第13話「孤高の魂よ、我が刃の盾となれ」
とは、いえ。
「あたし達…ううん、リーネはあっさり倒したけど、他のパーティが心配ね」
「FWOはプレイヤーの能力が総じて高レベル。でも、PvPに慣れていない」
「あたし達のせいかしらね…」
うん、ありがとう、ミリー。リーネのせい、などと言わないでくれて。
「ボス攻略じゃないから、私達が手助けするのは、問題ない。すぐ行こう」
「相変わらずタフね…」
伊達に毎朝走り込んでいませんよ。動きだけじゃなくて、基礎体力もプレイヤースキルとして反映されるものである。
「…あれ?もしかして、10倍の加速時間に戻っていないの?通常時間の流れのまま?」
「みたい。運営がシャットダウンを考えているのかも。通常時間なら、強制ログアウト処理が滞らないから」
「でも、今回は不正ツールとか使ってないんでしょ?システムに異常がなくても、そんなことできるのかな」
あら、正解。
そう、真の目的は、私の『おかしな特技』を使うことを想定してのことだ。
田中さんと事前に打ち合わせて、そうすることにしておいた。あまり想定したくないことではあったのだが。
「わからないけど、通常時間のままなら、なおさら急ぐ必要がある」
「そ、そうね!」
私達パーティは、エリア数の大きい順から第1エリアに向かって、順次対応していくことにした。その方が、先ほど討伐したエリアから近いためだ。最前線ゆえに。
◇
第1エリアの露店地域。
「姉貴達、大変そうだなあ…」
「そうだね。僕らが出張っても何もできないし、見守るしかないかな。せいぜい、レベル1土魔法で短時間全員の足止めをするくらいだし」
「全員って…。まあ、そうだな。今回は極大魔法も使っていないみたいだし、確かに見ているだけ…お、おい、どうした!?」
ケインとしての私がビリーとそんな話をしていると、ひとりのプレイヤーがふらふらとやってきた。あれは…重騎士?大怪我している!?
「た、大変だ…。やつら、今からこの第1エリアに攻め込む気だ…。小隊…っていうのか?そんな規模の集団が複数、郊外に…。俺はたまたま鉢合わせて、なんとか逃れて…」
「なんだって!?今の第1エリアは、プレイヤーの数こそ多いが、生産職か初心者ばかりなんだぞ!PKなんてレベルじゃねえ!」
ボス攻略側は誘導だった?本当の目的は、第1エリアの制圧?
第1エリアはいわば『始まりの町』で、戦闘職ではない多くのプレイヤーの活動拠点でもある。つまり、FWO世界における首都相当だ。
首都制圧を想定した組織的活動?やはりというか、軍事訓練説が濃厚になってきた。
「郊外に急ごう!僕らの防御魔法やアイテムなら、戦闘職プレイヤーが戻るまで足止めできるかもしれない」
「え、いや、でも俺、商人…」
「僕よりレベルの高い魔法陣、いくつも持ってるだろ!」
ああ、もうビリーくん、こんな時にヘタるなんて。だいたい、あの告白の時だって…今、トラウマを呼び起こすのはよそう。
◇
「ケインから、メッセージ。第1エリアが、大規模部隊に攻め込まれようとしている」
「なんですって!?」
メッセージは入ってないけどね。あとでログをでっち上げておこう。
ちなみに、他のプレイヤーも、すっかり彼らのことを『部隊』と呼ぶようになっている。
完全に戦争状態の雰囲気となっていることに、少しばかり焦燥感を覚える。
「こちらも、急ごう。半分くらいのエリアの部隊を倒せば、他のパーティに任せることができる。その後、第1エリアに転移」
「半分…いつ、終わるの…?」
今回の部隊の装備は、ナイフのみ。マシンガンはないようだ。前回もひとりしか持っていなかったし、もしかして、完全にはコピーしきれなかった?確かに、マシンガンにしては弾数が少なかったけど。
「リーネ!このエリアの部隊は全員倒した!残った他のパーティのメンバーも何人か一緒できるって!」
「それじゃ、次に」
確かに、いつ終わるかわからないなあ。キリがない、というのが正直な感想だ。
プレイヤー登録をもう少し厳密にするべき?いやいや、敷居が高い『ゲーム』は商業的に問題だ。もっとも、同業他社が妨害のためだけにこんなことをするとは思えない。ハイリスク・ローリターンだ。
焦燥感が、更に強くなる。やはりこれは、早期に決着をつける必要があるかな。
◇
「だめだ、ケイン!お前の土魔法もすぐに破られちまう!」
レベル1だからなあ。しかも、放つたびに転移魔法陣を使う必要がある。数は揃っているが、手間がかかる。敵の圧倒多数は魔物討伐でも想定されていなかった。大群の侵攻なんてFWOに合わない。
「な、なあ。あの『ハルカ・フリューゲル』ってここで使えないのか?クルーズ船の事件で何十って複製してただろ?」
「できるけど、あれはあくまで遠隔操作用アバターだ。酷い言い方になるが、リーネ同様、紙装甲。集中攻撃によるボス殲滅ならできるけど、一回だけ」
「そ、そうか…」
悲痛そうな顔をするビリーくん。
ごめんね、これからもっと悲痛な顔になるかも。
「だから、呼び出している」
「呼び出し?」
実際は『コンバート』だけど。
「…来た!春香、頼む!」
◇
孤高の魂よ、我が刃の盾となれ。
◇
【全体メッセージ:運営No.00より緊急エントリーを受理しました。アバター『ハルカ』に、全てのスペースでの戦闘を許可します】
第1エリア入口の上空に、ひとりのアバターが現れる。ログイン時の、輝く光と共に。
「ふん、この程度の輩に恐れおののくとは不甲斐ない。FWOなど、大したことないのじゃのう」
えっと、こんな感じだったかなー、『ハルカ』のロールプレイ。




