼女のことをもっと知りたいから。
「うん、見るわ。た、例えば動物の癒やし動画とか、面白動画とか」
「うんうん。確かにそれ面白いよね。犬や猫がポンコツしてて可愛い」
「そうそう。あまりにどんくさいことするから、『ふふ、可愛すぎるww』って毎回動画を見て声が出てるわ」
「分かる、分かるよ~」
やっぱり彼女と話すのは楽しいな。他にも収穫があって、彼女は料理するのも頗る大好きらしい。とくにしょうが焼きが好きなんだって。今日は充実した一日だった。最高すぎて家でずっと妄想の世界に満たされていた。
しかし毎日がそう良い日ばかりは続かない。
今日も美化委員があって彼女と話をしたのだが、どうやら少し踏み込みすぎたようだった。
「まんがは読むの?」
「うん。少年向けを読むわ」
「少女向けは読まないの?」
「え? 読むのは読むわよ」
「え、どんなどんな?」
「………恋愛ものかしら?」
「へえ、題名は?」
「………」
僕は目をキラキラさせながら、興味津々で彼女を見る。しかし彼女の方はみるみる顔を赤らめて恥ずかしそうに、
「そこまではまだ言えないわ! もう! 平田君はエッチだわ!」
そう言って怒りながら、小走りで立ち去っていったのだった。
調子にのった~~! 彼女の気持ちを省みず、ずけずけと質問しちまった~~!
僕はふらふらと下校して、自分のアパートに戻るのだった。
部屋に戻ってベッドに寝転がると、ピンポーンとチャイムが鳴る。出ると、リーちゃんがにこにこしながら立っていた。
「パパ~っ」
しかし声は少しドスがきいていた。あれ、怒ってる?
「どうした、リーちゃん?」
「ま~たママに深入りしちゃったでしょ? だめよ~。仲良くなる前にあんまり深く訊いたら、すぐ恥ずかしがっちゃうんだから」
そう言ってリーちゃんはプリプリしているのだった。なるほど、だから宮城さんはあんな感じに言ったのか……。
「ありがとう。気をつけるよ」
そう言うとリーちゃんはニコッとこちらに笑って、
「良かったわ。未来から来た甲斐があったわ」
「しかしよくそれが分かったね」
「未来が少し変わってたからよ」
「なるほどなあ」
僕がしみじみ感心していると、この娘は僕のベッドに座っていた。
「あ、こら…」
「へえ~。パパってこんなこじんまりとした部屋に住んでたんだ~」
彼女は僕の顔をまじまじと見ながら、いたずらっぽく言う。
「ねえ、パパもここに座って」
ポンポンと彼女の隣に手を叩く。いや、これ僕のベッド……。
そして僕が座ると、彼女は優しく僕のそでを握って、
「パパはちゃんとママと結婚して、私を産むんだから。私も大事だけど、ちゃんとママも大切にしてね」
と、リーちゃんは優しく僕に言った。
確かに、その通りだ。いくら女性経験がなくたって、気をつけるところは気をつけないと!
僕はこの娘を見た。彼女の母親に対する愛情は本物だと感じた。優しくそでを引っ張る彼女の指は、しかししっかりと摑んでいる。
僕はふと気になって彼女に訊く。
「リーちゃんはさ、ママとはどんな遊びしてるの?」
彼女はキョトンとした顔で僕を見る。
「な、なんでまた?」
「宮城さんのことも気になるけどさ、やっぱりリーちゃんのことももっと知りたくて」
そう言うとこの娘はフッと笑い、
「じゃあ私の話もしていきますね。でーも少し長いですよ?」
とニヤニヤ笑うのだった。
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