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ドルシェナ、紫音になる。


昔から、正義が勝つなんて言葉があるけど、私はどうしてもその言葉に共感できない。

正義は、自分の中にある正義感しかわからないから、例え悪が悪でなくても正義の力で断罪されてしまう。


正義を前にしては、誰だって悪に変わってしまうのだ。彼らはその正義の力を持っていた。


だから、私は悪にされたのだ。私はただ、何もない平穏な世界で生きていたかったのに。どうして、彼らは私に構ってきたのだろう。その癖に、どうして私を信じなかったんだろう。

私は、王宮にある牢で1人、うつむいて乾いた笑いをこぼした。


『ドルシェナ様が悪いのよ!!』


……違う私は、何もしていない。フェリルに、何もしていないのよ。フェリルがいじめられているとき、は迷わず助けたし、フェリルの事も大切に思っていた。

……親友だと思っていた。フェリルは、昔から仲がよく、幼なじみのような存在だった。


『そうだ!』


『仲がいいふりをして、どうせ裏ではフェリル様の事を馬鹿にしていたんだろう!』


してないわ……。そんなことしたくもない。私のことを何だと思っているの?学園に来たとたん、皆がフェリルに注目して、誰もが私を嫌った。けど、私はそんなことでフェリルを嫌いになんかならない。

『違うわっ!私は、フェリルに何も…!』


『……ドルシェナ…言い訳は好きではない。そして、裏切り者も好きではないんだ。ごめんな。どうしても、許せない』


貴方まで、貴方まで裏切るの……?貴方にとって私は?友達ではなかったの?否定してくれないの?

手の裏返し方に、思わず震えた。私の存在は、何でもなかった。フェリルの隣にいる私のことなんて、邪魔でしかなかったんだ。そういえば、最初からそうだった。

挨拶の時から、彼はフェリルにひかれていた。私なんて、見られなかった。

『シェナの事を悪く言わないでよ!』


『私の、私の親友を悪にしないで、お願いよ!シェナは私の光なの。太陽なの。貴方達とは違うのよ』


フェリル……。ありがとう。貴女のそう言うところすごく好きだわ。思わず涙がこぼれる。でも、そんな貴女の考えは、きっと誰にも信じてもらえない。


『フェリル、君はドルシェナに洗脳されているだけだ』


『エルク?待って違う!』


彼は私に向かって真剣な顔をして、


『君は自分で自分の居場所をなくした』


悪魔のような事を言った。でも彼にとってはそれが正義で、私は悪でしかないのだ。この時分かった。悪と見なされたものに、選択肢はない。


そして、この時私は正義が嫌いになった。

殺すのも少し可哀想だからと言って、私を牢でまだ生かしている。彼はどれだけ自分に酔っているのだろう。フェリルにひかれた、他の子息達もそうだった。私を物か何かだと思っているのだろうか。


私達の世界に勝手に入り込んできた癖に、私を邪魔と言う。


牢には毎日フェリルが来て、助ける方法を探すと言っている。フェリルと出会えたことに後悔なんてない。

 

けど、今は生きる自信がないのよ。


ごめんなさい。フェリルを、泣かせてしまって。


「ゴホッゴホッ」


手のひらに血だまり。ストレスによるものだろう。もう、私は長くないかもしれない。意識がおぼろげになってきた。


「シェナ?シェナ?!」


「大丈夫よ。フェリルは何も悪くない」


「誰か、誰かお医者様を呼んで!」


あ……息が…。


「シェナ!」


そんな顔しないで欲しい。私は、フェリルの笑顔が大好きなのだ。だから、笑って?私は力を振り絞り、フェリルの涙をすくった。

あと、これだけは言わせて欲しいの。


「フェリル……大好きよ」


「シェナ、シェナ……シェナ!!!!!!!」


私は息を引き取った。


◇◆◇


パチ


目を開けると、そこには知らない天井があった。ここは何処だろうか。真っ白だし、私は死んだんじゃなかったのか?あぁ、フェリルを泣かせてしまったなぁ……。


「紫音!」


変な格好をした女の人に、いきなり抱きつかれた。この人おっきい。あれ、私はこんなに小さかったか?


手のひらを見ると、痩せた白い小さい手があった。これはどう見ても私のものではない。


「あなたはいったい、どちらさまですの?」


そう質問すると、一気に場の空気が凍った。何かおかしいことを言ったのだろうか。と言うか紫音って誰?


「残念ですが、紫音様は記憶喪失になられた模様です。ですがまだ年は3歳。そう気にすることはないかと思います」


「そ、そうね。紫音~私が紫音のママ、城門寺愛菜じょうもんじまなよ。貴女の名前は城門寺紫音じょうもんじしおん。生きていてくれてありがとう」


んんん?

私の名前は「じょうもんじしおん」ではない。


イシュデタスルトプリツァトルデタルライトアイズフラレルデヒルステルクマルデルクツクァイエルトライナハードゥルフスレルカルテッタアグラセルデミリカルラマホムヘメルスポリフユレカルターハルトルエリサム王国侯爵令嬢、ドルシェナ·ベリクスだ。王国の名前を覚えるのはとても大変だった。


まぁ覚える必要はなかったけど。大体皆がイシュサム王国ってよんでいる。略しすぎと言うなかれ。


本当に誰がこんな名前をつけたんだろう。王ですら略している。貴族も。皆正式名所を言って噛みたくないらしい。恥ずかしいし。


で、これはどう言う状況?


…話を整理すると、私の名前は城門寺紫音で、生まれた頃から心臓が弱く、さっきの手術が失敗していたら死んでいたらしい。周りは何故か私が記憶をなくしたと思っているみたいだけど、私は紫音なんて知らないし、この世界も私がいた世界ではない。


こう言うの、なんて言うんだったっけ?


私の頭に、最近令嬢の中で流行っている『転生悪役令嬢』と言う言葉がよぎった。もしかしたら私は……


転生してしまったのかもしれない……





お読みいただきありがとうございます。小説を書き初めて半年記念として連載始めました。頑張ります!評価やコメントもらえると嬉しいです。

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