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イーピゲネイア

  運命に抗える天津風(あまつかぜ)の乙女よ

  一枚絹のペプロスの衣を纏いて

  長い髪を編みあげ、孔雀の飾りも艶やかな

  高貴なるイーピゲメイアよ


  雷霆(ゼウス)を掲ぐる神々が下す運命も

  梟雄(きょうゆう)の王が恣意(ほしいまま)に下せし酷命も

  蒼狼の覇者たちの律法にも抗い

  運命に自由を見いだせし巫女よ


  実父の高慢な軽口(けいく)から

  女神(アルテミス)の怒りを我身に受け

  すわ、迫りくる死を潔く

  冷静に見つめたその瞳


  運命に抗える天津風の乙女よ


  聖鹿(しょうろく)の身代わりに生贄と

  捧げられる絶命の瞬間に

  狩猟の女神(アルテミス)からの憐れみを

  引き出せし不思議なる力


  運命に抗える天津風の乙女よ


  胡国(ここく)にありてなお仕来りに

  従わんもその掟に囚われ

  またも生贄に供さるる無体

  三度(みたび)の災厄に耐えし精魂


  波風に屈せざりし乙女神(をとめがみ)

  生と死を隠す、レースのヴェールに花冠

  見つめる先さえ窺えない、心に秘密を宿し

  生かさるるまま生きた(ひと)


  運命に生きた天津風の乙女よ


  神々に翻弄(もてあそ)ばれて

  実父に虐げられて

  異郷の(のり)に嬲られ

  されど運命を下せし処女よ


  母殺しの罪をきた弟オレステース

  それすら導いて女神像を掲げ持ち

  匈奴(きょうど)の神を崇むる暴猛を退けては

  呪われし血族の宿命を断ち切りて


  故郷なるミュケナーイに帰還せし(いさお)

  深く心に感銘すれど言葉もなく

  ただ、夢のように歌うなり

  運命に生きた天津風の乙女を

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