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夜の女王に捧げる頌歌――アルテミス
汝、太古より狩猟の民を守護り
神秘なる光は夜の闇を明らめ
獲物もとめる獣の息を白ませ
逆立つ獣毛を光らせし
汝、古には苗を植える刻を教え
満ちて欠ける月灯りは仄影を描き
行く月、来る年、流るる時を告げ
六月の夏至に新年を祝って光る
歴史の流れに翻弄され
暴虐なる権力の専横で
七曜表を変えられども
その役割、厭はず引き受けて
古人は、汝が太陽神により
煌々と輝きしことを知らず
潮の満干も汝ゆえと知らず
夜の太陽と敬慕いつづけり
日蝕は汝らが双生児と示すも
人がそれを信じるまで
数千年の時を経巡り
汝ら等大と知られたり
おお、星を臣下に輝く、夜の女王よ!
幾星霜も天命に従いし女王よ
我、汝の偉大さに深く感銘すれど
汝、ただ静寂なる光で愛撫するのみ
おお、薄雲の羽衣を纏う、夜の女神よ!
我、汝に満腔の敬意もて賛嘆す
汝の、奏鳴曲の調べ
汝の、聖鹿の蹄かな
また、夜に鳴く声音かな
我が心に響かんかなと
月の光に耳を澄ます