第9話「アタックって玉砕覚悟の告白のことじゃないよ」
「【ストレージアウト】火属性防御魔法陣」
ケインとしての私が、クルーズ船エリアの全体に防御魔法陣を張る。
ドグゥゥゥゥ――――――ン!
グゥ―――ン………
範囲魔法は、ケインの私が放った魔法陣の前で全て止められ、一旦空を炎で覆ったかと思うと、徐々にその威力を落としていく。
「きゃ――――――!?」
「な、なんだ、今の!?」
クルーズ船エリアにいる人々の悲鳴や叫び声が聞こえる。その中には、ミリーや伊藤先生の声も。
しかし、全て防いだ。もう安心だろう。
なんだかわかんないけど、『終』わんないじゃん。ハッタリかました名前だよねー。
と、少しばかり余裕を見せていたら、
タタタタタタッ!
ひゅん!シャッ!ギン!
集団PKの方々が数名ほどエリア外からなだれ込み、私達を襲ってきた。あれは…ナイフ?FWOではあんまり魔物向けじゃないということで、それほど使われていない。でも、対人近接戦では割と有効だ。
ちょっとちょっと、いくら日程を隠していたといっても、ゲストの男の子が一緒ってことくらい知ってるでしょ?ほら、隣にいる男の子は怯えているし。
「【ストレージアウト】」
しょうがないなあ、とばかりに剣を取り出した私は、向かってくる敵を倒そうと…!?
「PK判定が…出ていない…!?」
タイムラグが発生せず、ペナルティも課されていないから、敵プレイヤーのナイフの剣先は、既に私の首筋の近くだ。
「くっ…!」
きわどいところで避けた私は、その勢いで隣の男の子を抱きかかえ、横にスライディングする。
ザザッ!
なんとか少し遠くの場所に移動できた。けど、男の子とは背丈が同じだから、ふたり向かい合って地面に横になっている感じになってしまった。
「大丈夫?」
「う、うん…」
あーあ、肩をこんなに震わせて。最後の最後で、嫌な思いをさせちゃったかなあ。
…ん?あれ?
え、ちょっと待って?
私は、ようやく気がついた。私にPK判定が出ていない。初めて会った時も、今も、男の子に突然アタックしたにも関わらず。
いや、アタックって玉砕覚悟の告白のことじゃないよ、物理的な攻撃のことだよ、って今はそれはどうでもいい。
このクルーズ船エリア全体のPK判定が『無効化』されている。
また、チートツールですか―――!
「がっ!」
「きゃあっ!」
船内にいたプレイヤー達が、次々と光の粒に変わっていく。これじゃあ、プレイヤーの人々の方が魔物みたいだ。
魔物は―――
「緊急エントリー、運営No.00、佐藤春香!」
【全体メッセージ:運営No.00より緊急エントリーを受理しました。コマンドが設定されていません。入力をどうぞ】
あう、全体メッセージ設定まだ残ってたよ。くっ、今はそんなこと気にしてられない。
「私以外の、クルーズ船エリア内プレイヤーに、PK判定を付加」
【全体メッセージ:運営No.00以外のクルーズ船エリアのプレイヤーにPK判定を付加します】
よし。
「ちょっと、春香!なんであたし達までPK扱いなのよ!」
ミリー、まだやられてなかったのね。あ、5人のPKに取り囲まれてる。
しゅんっ
しゃっ、キン、しゅんっ!
パァァァァッ
その場にいたPK達は、ミリーを残して光の粒に変わる。私の剣技の餌食となって。
「ミリーは、何もしなくていい」
「えー…」
これで5人。さーて、あと何人かな?




