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21話 改めて仲良くなろう

「遥、なんか前より明るくなったね」


ゴールデンウィークも明け授業が本格化していき疲れも残る中貴重な休み時間をダラダラと薫と喋ってることに費やしていた。そんな折、薫くんから唐突に告げられた言葉は俺にとってなかなか衝撃である。


「え、そう?まぁたしかに……去年よりは楽しくやってるかも。そんな違う?」


「うーん別に前も暗くはなかったと思うんだけど。前はもっと壁……というかひとりで居たい感があったかも」


「え、まじか。やっぱ薫もそう思ってた?」


「最初は少しね。仲良くなってきたらほとんど感じなかったよ」


「まじかー……」


そう言われて振り返れば、心を閉ざしていたというわけではないが、自分から積極的に関わっていくわけでもなかったし。周囲から話しかけられても冷たくしてしまっていたかもしれない。



なるべく地味に目立たずを心がけてはいたが、他人とって不快感を与えるような存在にはならないことを意識していたつもりだったんだが……。


「そうかあ……話しかけてくれた人には悪いことしたかもなあ」


「あ、いや全然気にしなくていいと思うよ。いま振り返って見ればって感じだから!ごめんね余計なこと言ったかも」


「いや全然だよ。当時は友達作りたいなんてあんまり思ってなかったのも事実だから」


「やっぱり……今年は佐野くんがいるから?仲良いよねふたり、ちょっと意外だったかも」


「まぁあいつとは付き合い長いからな。それに今年は薫ともさ、もっと仲良くなりたいと思うんだ」


「え!嬉しいけど……なんかちょっと照れるかも……」


「ああ、いや変な意味じゃねえよ!?ただ、去年もいろいろ良くしてもらったのに、学校でこうして話すくらいじゃん?今年はもっと仲良くなれたらいいなって思ったんだよ」


「嬉しい!嬉しいよ、実は僕もね……ほんとはもっと仲良くなりたかったっていうか……でも嫌かなって」



謎の沈黙が俺たち2人の間を流れる。いや……ほんとになんだこの空気は。


改めて友達になろうよ!なんて言うのは小学生低学年くらいまでか?そう考えるとなんだか果てしなく恥ずかしい行為をしているような気さえしてくる。



「おーおー、男2人で何イチャイチャトークしてんだ?」


ずけずけと会話に割って入ってくるのは大地だ。空気は読めるが、時おり読まないこいつのスタイルはこういうときに助かる。


第三者の介入は変な空気を晴らすのに最も適しているからな。



「別にそんな甘いトークをしてたわけじゃない。ただ今年は薫とももう少し仲良くなれればいいなと思っただけで」


「おー!成長したなあ遥くんも。俺は嬉しいよ!」


喜びをアピールしているつもりなのかバシバシと背中を叩いてくる。こいつにはこいつで心配をかけてきたし、多少大げさでウザったいが好きにさせておこう。


「ってことはだ。薫くんとは俺も友達になっておかないといけんな」


「なんでそうなる」


「あ?めんどくさい性格のお前のトリセツになれるのは俺だけだからな。というわけでよろしく!」


「誰がめんどくさいって?」


「ま、まあまあ!僕としては佐野くんの仲良くできるなら嬉しいよ。こちらこそよろしくね!」



俺の反論や疑問はガン無視で大地と薫は軽く自己紹介のような会話をしている。2人は今年初めて同じクラスになるし、人間関係も俺という一点のみを除けば共通するところはない。だからほとんど交流もない訳だが、思いのほか話は合うらしい。俺を置き去りに意外と盛り上がっている。



そしてあっという間に連絡先の交換まで成し遂げている。俺が薫と連絡先を交換したのは去年の秋頃だったかなあ……。それもわりときっかけが必要だった記憶があるし。


昔の俺はもっと簡単に連絡先を聞くくらいのことはできていたかな。いや……変なところでチキって聞けないのは、きっと昔からだな。



「何をお前は黄昏てんだよ。それとこのあと暇だろ?」


ほんの少しぼんやりと昔を思い出していたつもりが、意外と長いこと考えていたらしい。肩を叩かれてようやく意識が戻った。


「このあと……まあ暇だな」


一瞬考えてみたが、今日は姉妹と会う予定もないし帰るだけだ。


「よし!じゃあ3人でカラオケ行こうぜ!薫くんはお前が来るなら行くってよ」


「僕あんまり歌は上手くないから聞き専かもだけどね」


「じゃあ行くか。いまちょうど歌いたい気分になってきたからな、俺のメドレーを聞かせてあげよう」



薫は気になるのかちょっと嬉しそうに、大地は、げーと鬱陶しそうにしている。ここまで対照的だと笑ってしまうな。


「お前メドレーやると長いじゃん。あれ俺だから許してるけど、他のやつならキレてるぞ」


「お前だからやるんじゃないか、特別だぞ!」


「薫くんもさ、歌いたい時はすぐ言った方がいいぜ。こいつバンバン曲入れてくるから」


「薫が入れるならそりゃ待つさ俺だって」


「俺は!?俺の時も待てよ!」


「どうせ大地は知ってる曲だったら勝手に入ってくるだろ」


「そりゃそうだ。ま、薫くんもいける時はどんどん入ってな。俺はマイクなくても勝手に歌ってるから」



高校に入ってからこうして大地以外と喋りながら帰る、それも道草を食いながら、なんてのは初めてだな。自分でこもっていた殻から出てしまえば、意外と簡単なことなんだろう。俺にはまだこれ以上交友関係を増やす気にはなれないけれど。いつか昔みたいに戻れたらいいなと、この穏やな時間が強く思わせてくれた。







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