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第1夜その2 青年よ大石を砕け

「よし、取り敢えず一発かまそう」


「ちょっと待って。確認しておくけどキミはバイトだからね?助けてくれた事のお礼は言うけど、キミは逃げててもいいからね」


「えっ」


 まさか出鼻をくじかれるとは。

 いやいや、どう考えてもここからは俺もバトる展開でしょ。


「その反応は意外だなー。だってキミはバイトだし、サンタじゃないんだよ?仕事でもないのに命を懸ける意味なんてなくない?」


「確かに」


 思わず納得してしまう。

 確かにサンタの仕事は楽しくはあったが、果たして命を懸けてまでやることなのか。


 と、数刻前なら思った気がする。


「でもバイトと言えどサンタだぜ?ぶっちゃけこれまで生きた来た中で“これだ!”ていう瞬間になんて1度もなかったんだけど…、」


「うん」


「この瞬間こそが“これだ!”って時な感じがするんだよ」


 一瞬サンタが何かを思慮するように顔を伏せるが、すぐに顔をあげる。


「…仕方ないなぁ。相手が相手だから支払い保証は出来ないけど、バイト代が弾むことは約束するよ」


「やったぜ」


 さすがに如何にも俺は闘うぜみたいな格好してるのにすごすご帰るのはメチャクチャ恥ずかしいからね。


 ではお許しも出たことだし。


「ド派手に一発かますか」


「はいストップ。その前にここで説明タイムねー」


「ええ…」


 またもや出鼻をくじかれるとは。


「先に言っておくけど、今のキミにはアイツに対しての攻撃手段はないからねー。殴っても無傷で即反撃ミンチだよ。だからそれがさっき私がキミを止めた理由の1つだねー」


 というか俺に攻撃手段がないという事とかはもっと先に言ってくれてもよかったんじゃ。

 今さらだけど、別につよく止める言い方じゃなかったし俺が後から文句を言わないように言質とるためのやりとりだっのか、アレは。


 だが一応自分で決めたことなので飲み込む。

 多分先に聞いても答えは変わらなかっただろうし。


「腕にオーラチックなの纏ってパチンとかダメなのか?」


「無理無理。だってアイツが纏ってるのは“サンタツール”だからねー。だから一旦ここで“サンタツール”の事とか色んな情報の整理を今のうちにするよ」


「りょーかい」


 ここにきてまた新しいワード“サンタツール”。

 字面からしてあまり期待は出来なさそうだけど。


 因みにあの爆発女と俺らの間には全開ヤツが撃ったものが未だに爆発し続けている為に、互いを塞ぐ壁のようになっている。

 俺ははそれを跳躍して跳び越える気であったのだが、四方八方で爆発しているのを見るに止められて正解だ。


 さらに補足で俺には羽がないから飛べないよ。

 …一気に悪魔要素失せたな。


「ではではー、お手元のデバイスにデータを出すので目読&速読。上がアイツで下がサンタツールね」


 いつの間にか腕にへばりついていた端末が起動し、眼前には文字の並んだ淡白なホログラムが映し出される。




 《ネクヴィオ・カーク》危険Lv.9 性別:女性

 自称“美しき爆殺魔”の異名を持つ、自称“ホープダッシュ”最高幹部の1人。

 自称の通りその容姿は客観的に評価しても優れている。


 これまでにこの人物により殺されたと思われるサンタは1223人確認されており、接触時には退避が推奨される。

 また、初見時には性別問わず一時的に目を奪われるという報告が多数あった為、配達回数の多い者は添付されている人物画像を事前に参照しておくこと。

 報告された容姿や言動から知的な人間ではないと推測されているが、当人の残虐性と後述のサンタツールの殺傷力を鑑みるに精神攻撃は非推奨。



 《爆銃 エール》

 ショットガンと似た形状のサンタツール。

 ただしポンプアクションやリロード等の操作は確認されておらず、現時点では弾切れといったものも確認されていない。


 内部で精製される弾丸は着弾時、または任意のタイミングで花火のように爆発するものであり、その威力は防御特化型のサンタツールのみが現時点では唯一完全防御に成功している。

 爆発した際は現在のところ最大半径500mが威力有効圏内となっているため、回避の際には弾丸その物だけではなく大きく距離を離すことを推奨する。


 尚、このサンタツールの名称は使用者の自己申告であり評議会の付けた通称ではない事を各人留意すること。



 《ラストデイ・ドレス》

 防御特化型のドレス状の大型サンタツール。

 頭部以外をほぼ全て包み込む形状ではあるが、見た目以上の機動性は有している。

 通常兵器や並のサンタツールでは一切の損傷を与えられない程の防御性能を誇り、また唯一剥き出しの頭部も同程度の防御力を持つ強力な魔力シールドで守られている。


 尚、このサンタツールの名称は同ツール背部に刺繍された文字をそのまま付けたものであり、評議会の付けた通称ではないことを各人留意すること。




「読み終わった?」


「ああ、なんかやばい事が分かった。1つ聞きたいのが“危険Lv.”ってのは何段階中、」


「10段階で2番目にヤバいね」


「ですよねー」


 まさに初めからクライマックス。

 ゲームなら負けイベント確定だし、初期ステージ近くにいる初めから戦える大ボスならスルーレベル。


 大人しく寝とけば良かったのか。


「キミ、言いたい事が顔に出てる」


 ポーカー苦手な人間はここが辛いね。

 まあ、今更グダっても意味はないし多少強引でも話を先に進めて貰わなければ。


「なんのことやら。で、資料の中で出てた“サンタツール”ってなに?」


「…まあいいよ。その資料にちょくちょく出てた“サンタツール”って言うのは、簡単に言えば私たちがさっきまで配送していた“プレゼントの素”と似たような工程で作られた道具の総称さ。アイツらのはまんまプレゼントの素から作った物だけど」


「へぇ、なんでプレゼントの素なんて奪いにくると思ったら…。って事はサンタツールってメッチャ強いのか」


「まあ、サンタツールに対しての有効打が基本的にサンタツールしかないくらいには強いね」


 静止を振り切って殴りに行かなくて良かったと自分を褒めざるを得ない。

 素直クールバンザイ。


 それにまだ前世の力は全然使ってないけど、こう、何となく直感的に現状では通用しない気がする感覚があるしね。

 ほら、カード使って世界を滅ぼそうとする奴には同じくカードで挑まないと無理的な。


 ん、待てよそれなら、


「それならサンタのは専用で作られて強いのか」


「残念だけどその逆だよ。あくまで私たちのは自衛目的で各人専用のを作ってるから弱いよ。最小限の最低限だねー」


 ありゃまそうくるか。

 まあ、だったらこんな状況にはならないか。


「それに私のモノなんて今はみーんな保険のために石化させてるせいで使い物にならないよ。あの攻撃に耐えれたから保険としてはちゃんと機能はしてるけどさ」


「シュロロロ」


「正しく人間の盾って訳ね。保険ってそーいうことか」


「ちがーう!アイツら人質に出来ないようにしてるだけだからね。だからご丁寧に石化させたうえで時間停止をしてガッツリ固くしてるんだから」


「傍から聞いたらマジで魔王か何かの所業にしか聞こえないな」


「言われて見ればそーかも」


「つかさっきさ、“みんな”とか言ってた気がするけどその“みんな”ってのはどこまで?」


「みんなみーんな。この世界の1ミリ以上のサイズの生き物はぜーんぶ」


 いやそれはヤバいな。

 1つの物語の起点になるレベルでヤバい。


 サラッと言ってるけどコイツのやってる事は“サンタが子どもにプレゼントを配る際に万が一が無いようにしている行ない”の注釈がないと、到底善行とは思えない真逆の行動にしか見えない。

 いやホントに。


 サンタじゃなかったら有りとあらゆる理由を付けられてその世界の主人公に討伐されるのは間違いない。


「サンタって天職だな」


「自分でもそー思う。…でもさキミは私がヤバいと人みたいな認識をしてるけどキミのほうも大概だと思うけどね。どっちもなんともないように受け流してるし」


「あれ?俺だけにしなかったとかじゃないのか」


「当たり前じゃん。みんな平等にやった筈なのに何故かどっちもスルーしてる人が近くにいてそれがキミだからバイトに誘ったんだけど」


「…マジ前世ゲー」


 で、一応俺も強いよアピールしてるのにアレには勝てなさそうなのが現状か。

 いや参ったね、まったく。


「でも困ったね。そんなキミでも私がさっき見た動きの限りじゃアレに攻撃は通らないねー」


「多分な。別に火を吹ける訳じゃないし」


「サンタツール以外で傷を付けた報告もなかったし、キミがわたしを助けてくれたことには感謝するけど…。今のままじゃ死体候補が増えただけだね」


「そろそろ爆発も止みそうだし、腹を括らないといけないか」


 本当にサンタのバイトは新鮮味があって面白かったけど、まさかこんな無理ゲーバトルになるとはね。

 ただプレゼントの配るのがサンタだろうに。


 …あ。


 プレゼント配るのがサンタなんだよな。


「なあ」


「なにー?」


「うかんだ。俺にいい考えがある」


「その中身はぜひ聞きたいところだけど、なんだかどことなく凄く不安になる言い方だね」


 俺もそう思う。




 ***




「ふむ、爆発も止んだことし殺るとするか」


「よお、その前に少し話でもどーよ?」


 ネクヴィオの背後に立つビルの屋上から見上げる形で声をかける。

 くっそ怖いけど出来るだけ余裕を持ってフランクに。


「お前!いつの間に?まだ貴様らはあそこに!?」


「デコイのホログラムだよ爆殺魔」


「なんだと!」


 どうも不意をつき過ぎたのか動揺のあまり体を一回転させる形で前後のデコイと俺を見るネクヴィオ。

 そもそもあの装飾じゃ横すら満足に見えなさそうではあるが。


「欺くとはなんと卑怯な!」


「人様の物を殺してパクる奴には言われたかねーよ」


「なんだ。その最期の勝てぬから謀で一矢報いたということか」


「いやちげーよ。取り敢えずこれを見ろって」


 そして俺は腰に付けた袋からこれ見よがしにプレゼントの素を取り出しみせる。


「それを寄越す代わりに見逃せと?」


「まさか。俺だってバイトとはいえサンタだぜ?だからこうして最後の1個を泣く泣くお前を倒すために用意したんだ。来年はちゃんと埋め合わせをするから許してくれマサトくん」


「最後の1個、だと…?まさか!まだあの女は数を持っていたではないか」


「それはデコイみてアンタが俺らを突っ立てると勘違いしてる間に終わらせたっての。コイツが最後の1個だ。俺らとアンタのな」


「その1個でどうするつもりだ」


 おお、なんかコイツ話に乗ってきたぞ。


 やっぱバカ同士なら会話も成立しやすいな!


「これは後30分くらいでアンタのドレスを引っぺがす超攻撃型のサンタツールに変わる予定だ」


「…だからそれが変化する前に殺せるものなら殺して奪ってみろと言うことか」


「そう!時間制限つきの鬼ごっこって訳。かくれんぼでも良かったけども、それすると被害がこの街どころじゃ無さそうだし」


「それで?まず前提としてお前らがそれを除いて配り終わったという証拠がないではないか」


「見る?」


「何を言って、っ!?」


 それはざっと1km先の摩天楼の隙間から。


 後ろのビルに立った俺にすら気付かない癖して音すらないそれを瞬時に察したネクヴィオを瞬時にそれに照準を合わせて撃つ。


 灰色の閃光と小ぶりの花火玉がぶつかり合い、轟音を響かせ弾ける。


「ほぼ全て配り終わったからね。一部を除いて限定解除したみたい。流石にアンタは倒せないけどさ」


 そしてこれでもかとわざとらしく首をクイッと上げ、


「そいつに傷を付けるには十分だろ。ま、疲れてるから移動砲台のサポートだけどね。で、どう?やる?」


 全力で嫌味っぽく挑発をする。


「…仕方ない、その余興に付き合ってやろう。どの道お前を殺せばそれは1つ手に入るしな」


 よーしよし。

 取り敢えず第1関門はクリアだ。


 問題はここからだ。


「そーいうこと。じゃ早速「“美麗賛歌(シャンテクラヌ)”」


 まだ言い終わっていないのにも関わらず、当然の如く撃ち込まれる弾丸。

 螺旋軌道の弾丸はド派手な赤と黒の混じった光のエフェクトの尾を引きながらこちらへ向かってくる。


 保険って大事ねと改めて実感しながらここへ来る道中で拾った、多分酔って道路で大の字に寝ていたサラリーマンのオッサンを盾に後ろへ下がる。

 だが着弾音のする前に弾丸は石像の前で炸裂し、爆風の勢いで掲げたオッサンと共に後方へと吹っ飛ばされる。

 そして、足場のビルは積木を手で崩したようにあっさりと倒壊する。


「待つこと知らない現代っ子かよ!」


 当然ビルが消えると足場がないので完全に体勢が崩れない内に近くの瓦礫を蹴り、滑り込む形で地面へと着地。

 そして素早くネクヴィオの方へと視線を向けるが、ネクヴィオは完全にこちらを見失っているようで、グルグルと身体を回しながら周囲を見渡している。

 幸い倒壊の際に舞い上がった塵と煙がカーテン状になり、更に花火爆弾のお陰でまだネクヴィオをこちらを見つけていないようだ。


 取り敢えず気付かれる前に役目を終えたオッサンの石像を地面に降ろすが、それにはヒビ1つ入ってはいない。

 流石はメデューサの魔力そのものをぶち込んで石化させてるだけはある。


 *の間にメデューサが説明していたのだが、今この世界の生き物はメデューサの魔力を分け与える形で石化しており、その上石というには硬すぎる状態で更に時間停止もされているためもうメッチャ硬いとの事。

 とにかく語彙力ブレイクするレベルで硬いらしい。


 ならそこまで硬いなら使うしかない。

 これぞ正しく石化(した人間を盾にしながらする)アクションバトル。

 ある意味で人海戦術とも言えるか。


 人間の盾は取り敢えず機能したことを確認し大通りへと躍り出る。

 流石にこれには気づいたようで、すぐさま視線と銃口がこちらを向く。


 残念ながら今回は別に俺が隠れていては意味がないので折角マークが外れているのだが、こちらから再度付けてやらないといけないのだ。


「おいおい、スタートの合図を出てないのに攻撃するのはズルいだろ」


「…これがメデューサのサンタの力か。なるほど、確かに凄まじい力を持っているようだ」


「ムシかー!?」


「…お前と遊んでる訳にはいかないようだ。始めて早々で悪いがここで逝け」


「へ?」


「“美しき処断(イデアルマサークル)”」


 早速想定外の攻撃が。


 散弾のように撃ち出された7つの弾丸は直接こちらには向かわずこちらを囲む弾道。

 そして遅れて中心に1発。


 横への回避を許さずに、突っ込んでも爆破で死亡。


 なのでこの状況でやることは、


「なんでクリスマスにフランケンのコスプレなんだかなぁ!」


 足元に転がっていた、フランケンシュタインのようなコスプレをした大男を引き摺るような形で盾にしつつバックステップをする。

 そして本命が着弾した感触を感じた瞬間に素早く石像を足蹴に、爆破の勢いを利用して2つ先のビルの後ろまで跳び隠れる。


 やばーいなんかすっごい頭使って戦闘してるみたい。


「まだ死んではおらぬだろ、出てこい!」


 いや、出る予定なんだけどちょっと待って欲しい。

 こちらとしてはそんなトリッキーな攻撃出来るのは予想外の事でしてね。


『そらならば下がりながら動けば良かろう。その尾はなんのためにあると思っているのだ』


 胸からニュルンと唐突に黒い影状のモノが生えてくる。


「わーお。割りとすぐに出てきたね」


『俺サマだからな』


 なんと短いスパンでの再会だろうか。

 もしかしてコイツレギュラー枠なのか?


『そんなことは俺サマは気が向いたり、貴様が死にそうになったら出るだけだ』


 読めちゃうのね。


『まあ、前世と今世で中身は同じだしな』


「そーかそーかなるほどでした。で、何用ですかい前世」


『貴様のやりたい事は把握している。一旦身体だけを預かるから好きに喋れ』


「せめて脳内でしない?」


『俺サマは実戦チュートリアル派だ』


 悪魔祓いの儀式中に身体を浮かせて引っ張られてる人はこんな感じだったのかと考える間もなく、ネクヴィオの視点よりも高いビルの屋上へ降り立つ。


「まず弾丸が当たらなきゃ爆発させても意味ないんじゃないか?」


「お前…!」


「今度は受けずに避けてやるから当ててみろってんだ」


 照準が定まるよりも先に脚がコンクリートを蹴り宙へ躍り出る。

 しかし少しの滞空をすることすらも許さないかの如く、すぐさま身体を捻ると壁を蹴り一直線に弾丸さながらの軌道で目的の地点へと突っ込む。

 そして、ド派手な音ともに地面へと衝突事故する。


『変化している腕と脚を使わない手はない』


 なるほど、早く動きたければ脚での着地ではなく受け身をとれと。

 どっちも黒くて硬い強靭な鱗みたいなのに覆われてるからか。


 だがそれを脳へと刻む前に強制的に頭を回される。


「“荘厳絶景パトリデストリュクシオン”」


 向けられた視線の先には先程の位置からトリガーを引いたネクヴィオ。

 明らかに先程よりも弾速は上。


 近くには盾となる石像はない。


『さて、ここで尾の出番だ』


 全力でのバックステップ。

 弾丸の軌道上に。


 早くはあるが当然の話、弾との距離は離れるどころか近づいて来ている。

 もうあっという間に目と鼻の先。


『それではご覧あれ』


 流されていた尻尾が勢いよく直角に曲げられる。

 それとほぼ同時に俺の身体もその方向へと同じ体勢のまま弾けるように跳んでいく。

 飛行機の尾翼かな?


 目の前を着弾と爆発のタイミングを失った弾丸が通り過ぎ、視界の端で建物に当たり派手な爆発を起こす。


「慣性の法則とかご存知?」


『知ってるが関係はないだろ。ではここで俺サマのチュートリアルは終わりだ。次は翼のチュートリアルをする時にでも会おう』


「…ありがとさん」


 やっぱあるのか翼。

 まだココで出さないということは、前世の俺からすればネクヴィオ相手に使うまでもないということか。


 …いや、絶対俺が覚醒イベント残せ的なこと言ったからワザとしてそうだ。


 取り敢えずこれなら何とかなるからやるしかないか。


「まだ弾速足りてないんじゃなーい?」


「舐めた真似を…!」


「でも俺にばっか気を取られてると、」


「っ!」


 思わずこっちがビクリとするような素早い動きで後方からの閃光を捌く。


 一応こっちの方ががまだ動ける前提で挑発してるけど、どうも一筋縄ではこちらの目論見通りにはさせてくれなさそうだ。

 でもやるしかない。


 少し長めのチュートリアルもお終いだ。


「それじゃゲーム再開だ!」




 ***




 世の中例え思っていても、いや、頭に浮かんでも思慮をしてはいけないものだ。

 何せ俺自身がフラグを回収したり、メタチックな事を言って回避をしようとしてみたりをする質なのだから。


 だから思ってはいけなかった。

 一筋縄ではいかないと。


「10分の余裕を持って終われるようだな」


「そーすっね」


 うつ伏せのまま角を掴まれ頭を持ち上げられる。


「確かにお前の力を過小評価していたのかもしれない。だが、見るにお前は経験不足だ。何の目的があったかは知らないが、お前はこのネクヴィオ・カークを侮り過ぎたな」


 ぐうの音も出ない。


 確かにコイツはそこまで頭は良くなさそうだが、これまでにサンタを1223人殺してるのだから実戦経験なんてそれはもう凄まじいものだろう。

 初めこそは力押しに近い動きです回避出来ていたが、次第にパターンを読まれたのか9割を盾代わりの石像で防ぐハメになってしまった。


 余裕無さすぎて途中からどう見ても盾というには細すぎる女子高生の石像とか、パッと見大きいけど手でハートマーク作ってるから真ん中ガラ空きのカップルの石像を盾にしてたせいでもう見た目ボロボロ。

 直撃しなけりゃ儲けもんの精神でやるしかない程余裕なんてなかった。


 つか見た目に反してセミオートで通常弾がスラッグ弾みたいなのに長距離撃てるのはズルくない?


 まあ、結局の所は直前最後に盾として使おうと掴んでしまった石像が赤ん坊でそれを思わず庇うような動きをしてしまったのが運の尽きどころか。

 誰だってそうだ。

 傷付かないことが分かってても子どもは盾に出来ないって。


 …アナコは使ってたな。

 うん、違う種類の生き物だからノーカンセーフということで。


「跳んだり跳ねたりと随分と手間をかけさせてくれたが…。後方からの援護もあって久方ぶりの余興ではあった。故にお前にチャンスをやろう」


「そいつは有難いことで」


「大人しくお前がプレゼントの素を渡せば撃ち殺してやろう。お前も死んだ後は埋葬ぐらいはされたいだろ?」


「お気づかいどーも」


 昔から思うんだけどもどちらにせよ死ぬ選択肢ってのはなんでこうも実質1つみたいなのしかないかな。

 せめて電気椅子か絞首刑みたいに少しは悩みレベルの選択肢はないんですかねと。


 でも無いものをねだっても仕方ないね。


「ではお言葉に甘えて」


 赤ん坊の石像から手を離し、腰に付けた袋に手をかける。


「それをこちらに手渡せ」


「はいよ」


 そして変化していないプレゼントの素を袋から取り出し、


「あっ」


「なっ!?」


 そのまま手が滑ったように赤ん坊の上に落とす。


 落ちたプレゼントの素は、何かを求めるように伸ばされた赤ん坊の腕に落ち、あっという間にプレゼントへと変化する。

 最後の1人、マサキくんの腕の中で。


「悪い、お届け完了しちゃった」


「お前っ!!」


「それとさ。実はお前に俺嘘ついてて」


「楽に死ねると思うなよ!四肢を1本1本爆破して最期まで苦しませながら殺してやる!!」


「まだプレゼントはそれこそ10個単位で配り終わってなくてさ。でも、お前のお陰でぜーんぶ終わったよ」


「初めは右脚からだ!」


「だからさ、メデューサのサンタが全力でお礼をくれるってさ」


 見開かれた視線の先には赤ん坊。

 そう、ただの赤ん坊。


「これは…!」


 そして動揺のあまり、ネクヴィオは自身の背後へと滑り込むように降り立つ着地音を聞き逃す。


「メリークリスマース☆」


 タンッと短く控えめな銃声。

 俺の角から手を離し、振り向こうとするが既に勝敗は決している。

 照準がサンタを捉えるより早く、サンタの“プレゼント”がネクヴィオの体を貫いた。


 ……。


「……」


 …ではここで*で端折った部分の説明タイムだ!

 やられたネクヴィオが爆発するかもと思ってそのためのリアクションに備えてたけどまだタイムラグがあるみたいだし。


 まず1つ目の*の間に俺がしたのは勝利条件の確認とそのための提案。

 これはネクヴィオの目的が“プレゼントの素”である以上、俺らの大まかな勝利条件はプレゼントを全て配ることであるということ。

 だから俺が提案したのは俺を使ってネクヴィオの力を利用する陽動作戦。

 内容は単純に俺がネクヴィオを引きつけている間にサンタにプレゼントの配って貰うというもの。

 そしてここが肝心で、ネクヴィオには狙いを誘導させてガンガン撃ってもらい建物に穴を開けて貰うこと。

 玄関から入ってたら時間かかるしね。

 という事の打ち合わせをあの間に済ませましとさ。


「……」


「……」


 …まだ時間がありそうだから続けて*の2つ目。

 これは単純に端末にポイントを指定して貰ってからの誘導。

 向こうから見えないホログラムというのは単に黒くするだけではなく、なんと反対側は透明化というのも出来たようでそれを用いて気付かれないようにネクヴィオの狙いを誘導した。

 流石に勘づかれる危険性もあったので、サンタにはその都度プレゼントを配りながらの援護をして貰いあくまで“倒すために交戦している”というアピールをしてもらった。

 つか結構ギリギリで、最後の1個配ったのを確認した瞬間にやられたから割りと紙一重だった。

 いやほんと、配って即座に真反対に遠回りしていける機動力がアナ子とコン太にあるなら逆にしとけば良かったと今さら思わなくもないけど。

 ちなみにプレゼントの素がサンタツールに変化するのはハッタリ。

 もしそうなら袋の中は俺かサンタが欲しかったものにぜんぶ変わってるしね。


 以上説明終わり。


 ……。


 あの、俺はいつまで伏せておけば良いのでしょうか。

 因みにこの間1分。

 我ながら凄まじい早さの脳内解説だったと言わざるを得ない。


「なにしてるのー?」


「…伏せてる」


「なんで?」


「あんなに強かったらドカンと爆発したりとか、“サンタ共がァ!! ”的な感じで派手な衝撃波撒き散らしながら消滅したりとかするじゃん」


「それは本の読み過ぎじゃないかな?そー慌てないで見てごらんよ」


 腕を掴まれサンタに起こされながらその視線の先に目を向ければそこには、


「…っ、……っ!!」


 撃たれた瞬間の姿勢のままで突っ立っているネクヴィオ。

 いや、立っているというか固まっているかのようだ。

 一応意識とかあったり、ほんの僅か抵抗しているのか少し身体がピクピク痙攣している様に動いてはいるけど。


「どゆこと?」


「私のサンタツール“イレギュラー”は対象を“固める”ことに特化した銃なんだよねー。だから全力で撃てればほぼ全て有効打になるんだよ」


 そう言って彼女は手でクルクルとその小ぶりで可愛らしいデザインのハンドガンを回す。


「もしかしてそれでみんな石化させたのか?」


「そう!これを空に向けて撃って雨みたいにみーんな撃ち抜いてね」


 見た目からは想像出来ない光景だ。

 だが、さっきまで衣装の割にガシガシ動いていてネクヴィオも、今では瞳を先程よりも若干こちらに向けるだけの動きしか出来ていない辺りからその銃の威力が伺える。


 やっぱサンタじゃなかったら聖なるパワー持ってる奴に殺されそうな力だ。


 と、ここまで思ってある疑問。


「じゃあなんてコイツは石化しないんだ?」


「ふふん♪ここを見てよ」


 そう言ってサンタが指さす先には撃たれた箇所から染みのようにジワジワと広がる灰色。

 脇腹を付近を撃たれたネクヴィオであったが、既に脇近くまで石化は進行していた。


「最上級防御特化だから時間がかかってるけど、既に石化は始まってるよ」


「うわー…」


 なぶり殺しかな?


「好きでこうなってる訳じゃないってー。あっ、そうだ折角だし一応聞いておかなきゃね」


 そう言ってサンタはネクヴィオの口元に指を当てる。

 すると少し震えるだけの動きしか出来ていなかった口が、数刻前のように動きだす。


「このネクヴィオ・カークにこのような真似をしてタダで済むと思うな!」


「それはそれは。あの、一応聞いておくけど、キミたちの組織について話をしてくれないかなー。そしたら助けてあげるけど」


「お前たちに話すことはない!ネクヴィオ・カークは死して尚も美しき石像として残ること以外は何も望まぬ!」


「そっか。それは残念」


「癪ではあるが美しき我が美貌は石と成り果てても


「じゃあねー」


 そして指を外せば再びその口は僅かな振動をのみを起こすだけになる。


「あーあ。折角話が聞けるチャンスだと思ったけど口が固いなー」


「一応、自称“最高幹部の1人”なんだしある意味当然じゃないか?」


「それもそっか」


「で、これどうするんだ。石化させたとして持って帰ってサンタツールでも剥がして口を割るまで檻にぶち込むのか?」


「そうだねー。じゃあ、少し離れて眺めよっか」


「えっ?」


 サンタに引っ張られてネクヴィオから距離を離される。


「それでは実況よろしく!」


「え"」


「折角ジワジワ石化してるんだしさ。しなきゃ勿体ないよ」


「ええー…」


「おねがーい」


「へいへい…」


 と、そうしている間にもネクヴィオの石化は進行し、既に胴体部分は灰色に染まりきっていた。

 さっきまでは話をしていて気づかなかったが、割りと大きな音でパキパキと石化をしている音が辺りに響いている。


 胴とは違い布の体積が少ないのか、下半身や腕に石化が至った瞬間のその侵食速度は加速する。

 先程まではそれこそ染みのようにジワリと広がっていた灰色はまるでそれそのモノに意識があるように伸びていき、あっという間に指先をもその手に持たれた銃ごと石へと変える。

 そして下半身は既に色鮮やかな装飾も全て鈍く光る灰色に変化していた。


 視線を上げれば首を超え、顎付近までが石化したネクヴィオと目が合う。

 生憎瞳を見て感情が読み取れる人間ではないのだが、少なくとも石化というものに絶望している眼ではない。

 力強い、何かを求めるような瞳。

 それは恐らく先程言った“美しき石像として残ること以外は何も望まぬ”という台詞が本心であるという事の現われか。

 その最期までもが美しくあろうという欲望。


 だが、無情にもその瞳は目が石化すると同時に消え失せ、何処にも視線を向けないツルツルとした模様1つない球体に変わる。


 そして頭部の飾りも全て石へと化し、眼前には1体の石像が出来上がった。


 とても不思議な光景だった、と思う。

 石化という絶望的なシチュエーションの1つでもある光景なのに、この悲壮感のなさが。

 それは嘆きの声がなかったからか、はたまた最後まで本人が“石化”という状況に絶望感を抱いている素振りを見せなかったからなのか。

 その最期が石像だとしても美しいモノであろうしたからなのか。


 それ程までに目の前にあるそれは石化した人間というには言い難い、まるで初めからそのように作られた石像のアートにしか映らなかった。


「これでいいのか」


「グッジョーブ」


 すっごく満足そうに頷くサンタ。

 お気に召してくれたようだ。


「すっごく綺麗だよねー。でもサブタイは回収しないと」


「サブタイ?」


 こちらが何とも言えない気分になっている所にその雰囲気をぶち壊す一言。

 と言うより、


「シェロ!」


「シュロ!」


 いつの間にやら俺たちの横に並んでいたアナ子とコン太は石化したネクヴィオの元へ走る。


「あのー…、どーするおつもりで?」


「そのままの意味だよー」


 そして俺がその言葉を理解出来するよりも早く2匹は尻尾を使い石像を打ち上げ、


「知ってた?青年って別に性別関係ないらしいんだよねー」


 ピシッという音が聞こえるとともに空を舞ったネクヴィオの身体からひかりが漏れだし、


「どっかーん!」


 ネクヴィオの石像は花火のように綺麗な色鮮やか光を放ち爆発四散し跡形もなく砕け散った。


 美しき爆殺魔の最期は美しさの欠片もない爆発オチってのはいかがなもんですかね。




 ***




 朝目が覚めるとそこには痴女のサンタがいた。

 ついでに部屋中にこれでもかと札束が散らばっている。


「……」


「あっ、起きた起きたー。取り敢えずバイト代置いといたからねー」


 寝惚けた頭をフル回転させて夜の出来事を思い返す。

 確かあの後俺は魔法みたいな力で街の景観が元に戻るのを見て、それから突然悪魔モードみたいなのが解けた瞬間に、


「寝落ちか」


「寝オチだねー」


 どうやら半裸でデビルマーンやってる時だけ限定で起きられるようで、体質的には相も変わらず強制睡眠障害のままのようだ。


 あ、そう言えば1つ語弊があった。


 札束は確かに散らばっているが、同時にオレをぐるっと囲むように積み上がっている。

 天井ギリギリまで積まれてるから倒れたら窒息死しそうだ。


「…あの、このお金はなんすか」


「バイト代だけど」


「時給25000円にしては多すぎやしやせんかね」


「その分はこれね」


 そう言ってポンと手の上に福沢諭吉×15人が置かれる。


「ん?」


「少し色付けておいたよー。それにしてもこの世界って大きい額を纏めたクレジットがなくて不便だねー。私もこんないっぱいのお金見たのは初めてだよ」


「いや、そうじゃなくて。これがバイト代ならこれいいはなんですかね」


「それはネクヴィオの懸賞金ね。キミが使ってるお金に換算してざっと40億円なのかな?」


「…いったい何処から出てるんだこの金」


 仕事が終わった後でもサプライズが事欠かないなサンタの仕事ってのは。


「それは勿論サンタ評議会からさ。あ、一応この世界のキミが住んでる国の人には話を通してるから問題なくそのお金は使えるよ。まあ、恒例だけど偉く媚び売ってきて躱すのがネクヴィオよりも面倒だったけど」


「そいつはどーも」


「それとキミのその体質はこの世界では本来存在しないものだからね。キミが平穏を望むのなら、万が一が無いように後から評議会の方でこの世界に干渉しないように釘を刺すよ」


 この世界、か。


 すごく今さらかもしれないけども、


「あのさ、サンタって別の世界から来てるのか」


「…あれ、言ってなかったけ?」


 言ってないなぁネクヴィオ以外。

 アイツだけが唯一“この世界にはそんな人間はいない”って言っただけで、今の今まで俺は全てこの世界だけの出来事だと思ってた。


 つまりは異世界サンタか。


「そもそも赤い服着てプレゼントを配るってのも、こっちの世界に送った特班員が活動を円滑に進めるために広めたモノだしね」


「そうなのか…。因みにその特班員のサンタはアンタみたいに魔法みたいなのは使えるのか?」


「いや?あくまで彼らはこの世界で生まれて人たちだからね。私たちのところに所属はしてるけど特殊な力はないよ。ぶっちゃけこの世界だとキミぐらいじゃないかな、魔力系統使える人は」


「ふーん…」


 そうか。

 なるほどね。


 “俺サマ”はこうしたかった訳か。


「じゃあ、名残惜しいけどやるべき事は済ませたし…」


 咄嗟に腕をとる。


「ん?」


「まだ残ってる。やるべき事は」


 そうだとも。


 この世界で生まれた時点で俺の選択肢は2つしかなかった。

 1つは睡眠障害に悩まされつつも自分を普通の人間と信じ込みながら生きること。

 そしてもう1つは、


「俺をサンタにしてくれないか」


 本日居場所のなくなったこの世界から抜け出すこと。


「へえ。それは戦闘中に言ってた前世の関係かな?」


「ああ。それもある。でも、」


 それよりもあるのは、


「これだって感じなんだよ。サンタは」


 これまで夢が物理的に見れず、目標すらなかった俺が直感的に感じる“これだ”という衝撃。

 既に意識の表層的な部分でもこれを逃したら死ぬまで後悔するという警鐘が鳴り響いている。

 というかどうしたって前世の分もあるから2倍増しだ。


「…そっかー。キミならそーいうと思ってたよ!うん、やっぱりキミで間違いないかな」


「連れてってくれるのか」


「もっちろん!でもその前に最終確認したいから腕を離して貰ってもいいかな」


「何をするんだ?」


「それは見てのお楽しみー」


 腕から手を離すとサンタはお尻のポケットから見るからに呪物感溢れる歪なデザインの指輪を取り出し、それを小指に嵌める。


「…なにそれ」


「ささ、取り敢えずキミも出して出して」


 なにをするかは分からないが、ここで機嫌を損ねて帰られても困るので同じように小指を差し出す。


「こうか?」


「そうそう!で、確か暫くしたら…、おっ!?」


「うお!?」


「やったねー。成功だ」


 差し出した小指にサンタの指輪からニュルっと何かが出てたかと思えば、それは俺の小指に巻き付いて2人を繋げる。

 これが赤いのならロマンチックなのだが、


「やったねーって、どこがだよ。なんかヘドロみたいな色してるし、これ呪いの何かだろ」


「まさか!これは私にとってヤバい出会いがあった時にその相手と私を繋げる“運命のヤバい糸”。もうここにきてずっと反応してたから、まさかとは思ってたけど!そのまさかだったね」


「ヤバいって言ってるじゃねーか!しかも2回も!」


「じゃあやめる?」


「ヤバい出会いバンザーイ。これでいいんだろ」


「グッド!キミにはこれから私の相棒としていろんな世界でサンタして貰うからね!と、いうより実はキミが起きる前から既に評議会の方に申請してたり」


 なんというかフランクな感じをしているが、何処か抜け目のない人だ。

 いや、メデューサか。


 というかなんか思い返してみればアナコが途中やたらと俺をヨイショしてたし、じつは初めからこの流れに誘導されてたんじゃないかと今さらながら思う。

 さすがにネクヴィオとの戦いまでが折り込み済みだとは思わないが。


「…あっ、今さらかもしれないけどアンタの名前まだ聞いてなかったな」


「あれ?まだ私名乗ってなかったけ。まあ、そんなに面白い名前じゃないけどメデューサのサンタ、メデュー・エイギスだよ。これからよろしねー」


「もう初めに名乗ってるけど改めて、俺は空尾 翔だ。これからよろしく頼む」


「オーケーオーケー!じゃあもう行っちゃうよー」


 そう言うが早いがドプンと俺の身体が沈む。

 床に。


「マジでもう行くのか。こう、いろいろと整理とかしたいんだけど」


「そこは心配だしないでいいよー。この世界を出る時にパパっとキミのいた痕跡は全部消すからさ!」


「だからそーいうのは先に言えっての!」


 こうしてなんやかんなありつつも、俺はサンタとしての1歩を踏み出した。

 まあ、沈んでるんだけど。






 第1夜 完


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