表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/51

家へ持ちて来ぬ 参

「まず、どこから来たの??」


 

質問は沢山ある。

 


しかし、矢継ぎ早に質問するなと竹林で言われたのを思い出し一つずつ解決していくことにした。


 

んーと唸り考えているように見せているが、その手は二袋目の柿ピーに伸びている。


 

「宇宙人…といえば分かりやすいか?」


 

「う?!」

 


突然のパワーワードに言葉が口まで届かずに大渋滞を起こしまった。さっきまでは質問詰めしてやろうと意気込んでいたが一気に勢いを失った。


 

宇宙人…幽霊よりかは信憑性が高いが、いざ目の前にしてみると狐につままれたような感覚になる。


 

「うむ。諸事情故に地球に送還されたのだ。まろには仕組みがよく分からぬが。」

 


淡々と話されるが全然追いつけていない。まず宇宙人の存在を受け入れるので精一杯なのだ。

 


目を白黒させている私とは対照的に少女はボリボリとお菓子を頬張りながら答え続ける。

 


「そして、先程まろを見つけてもらった地での質問だが、家は故郷の星にある。まだ帰れぬが。」

 


着地点が毎回逆接なのが気になるが、どうやら異星の住民であるが色々あって地球に飛ばされたらしい。どんなことをやらかしたら、こんなに小さな子供が異星めがけて発射されてしまうのだろう。

 


異郷のしきたりに首筋のゾワゾワを隠せない。それなら刑期?が終わるまではここにいた方がいいだろう。



まあ罪を犯したとは言っていないが、ここに来た理由も帰れない理由も語ってくれないのでこう考えることにしよう。

 


ひとりでうんうん頷いていると、少女はピンと人差し指を立てた。


  

「何故まろがそなたやそなたの母君に警戒心を抱かせなかったか知りたくは無いのか?」


 

「あ!!」


 

それを知りたかったのだ!!衝撃告白の連続で私がまともに会話出来ない分、この子が会話をリードしてくれているようだ。ありがたい。

 


「し!知りたい!なんでなの??」


 

「それは………」


 

なかなか言葉を発しないので、会話に含みを持たせているのか?と様子を伺っていたが違ったようだ。


  

いつの間にか私の分の柿ピーも平らげてしまい、キョロキョロとお菓子を探してただけだった。このままでは問答に弊害が生じるので新しく何袋か持ってきてあげる。

 


キラキラと目を輝かせて3袋めに突入するとようやくそれらしい回答をした。

 


「まろの星の者にしか使えぬ特殊な力のおかげだ。」

 


「それって洗脳ってこと…??」

 


「うむ…近いと言えば近いが、洗脳ではない。自然と相手がこちらに尽くしたくなるのだ。現にそなたらは会ったばかりのまろをホイホイと受け入れているであろう?」

 


だいぶ怖い話を聞いてしまったようで少し後悔する。洗脳じゃないけど尽くしたくなるって…それは立派な洗脳では??



でも、洗脳気味なことをされ、それを告白されても不快感を覚えないのは本当にその能力を受けてしまっている証拠かもしれない。この子から敵意を感じないから受け入れているのも少しはあるかもしれないが。

 


次の言葉を考えあぐねていると、お母さんがお風呂が沸いたことを知らせてくれる。

 


肉体労働でかいた汗に加えて、宇宙人の洗脳の話で変な汗をかいてしまった。一刻も早く洗い流したい。

 


ちらりと横を見ると同じく汗をかいている。


 

「せっかくだから一緒に入る??何かわからないけどここに住むんでしょ?多分あなたがいた所とは勝手がちがうだろうし。」

 


本音を言えば、この子が本気の宇宙人だとしてもしなくても家を荒らされるのはまっぴらごめんだからだ。

 


また、今明らかになっていないことも聞き出せたらなんて思っている。知らなければならない事情はないが、やっぱり気になるものは気になる。


 

するとその子は少し面食らった顔をして、こう言った。

 


「え…いや……そなたは女子であろう?」

 


「うん、そうだけど?だから一緒に入ろうって」

 


少女は大きなため息をつく。何を渋っているのか分からないがお互い女なんだから気にする必要なんてないだろう。

 


立って立ってと背中を叩いて腰を上げさせる。

 


あれ…?この子こんなに背大きかったっけ…??

 


竹林で会った時は私と同じか少し小さかった記憶があるが今では拳一つ大きくなっている。気のせいだろうか。

 


手を口に当ててじっと観察する。美しく整った顔は変わらないがやはりおかしい。背が大きくなっている。

 


首をひねり続ける私に呆れ顔でその子は告げる。

 


「まろは男性だ。故に共に湯浴みは致しかねる。」


 

「お、男の子……??!」


  

騙したな!!と一瞬思ったが、確かにこの子、一言も女だなんて言っていなかった。


 

私の悪い癖は思い込みが強めで、なんでも決めつけてしまうところだと6月の面談で担任に言われたことを思い出した。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ