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紫音、クズい男に出会う。

「なおき→なおひか」修正しました。


紫音になってから半年が過ぎ、私も随分とこの世界に慣れた。まぁ、すごく暇だけど。

私は生まれつきの病弱らしいから、手術が終わってもベッドライフは変わらないらしい。病院も退院したし、車椅子もあるけど、家から出してもらえない。両親が過保護なのだ。そして私を守るだけの財力だってある。


お医者さんによると大きくなるにつれて少しずつ体力はついていくらしいんだけど。大きくなるってどれだけ大きくなればいいんだろうか。

あぁーー、暇。何をするにも心配されて、本もテレビも禁止されてしまった。原因は私にあるんだけど。


テレビで戦隊ものの番組がやっていたとき、ヒーローの決め台詞を聞いて過呼吸になってしまったり、本を読んでいて悪役が倒されるのを見て過呼吸になってしまったり……と。それを三回くらい繰り返していたら両親が泣いて止めてきたのでさすがにやめた。

私は両親の事が大好きだから。使用人だって優しくて好き。そんな皆を心配させたくなかった。


そして最近分かったのが、私は重度な正義嫌いだと言うこと。多分と言うかそれは絶対に過去の私、つまりドルシェナの人生によるトラウマから来ているものだと思う。

今も正義が嫌いで、偽善者はみんな嫌いだ。だから、ある意味家から出られなくてよかったのかもしれない。


ただ、そんなことをしていては私がいつまでも前に進めない。でも、あと少しだけ、このままでいて欲しいのだ。


だって、正義感にとらわれた偽善者なんて、もう見たくないんだもの。悲劇のヒロインになったつもりはないけど、少しの間こころを休ませて欲しいのだ。


……この話は一旦やめよう。けど、フェリルには悪いことをしてしまった。今、フェリルはどうしているんだろう。

あぁー、違うことを考えたいのに、暇すぎてそればかりが私の頭の中をめぐる。


うううーーー。暇ーーー。


「紫音ーー!お医者様が来たわよ」


そうか、もうそんな時間だ。前来たときに、彼は息子がいるから会わせてあげると言っていたはずだ。仲良くなれるかな……。でも、正義の塊だったらどうしよう。

正義の塊じゃなかったらもはやどんな人でもいいわ。クズ男でも構わない。


私はそう思いながら車椅子を動かした。


◇◆◇


「初めまして、紫音様。僕は市崎直輝いちざきなおひかです。将来父の後を追って医者になる予定ですので、その時は、よろしくお願いしますね」


にこり


爽やかな彼は凄い美丈夫だ。つまり……なんだこのイケメン。普通の3歳児ならここで頬を染めている頃だろうけど、生憎私は精神年齢が高いため、愛想笑いだ。


「はじめまして、じょうもんじしおんでございます。なかよくしてくださいませね」


彼の爽やかスマイルが引きつる。すいませんね。可愛げなくて。


「紫音様は賢いのですね。羨ましいです」


「そんな!でも、ありがとうございます」


お母様はまんざらでもなさそうだ。まったく……親バカなんだから。そして彼は場の応用の仕方が上手い。


「紫音、せっかくだから直輝さんとお話ししてきたらどうかしら。診察も終わったしね」


「ほんとですか?ありがとうございますおかあさま!」


彼と友達になる絶好のチャンスだ。年は八つ離れているけど、貴族の政略結婚ではラッキーなくらいの年の差だから、友達にだってなろうと思えばなれるはずだ。たぶん。無理なら諦めるけど。


◇◆◇


今は彼に車椅子を引いてもらって散歩をしている。


「あのさぁ……俺、正直ここには来たくなかったんだよなぁ。親父に来ないと小遣いナシって言われちゃって。もし俺に好意よせてるとかだったらやめてね?俺、人と深くは関わりたくないんだ」


「はぁ……」

あれ?なんかさっきと様子が違うぞ?彼の気遣いは変わらず優しいんだけど。ゆっくり進めてくれるし。

気のせいでも無さそうなんだよな……。つまり、優しいクズ?


「けど仲良くしろって言われてるから、表では仲良くする。城門寺は結構大手企業だからね。そこの令嬢と仲良いって俺の地位上がるし。まぁ……期待はしないでね?」


あ、やっぱ前言撤回。結構なクズだこの人。


「わかりましたわ。でも、あなたがクズでよかったですわ。さわやかなひとはせいぎかんあふれるひとがおおいから、すこしびびってましたの。これから、よろしくおねがいしますね」


「ははっ……結構面白いね君」


「そうですか?あまりきにしたことがありませんでしたわ」


「……紫音って呼んでいい?年下に様はちょっとさ」


あぁ、いい感じにクズくて安心するわ。変な気遣いしなくていいし。


「ええ、どうぞおよびくださいませ」


「紫音の体も心配だし、もう戻ろう」


「ええ~ひさしぶりにそとへでられましたのに」


「我が儘言うなって。寿命縮んでいいなら俺は止めないけど」


「あああーー!やっぱりもどりましょう」


これは、友達になれたと言うとだろうか。まぁ、見込みはあるはずだ。二人で家の中に入ると、直輝は爽やかな好青年に戻っていて、私は直輝の変わり身の早さに驚いた。


お読みいただきありがとうございます!

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