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モスバーガーにて

早朝7時。業務開始時間より2時間も前である。私は、乗り換え駅の構内に併設されているモスバーガーに来ていた。

店内にはこれから出勤するであろう社会人がチラホラいて、頼んでいるものは殆どがモーニングメニューだった。傍目で見つつ、真っ直ぐレジカウンターへ向かう。前の客の会計が終わった店員さんは私に気付き、にこりと微笑んだ。

「おはようございます、店内でお召し上がりでしょうか」

「はい」

朝早すぎて思ったより低い声が出てしまったことに一人で恥ずかしくなりながら、カウンターに置かれたメニュー表を指さした。

「テリヤキチキンバーガーのタマネギ抜きとコーヒーで」



マスコットキャラクターの描かれた番号札を持って空いている席に座る。普段より倍重いカバンから今日の会議の資料を取り出した。朝一番から大事な会議が待っている。いつもだったら聞いたふりをしながら配られた資料にメモという名のラクガキをしているのだが、今日は登壇するよう頼まれた。「頼まれた」というのも、この資料を作ったのは私ではないからだ。プレゼン担当は同僚だったのだが、今日突然の出張が決まり、この企画のサポートをしていた私が代役を務めることになった。手伝っていただけあって資料の内容は大体知っている。抜かりなく会議を乗り越えるため、資料の確認と気合を入れるために朝からここに来たのだ。

朝から満足する物を食べないとやる気が出ない。もちろん会議が無事終了したら同僚には美味しいものを奢ってもらう予定ではあるが。

「お待たせいたしました」

目の前に出されたトレーの上にはバケットに入ったバーガーとコーヒーが乗っていた。

「ごゆっくりどうぞ」

軽く会釈をして番号札下げていく店員さん。一通り目を通してから食べようと思ったが、包装紙から見えるソースの色が誘惑してくる。

よし、資料の確認は後にしよう。

書類を素早くカバンに戻し、バーガーに手を付ける。包装紙には「特注」と書かれたシールが貼ってあった。玉ねぎは好きだが生玉ねぎは口の中に残るからあまり好きではない。特にこれから大事な会議があるのにそんなものでストレスを感じたくない。普段なら食べるのだが、今日は抜いてもらった。

包装紙を剥がすとふわふわのバンズと新鮮そうなレタス、そしてソースがふんだんにかかったチキンが目に飛び込んできた。顔には出さないがテンションが上がりまくっている。

化粧が崩れないように気を付けつつ、大きくかぶりつく。食べ応えのあるチキンのジューシーさが口の中いっぱいに広がり、後からチキンを焦がして焼いた風味が鼻を通り抜けた。他社のテリヤキ系バーガーも好きだが、初めてこれを食べた衝撃が忘れ慣れなくてモスに来るとついつい頼んでしまう。朝の時間帯はモーニングメニューしか取り扱ってない店舗もあるが、ここは朝でも通常メニューが頼めるので嬉しい。朝からお値段は張るが、このぐらいのたまになら贅沢許されても良いだろう。そう考えならもう一口かぶりつくと次はマヨネーズの味が強くした。テリヤキソースとマヨネーズの相性の素晴らしさをひしひしと感じる。テリヤキチキンバーガーを考えた人は国から表彰されても良いと思う。

そんな頭の悪いことを考えながら夢中で食べ進めたら、あっという間に無くなってしまった。底に残ったソースが寂しそうにしている。

「‥‥ふぅ」

幸せな溜息をついて、包装紙を丁寧に折りたたむ。ソースが残っているのはもったいないが今日は仕方ない。家だったらポテトに付けながら食べているところだ。

コーヒーに手を付けて一息入れる。ブラックで飲むとキリッと引き締まる気がした。

「よし‥‥!」

気合を入れて資料を取り出す。食事前より集中できそうな気がした。


出張から帰ってきた同僚には、チキンの美味しい店に連れていってもらおう。


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