12話 委員会決めを終えて
「ごめんね、急にびっくりしたでしょ?迷惑かなとも思ったんだけど……」
「いや全然大丈夫ですよ。意外とどうにかなったんで」
委員会の件で改めて白坂さんから謝罪を受ける。本人としても半ば勢いのようなところがあったとか。
俺の方はあの後、周囲からなんでお前が、羨ましい。と言わんばかりの視線に刺されまくった。
さすがに白坂さん本人の目の前では男ども皆、何事もないかのように平然を装っていたが授業が終わり彼女たちが席を外せばすぐさま俺は席ごと取り囲まれてしまった。
ーー
「天沢!お前は白坂さんとどういう関係なんだよ!」
「なんで去年までどこにも入んなかったなのに今年は入るんだ!」
「俺は事情は何でもいいから変わってくれ!」
同時に集まっては一斉にわーきゃーと各々の想いをぶつけてくる。羨望から激しめに感情をぶつけてくるやつもいることはいるが、ほとんどはこの状況に驚き不思議に思っているやつが多いらしい。
ほとんどはどういう心情の変化なんだと聞いてくる。
「別に特段関係はないよ。なんで今年から入りたいと思ったのかも俺には分からん。もう決まったことだから変わってもやれない」
なるべく平静に淡々とを意識して答える。変に狼狽えればそこを詰められるだけだからな。
俺の言い分に信ぴょう性というか納得感はあるらしく、周囲もうなりつつ一度静かになる。
「まあ冷静に考えるとそうか……。特に男子と話してる場面も見たことねえし」
「でもやっぱラッキー!これでお近づきに!みたいなのはあるよな?」
「それもないよ。もちろん白坂さんのことはもちろん可愛いとは思うけど」
「はあー?だったら付き合ってみてえってなるくね?」
「学校のアイドル様だからなあ、現に今もめちゃ詰められてるし?」
皮肉のつもりはなかったのだが、周囲の男連中はバツが悪そうな顔をする。
冗談だから気にするなと伝え、改めて白坂結衣に特別な感情も浮かれる気持ちもないと表明しておく。
それでも怪訝そうに、イマイチ信じきれないような顔をされていると
「みんなの気持ちも痛いほど分かるけどな。でもこいつマジでそっち方面に興味薄いんだよ」
「なんで佐野が……ってそうかお前ら仲良いもんな。とはいえあの白坂だぜ?」
「お前らの尺度だと信じらんねえよな。こいつは筋金入りだからな」
大地に自信満々に言い切られて反論もでなくなったのか、お前マジか……という視線がビシビシと刺さる。これは普段とは違う意味で嫌な視線だな。
「一応誤解がないように言っておくと、別に女に興味がないとかではないけどな。恋愛ごとを面倒くさがってるだけで」
「そんな男子高校生がいるかよ……!彼女欲しいじゃん!それもとびっきり可愛い子がよお!」
「それは俺も佐々木に全く同意だな。こいつはもう枯れてるんだよ」
「おい、大地。俺は別に枯れてるわけじゃねえからな、変なことを言うんじゃねえよ」
大地は俺に妙にぬるい視線を向けた後、哀れむように鼻で笑った。
「心がね、枯れちゃってるのよ。その歳で彼女を欲しがらなくなったら……ねえ?男としてはちょっと……」
「おいお前な」
「はいはい悪かった悪かった。ま、でもそういうわけだから皆もそっとしといてやってくれ」
「まあなんかほんとに浮かれてなさそうというか……ほんとに興味なさそうなのは伝わってきたというか」
むしろ少し引かれたような気さえするが。ある意味で大地のおかげで事態は丸く収まったみたいだ。それ以降は特に追求されることなく終わった。
その後も羨ましいーだとか俺も立候補しとけば良かったという恨み言やら行き場のない後悔の念を周囲に放ち続けていた連中も、白坂さん達が教室に戻ってくればすぐさま静まる。
どうやら本人には聞かれたくないという羞恥心は残っているらしい。俺なら周囲の女子にすら聞かれたくはないがな。どうせ女子経由で伝わるだろうし。
「大変だったね遥、僕ならとてもじゃないけど畏れ多くてペアなんて。色々あるだろうけど、頑張って!」
周囲から人が去ったあと、薫が俺を気にかける。白坂結衣とペア、それだけでおそらくはかなり大変だろう。
内心じゃ若干委員会に憂鬱さを感じるが……それも彼女のせいではない。
「ま、きっといい人だと思うし?楽しくやるよ。大変なのは情欲に駆られた男どもだからな」
「それもそっか。傍目で見てもさっきの詰め寄り方正直怖かったもん」
「図書委員だからな、図書室が騒ぎにならないことを祈るよ」
「僕結構使うから、居心地悪くならなきゃいいけど……」
ーー
「天沢くん?大丈夫?ぼーっとしてたけど……」
「あー、大丈夫っす。ちょっと黄昏てたというか、回想というか?」
「えーっと、平気なら良かった!疲れてるなら無理しなくていいからね?」
「ありがとうございます。でも白坂さんの方こそ無理せず休んでもらってもいいんですよ?」
「私?なんで?」
きょとんとして、何のことか分からないんだろうなというのが表情ひとつで伝わってくる。
「なんというか……学校でも色々気を遣うじゃないですか。だから疲れてんじゃねえかなって」
「ふふっ、天沢くんは優しいんだね。でも大丈夫、今に始まったことじゃないし、それに友達もいるから」
私より私のことを考えてくれてて、大事なお友達なんだ。
彼女は弾むような笑顔で教えてくれる。
俺はそれを見て、なんて心が強い人なんだろうと感心やある種の尊敬の混じったような自分でもよく分からない感情が生まれたことを感じた。
「それに今も天沢くんにお世話になっちゃってるし!大変なことももちろんあるけど、私は人に恵まれてる自信があるもん!」
「それは……きっと白坂さんが素敵だからですよ」
「ふぇ!?で、でも……ほんとは性格悪いかもよ?」
「はははっ!それならびっくりですよ。内面は外見に出るって言いますし、白坂さんは心まで綺麗な人だなって思ってますから」
「……君は意外とあれだね、口が上手い系なんだね。全くもう、油断ならないなあ」
「なんでちょっと不満そうなんですか?俺嘘はつかねえっすよ」
「わからなくていいですー!ちょっといま、ひなを撫で回したい気分だから!天沢くんはちょっと後から来てね!絶対だからね!」
「は、はぁ……。じゃあもう少しここで日向ぼっこしてからそっち行きますね」
よろしい、と頑張って取った尊大な態度で言い残すと軽く走り出してひなちゃんのところへと向かう。
可愛らしい姉妹の戯れをぼんやりと眺めながら、俺は俺でこの穏やかな時間を堪能させてもらおうか。
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