第4話:運命の一振りと、団結
東門での勝利から数時間後。空はまだ闇に包まれ、砦のあちこちで負傷者のうめきと火のはぜる音が交錯していた。
そんな中、ジードは再び広場に立ち、兵士たちを呼び集めた。
「……次の一手を決める」
沈黙が広がる。誰もがその意味を理解していた。
ジードは懐から、サイコロを取り出す。
「出目が偶数なら出撃。奇数なら防衛継続。それでいいな?」
誰も口を開かなかった。だが、誰も否定もしなかった。
「……振るぞ」
コロコロ……。
兵士たちは黙ってその音を聞いた。出目は――4。
「出撃、だ」
小さく、誰かが息を呑んだ。
「ふざけるな! 出撃って……相手は数千の本隊だぞ!」
「死にに行けってのか!? ここに籠ってた方がまだ……!」
怒号が飛ぶ。しかし、ジードはいつものように飄々と笑った。
「いいや、“死にに行く”んじゃねぇ。“サイコロがそう言った”んだ」
その軽口に、数人が呆れて頭を振った。
だが、少し遅れて笑いがこぼれる。
「ったく……あんた、マジで運任せだな」
「でもよ、あの東門の一件で、俺はあのサイコロにちょっとだけ信頼を置いてんだ」
「オレもだ。偶然かもしれねぇ。でも、あのときの“偶然”が、今ここに俺らを残してる」
一人、また一人と声が上がる。
「出撃だ。行こう。運に賭けるのも……悪くねぇ」
「どうぜ待ってても死ぬだけだ。それなら一矢報いるのも悪くねえ」
「そうだそうだ!」
ジードは黙って頷き、地図を広げた。
「西門裏の抜け道を通る。奇襲をかけるには、ここしかない」
「なんだ、あんちゃん運だけじゃなく戦術もそれっぽいじゃねえか」
「サイコロが出撃って言ったんだ。どう出るかは、自分たちで考えねえとな」
こうして、兵士たちはジードの“運命”に身を預けた。
不思議なことに、絶望的な状況の中で誰もが厳しい表情の中に希望の色を浮かべていた。