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第8話「うんうん、日本人の異世界転移モノの定番だね」

 男の子が『お刺身食べたことがない』というので、みんなで魚屋2号店に向かう。うんうん、日本人の異世界転移モノの定番だね。なんの話だ。


「よーし、みんなのために腕振るっちゃうよー!」


 忙しいはずのミッキー高橋さんが包丁を振り回していた。振るのは腕だけにして下さい。

 それにしても、タイミングいいなあ。今回の交流、プレイヤーが集まり過ぎちゃうかもっていうんで、具体的な日程は公表しなかったのに。って、ああ、そうか。


「ミッキー、『上司』さん呼んで」

「じょ、じょーしさんって、誰、かな?」

「呼んで」

「…はい」


 本当にすぐ来た、『上司』田中さん。ミッキーとしてもあの呼び出しができるのか。恋人特権かな。いいんか。

 面子がリアル知り合いばかりで隠すこともできず、ここぞとばかりにいじりまくられるふたり。


「まあまあまあ、おめでとうございます。式はいつ頃?」

「いえ、あの、私達はまだ付き合い始めたばかりで…」

「しかし、既に一緒に住んでいるのでしょう?家族計画は早いうちに立てた方がいいですよ」

「ふぇっ、け、けいかくぅ!?」


 ウチの両親最強説。


 あ、いじっている間の男の子の対応は伊藤先生とケインにお願いしました。ケインにってのは変な話だけど、辻褄は合わせなければ。

 『春香』としての私が先に『知っているおばあちゃんの言葉を喋ってみて』と言っておいたから、伊藤先生としてはいろいろ確認できたようだ。


 はー、でもあのアバター、本当になつかしいなあ。もう何年も経ってるし、中身おばあちゃんってわかってたはずなのに。やはり、私の最大最強の黒歴史&トラウマのようだ。さっきも、ついうっかり…

 …はて?なんだろ、この違和感。喉元まで出かかっているんだけど。


「春香さん、私は運営に戻ります。みなさんの先程までの彼との交流の話を聞いて、少し気になることがありまして」

「気になること?それに、運営?田中さんはもう『プロモーション』専属なんじゃ」

「判明しましたら、すぐにお知らせします。それでは」


 そういってログアウトする『上司』田中さん。また逃げられた?



 夕暮れ時のクルーズ船エリア。同じく実装された海が、静かなさざなみの音を奏でる。


「Asar cakpen pfos rtory hawnb rrikcoks...」

「Asar cakpen pfos rtory huwnb…あっ」

「もう少し、ゆっくりと歌ってみようか」


 男の子に、あの歌の歌い方を教える。遠く離れた日本に住んでいる私が身内の人に教えるというのも奇妙な話だけど。


「なあ、みんな。今、集団PKが頻発してるみたいなんだ。なんか、一瞬のうちに現れてすぐに複数のプレイヤーを攻撃して、あっという間にやられちゃうってさ」


 ビリーが掲示板をチェックしながら、そう言う。


「すぐに?PK判定が出て告知されるから、攻撃までタイムラグがあるはず。あと、PK判定後は、動きにペナルティが課される」

「だから不思議なんだよ、先輩。PKについてはFWOは批判的だからさ、不意打ちのようなことはできないはずなんだけど…」


 と、その時、緊急コールが入る。


<はい。…田中さん?>

<クルーズ船エリアを離れて下さい!みなさんと一緒に!早く!>

<え?>

<やっぱり、コンバートの失敗ではなかった…!とにかく早く…>


 その時、船の上に、光渦巻く巨大な炎が現れる。

 あれは、見覚えがある。第40エリアまでのボスなら一瞬で消し炭になる極大範囲魔法、その名も『ジ・エンド』―――

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