未来からやって来た小学生
新連載です
宜しくお願いします!
「パパ~~」
平田草太、齢17歳。高校2年生にして、小学生のパパになりました──。
◇◇◇
僕には好きな人がいる。学園のアイドルにして、誰に対しても優しく接している、まるで女神のような女子高生──宮城愛子に恋をしている。
肩まで伸びる艶やかな黒髪に、きりっとした二重まぶた、鼻は高く、口は大きめだが、却って彼女の笑顔を素敵にする。同じ同級生とは思えないほどの、大人びた様子、物腰、対応に学校の生徒は惚れ惚れしている。
勉強が少しできる以外、なんの取り柄もない僕みたいな凡人には、無謀な恋とは分かっている。この前だってサッカー部のエースがフラれたと聞いた。それでも僕は今日、彼女に告白しようと思う。
勝算はほぼ0だ。もし可能性があるとしたら、僕と彼女は同じ美化委員で、花の世話とか一緒にしている間柄。そして会話も多少はしているから、それに賭けるしかない。
「平田くん、どうかしたの?」
放課後のクラスに、僕は宮城さんを呼んだ。相変わらず彼女の笑顔は、優しく慈愛に満ちていて素敵だ。もう心臓はバクバクだ。まさに口から飛び出すとはこういうことか、と初めて理解した。
「す……好きでス!!……付き合ってぐらばい!!!」
め、めっちゃ噛んだ!!恥ずかしい!!! 彼女は? なかなか返事がない。やっぱりフラれたかな……?
見ると顔や耳まで赤らめて、目をきょろきょろと上下に動かしている。こ、これは……。
「あ……あの、あの、あの………」
「あの?」
「あ……ちょっ、ま……ごめーん!!」
そう言って急ぎ彼女は、クラスから逃げていったのだった。
僕は膝を曲げて、ぼう然と学校の花壇に水をやる。たぶんかなり格好の悪い顔になっていたであろう。世界が真っ白になっていたのだけは覚えている。すべての風景が同じ白色になっていた。
当然とは分かっていた。分かっていたが、好きな人にフラれるのは、やはり堪えるものがあるな……。
唯一花だけは、変わらず赤く色づいていた。これだけが今の心の支えだった。
僕は花やりを終えた後、フラフラと帰路について、部屋で一人男泣きをしたのだった。
翌日。気まずくはならないように、すっきり泣いた僕は、周りをきょろきょろと見廻しながらクラスに入る。別段、僕の噂とかもあるわけでもなく、いつものクラスだった。
彼女も登校してきた。相変わらず色んな人に囲まれて人気者だった。僕は自分の席で彼女を眺める。そしたら、バチッと彼女と目が合う。僕が小さく手を振ろうとしたら、彼女はどんどん顔を赤くしていき、スススッとクラスから出て行くのだった。
「あれ、宮城は?」
「先生ー。宮城さんはおトイレに行ってまーす」
茫然自失。僕は生きがいを見失った。告白してここまで気まずい関係になるとは、誰が予想できたであろうか。
僕は、告白しなければ良かったのだろうか。そう思いながら、昼休みに花壇の水撒きをしていると、
「ひ、平田く~ん……」
僕の近くで、か細い声を出して、宮城さんが花壇に水撒きをしていた。
「み、宮城さん……!?」
「う、うん~」
しかしここから会話が弾むわけもなく終始無言。僕は昨日のことを詫びた。
「ご、ごめんね。告白なんかしちゃって。嫌だったよね……」
すると彼女は大きい声で、
「ち、違う!嫌なことなんてないわ!!それだけは本当!信じて!」
彼女はじっと真剣な目で僕を見る。
「わ、分かった。信じるよ」
彼女は、ぱあと明るい表情になって、鼻歌を歌って満面の笑みになるのだった。
「じゃ、じゃあ僕は嫌われてなかったんだね」
「え~~嫌いどころか、」
「え?」
「え………あ…」
彼女を見る。みるみる顔が赤くなる。
「バ、バカーーーー!!!!」
彼女は大声で、彼女が持っていた象のじょうろを僕に押しつけて、ダッシュでこの場から去ったのだった。
「え、えー…………」
放課後になり、のんびり部活をおこなった僕は、家に帰りながら、さっきの昼休みのことで頭の中はもやもやでいっぱいだ。
嫌い……ではないらしい。でも、好きにしては、僕のそばから高速で逃げていくし……。
女の子、難しい……。
家に着いて玄関を開けると、ドアがガッと動いた。後ろを見ると、ピンクのランドセルをつけた可愛らしい小学生の女の子が、ドアを持っていた。
「え~っと、君は……?」
そしたらこの娘は、僕の上の制服をつまんでニコッと笑って、
「パパ~」
というのだった。
僕は混乱する。僕に娘どころか、ガールフレンドすらいた事のないこの僕に、子ども!? この子は一体なにをどう間違えれば、僕を父親に見えるのだろうか!? 彼女を傷つけずに、僕が父親でないことに気づいてもらうしかない!
「お嬢ちゃん。パパは多分僕よりもう少し身長が高くて、紺のスーツ着てるんじゃないかなあ?」
「ううん。あなたが間違いなく、私のパパよ」
「ど、どうして……」
「私は未来からあなたに会いに来たからよ」
この子は、一目で分かる。間違いなく賢い子だ。
「私は15年の未来からやってきた、あなたの娘」
彼女はつかつかと僕に近づく。僕はたじろぎながら玄関へと後退する。
「私の名は理恵。平田理恵。15年後の未来のこの場所からやってきた、平田草太の娘よ」
そしてつまずいてこけた僕の上に、彼女は乗って、
「そして私の母もこの頃は高校生だったわ。名を平田愛子──旧名『宮城愛子』よ」
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