キューブ
「キューブ、ですか...?」
「そうだ。ノイズは全て、キューブから生まれている。」
キューブなる建物は、昔東京駅があった場所に存在するらしい。純白の立方体で、そこから無尽蔵にノイズが生まれているらしい。
「だが、キューブの周囲はノイズだらけでそう簡単に近づけないんだ。だから俺たちは、戦力を整えつつ、キューブを攻略する方法を模索している。」
「なるほど...でもどうやって攻略すれば良いんですかね。」
天童はこちらを見てニヤリと笑った。
「確かに今のところ、良い作戦があるわけではない。だが、打つ手がないわけでもないんだ。...お前にはとりあえず強くなってもらう必要があるから、ユミにしっかり鍛えてもらえ。」
小屋から出ると、ユミが近くに立っていた。
「天童からアタシに鍛えてもらうように言われたんだろ?早速訓練所に行くぞ。」
「早速ですね...。何か食べてからでもいいですか?」
ユミは怪訝そうな顔をして言った。
「はぁ? お前腹が減ったのか? この世界では人間が何かを食べる必要なんかないし、トイレも無いんだ。お前の食欲は錯覚だぞ」
なかなか衝撃的な情報だ。確かに、死後の世界ではトイレに行くイメージを見たことはない気がする。
ユミに着いていくと、訓練所にたどり着いた。レジスタンスのメンバーがノイズを模した的に銃弾を当てる練習している。
「ノイズはとにかく無尽蔵に湧いてくる。奴らに弱点なんかないから、とにかく弾を当てまくるしかないんだ。十発くらいぶち込めば消滅するから、とりあえず当てられるようになってくれ。」
そしてひたすら練習をする日々が始まった。食事もないため、起きている時間はずっと射撃の練習をして、日が暮れたら与えられた小屋にかえる、この繰り返しだ。
小屋には一人で暮らしているが、漫画もテレビもない。スマホもないから、やることがない。ラジオは置いてあるが、聞こえてくるのは時報ぐらいだ。
だから、夜は小屋から出て拠点の人々と話すようにしている。この拠点には様々な人がいて、長老と呼ばれている男は世界の多くを知っていた。
「昔は、人々がただ幸せに暮らしていただけだった。ビルも破壊されていなかったから、東京がそのままあったようなものだったんだ。
だが、ある日突然、ノイズが現れた。奴らは人に触れては、仲間を増やしていく。地獄だった。儂たちは逃げ惑うことしかできなかった。天童が現れて、防衛拠点を作ってくれなかったら、儂らはとっくに全員がノイズになっていただろうよ」
「俺たちは天童さんに拾ってもらったんだ。だから、彼の指示は絶対に聞くし、信頼してるんだよ。今までだって、それで拠点を守り続けているし、少しずつ広くなってすらいるんだ。」
「でも彼が何を考えているかは分からなんだよな。無表情だし、口数も多くないし...」
どうやら天童は信頼されているが、謎の男という立ち位置らしい。その天童に後日呼び出された。
「明日はユミの部隊と一緒に、ノイズの駆逐に向かってもらう。もう訓練は完了したとユミが言っていたからな。」
そして、拳銃を一丁渡された。
「これは昔俺が使っていた拳銃だ。お前に託そうと思う。よろしく頼んだぞ。」