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お題シリーズ5

冒険者 病弱

作者: リィズ・ブランディシュカ



 子供の頃からの、夢があったんだ。


 冒険者になって、色々な所に行くっていう夢。


 どこまでも広がる海をみたいし、光が舞う空をみてみたい。


 砂ばかりの土地や、岩ばかりの土地などもあるらしい。


 それだけじゃないはず。


 世界は広いから、きっと想像もできないような場所がたくさんあるに違いない。


 でも、叶えられそうにないな。


 病を患う僕は、ベッドの上から起き上がれない弱い体だから。


 生まれ育った村から出るどころか、家からも出る事ができない。







 そんな僕の境遇に同情してか、幼馴染の冒険者達が毎年村に帰ってくると、まっさきに僕の家へ向かってくる。


 彼等とは幼い頃に、一緒に冒険をしようと約束した仲。


 でも、僕がこんなありさまだったから、彼等だけで冒険にでる事になったんだ。


 そんな彼等は良い奴等だった。


 冒険者として、各地で様々な冒険をしてきた彼等は、その話を僕に教えてくれる。


 僕は、それを聞くのが楽しみだった。


 それを聞いている時は、家からロクに出られない自分の体の事を忘れる事ができた。


 彼等と一緒に冒険しているような気分になれた。


 でも、時々考えてしまうんだ。


 自慢なんかしないでくれよ。


 って。


 そんな事されると、僕はもっと惨めな気持ちになるだろ。


 って。


 彼等はよかれと思ってやってくれているのに、本当に僕は嫌な奴だ。







 幼馴染達が村を飛び出してから六年目。


 ある時、彼等がぱたりと村にもどらなくなった。


 きっと冒険が楽しくなって、村にもどるのが億劫になってきたんだろう。


 彼等はとても強くて、皆があこがれるような冒険者らしい。


 SSSランクとかいうすごいランクだから、弟子にしてくださいといってくる新米が後を絶たないようだ。


 だからきっと、こんな田舎の村に戻ってくる事がつまらなくなってしまったのだろう。


 だってこの村には何もないから。


 戻ってこなくなった幼馴染達の事を思うと、残念な気持ちになるけれど、それでいいような気がした。


 惨めな気持ちにもならずにすむのだから。


 けれど僕はある日、真実を知ってしまった。







 それから数日後、村にAランクの冒険者がやってきた。


 旅の途中で寄り道しただけらしいけれど、幼馴染達と知り合いだったらしい。


 そこで、その人は色々は話をしてくれた。


 幼馴染達が、とあるSSSランク冒険者の弟子として長年頑張っていた話。


 けれど、長い間芽が出なくて、色んな人から引退したらと言われていた事。


 なのに、幼馴染は冒険者を辞めなかった。


 自分達が冒険しなくなったら、村で待ってる友達が退屈してしまうだろうからと。


 そうこうしているうちに、彼等はとあるクエストで命を落としてしまったらしい。


 真実を知った僕は、愕然とした気持ちだった。


 彼等が話したすばらしい冒険話は全部嘘だった。


 本当の彼等の冒険は、みすぼらしいもので、誰かの雑用ばかり任されているもので、ぱっとしない地味なものだったからだ。








「色々な話をしてくださってありがとうございました」


 お礼を言った後、その冒険者は村を離れて、またどこかへと旅立っていった。


 僕が、冒険話をせがまなかったら、幼馴染達は今も生きていただろうか。


 楽しみになんてしていなかったら、冒険者をやめて村に戻ってこれただろうか。


 その答えは誰にも分からない。


 本心を聞くべき相手はもういないし、こうじゃなかった世界なんて神様にしかわからないのだから。



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